電通調査の「LGBTは8.9%」をどう見るか

カテゴリーの見直し含む客観的、中立的な調査研究が必要

今月10日、電通が「LGBT調査2018」(2018年10月実施)の結果を発表し、自らを性的少数者と考える「LGBT層に該当する人」の割合が8.9%に上ったと明らかにしました。2015年調査の7.6%からさらに上昇しており、この数字が正しいとすれば、国民の11人に1人が性的少数者だということになります。同社は「LGBTに関する情報の増加と理解の進展」を背景として挙げました。

一方、ほぼ同じ時期(2018年7月)に無作為抽出で実施された名古屋市の意識調査では、自らを性的少数者であると答えた人はわずか1.6%でした。電通調査と名古屋市の調査では、なぜこんなにも差が生まれるのでしょうか。

一つには、調査対象の違いが挙げられます。名古屋市が18歳以上のすべての年代を含んでいるのに対して、電通調査は20〜59歳で60歳以上を除外しています。さらに、名古屋市が無作為抽出であるのに対して、電通は自ら指摘しているように、アンケート対象の若年構成比が高くなっています。名古屋市調査でも若年層の性的少数者比率は突出して高くなっているため、高齢者を除外し、若年層に偏った電通調査の比率が高目に出るのは避けられません。

他にも、電通調査を担当したのが「電通ダイバーシティ・ラボ」という、あまり中立的とはいえない部局であることや、インターネット(電通)と郵送(名古屋市)という調査手法の違いも影響しているかもしれません。また、質問の仕方による違いも当然あるでしょう。

いずれにせよ、電通調査の結果は一般的な感覚からするとにわかには信じがたいというのが実際のところです。「8.9%」を文字通りとらえると、学校でも1クラス当たり3〜4人という計算になりますが、2017年に大阪市立小中学校で実施した調査では、「LGBTの生徒がいる」と答えた学校は、440校中わずか50校にとどまりました。つまり数十クラスに1人いるかいないかという数字です。同性パートナー制度を設けた自治体をみても、全婚姻件数に占めるパートナーシップ制度利用者の割合は1%未満にとどまっています。メディアで大々的に取り上げているほどのニーズはないというのが実情でしょう。

これは電通に限りませんが、「LGBT」「性的少数者」というカテゴリー自体を、そろそろ見直すべき時期に来ているのではないでしょうか。

同性パートナー制度導入や「LGBT理解増進」などの政策論議が活発化するなか、実際のニーズや効果を客観的に把握することが望まれています。その際、性別違和(性同一性障害)など心と体の性別に関する「性自認」の問題と、異性、同性、どちらに性的に引きつけられるかという「性的指向」の問題は厳密に区別して取り扱うべきです。たとえば、同性パートナー制度などは、同性愛、両性愛者が必要だと主張する制度であり、性別違和の人にとっては全く関係ありません。また性分化疾患など純然たる先天的な病気と、子供に多く見られる一時的な性別への違和感は、原因から対処まで全く異なるものであり、ひとくくりにすべきではありません。

電通の「8.9%」についても、その内訳を精査する必要があります。ちなみに2015年の「7.6%」では、レズビアン(女性の同性愛者)0.5%、ゲイ(男性の同性愛者)0.9%で、同性愛者全体をあわせても1.4%に過ぎませんでした。両性愛者(1.7%)に特別な保護が必要かどうかは疑問ですから、同性パートナー制度の必要性を論じる際に根拠とすべき数字は7.6%ではなく、1.4%です。ちなみに名古屋市調査では、レズビアン、ゲイをあわせても0.3%でした。

最後に、名古屋市の調査で気になった点を指摘しておきましょう。それは若年層、特に女性の間で性的少数者を自認する人が急増しているということです。40歳以上の女性では1%未満だったものが、30〜39歳では2.4%、18〜29歳では8.0%と急増しているのです。実は、欧米でも同様の傾向があり、米国でも性解放以降に思春期を迎えた世代からLGBTの比率が増加しています。これは、性自認や性的指向の問題の少なくとも一部が、先天的なものでなく、文化、社会的な影響で生まれている可能性を示唆するものです。離婚の増加などによる夫婦愛のロールモデルの喪失、同性愛を含む性情報の氾濫、さらには性虐待によるトラウマなどが、若者の性意識や性行動に混乱をもたらしている側面はないのでしょうか。客観的、中立的な研究を深める必要性を感じます。(O)

Weekly Voice by UPF

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