移民受け入れ問題、日本でも国民的議論を始めるべき

「移民キャラバン」1万人が米国に向け北上中

中米・ホンジュラスなどから米国に向けて、大勢の移民が隊列を組んで移動中、というニュースが注目を集めています。

その名も「移民キャラバン」。彼らは米国への入国をめざして主に徒歩で北上中で、中には赤ちゃんを抱いたり、子供の手を取ったりして進む人も多くいます。

元々は10月中旬に、中米・ホンジュラス北西部の都市サンペドロスラのバスターミナルに集まった100人あまりが米国をめざしていました。さらに、SNSを通じて集まった約2000人がキャラバンを組織。彼らの多くは自国の凶悪犯罪や政情不安、貧困から逃れるために米国行きを決めたといいます。その後、グアテマラを通過しメキシコに入る道程で、エルサルバドルなどからの参加者も吸収し、雪だるま式に膨らんだ結果、現在、その数は7000人から1万人とみられています(国連推計)。

この問題を巡り、トランプ米大統領は毎日のようにツイッターで移民キャラバンを非難。移民の入国を阻止するため、メキシコとの国境に最大1000人の実戦部隊を派遣する方針を25日に明らかにしました。また、キャラバンを止められない中米諸国への援助打ち切りもちらつかせています。

米国では議会の中間選挙直前ということもあり、大きな話題となっています。一部には、中間選挙を狙って、移民の米国入国を支援してきたNGO「国境なき人々」(Pueblos Sin Fronteras)が意図的にキャラバンを組織したと指摘されています。

これが事実だとしたら、皮肉なことに、今のところこの問題は反移民姿勢をとるトランプ氏と共和党に有利に働いているように思われます。映像で報じられるキャラバンの光景は、トランプ氏が訴えてきた移民の脅威や「壁」の必要性を証明しているように見えるからです。今後、トランプ政権がキャラバンに対して強硬姿勢を取った場合に、米国世論がどのように動くかは不明ですが、トランプ氏は「キャラバンにはベネズエラの左翼や民主党が資金提供している」「中東出身者が紛れ込んでいる」などの発言を繰り返しており、中間選挙対策に利用される巡り合わせになってしまいました。

ただ、こうした米国の政治的側面を抜きにして考えてみると、移民問題は実に難しい問題です。移民問題が発生する背景には大きく分けて、「社会・文化」と「経済・雇用」の側面があると言われます。私たち日本人の多くは他国に移住して、その国の人間になろうとは考えていません。それは社会が安全で文化的も恵まれており、格差の問題が指摘されているとはいっても国を捨てるほどではないと考えるからです。

しかし、世界にはそうでない人々がいることを直視しなければなりません。経済的に困窮し、日々、生命や安全が脅かされている人々が他国に雇用と安全を求めようとすることを「いけないこと」と言えないのが移民問題の難しさではないかと思います。

ひるがえって、労働力としての外国人受け入れ拡大に動きつつある日本。移民受け入れで激しい議論が繰り返されるEUはもとより、多文化主義を掲げる代表的な移民国家、カナダやオーストラリアなどが受け入れに苦慮している現実を前に、これまで国民国家としての一体性を保ってきたわが国も、転換点に差し掛かっているといえるでしょう。(S)

Weekly Voice by UPF

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