対米「新通商交渉開始」で実を取った安倍氏

「自由貿易の旗手」としての日本の役割とは

貿易不均衡の是正問題に焦点が当たっていた26日の日米首脳会談で、両国は新たな通商交渉の開始で合意しました。会談後に発表された共同声明によると、合意されたのは以下の3点です。

  ・国内での調整をへて、日米物品貿易協定(TAG)締結に向け、農産品などの関税を含む2国間交渉の開始する
  ・米国が検討する自動車などの関税引き上げ措置は交渉中には発動しない
  ・日本の農林水産品は、環太平洋連携協定(TPP)などの過去の経済連携協定水準を上回る関税の引き下げはしない

今回の合意について、結局は「先送り」「時間稼ぎ」と指摘する声があるのは事実です。ただ、韓国が米韓FTAの再交渉に応じたものの自動車の追加関税を回避する成果が得られなかったことや、カナダがNAFTAの対米再交渉に応じない姿勢を貫いたことで、関係を悪化させている状況などを考えれば、安倍外交は一定の評価を得て良いのではないかと思います。

トランプ氏は中間選挙を控えて、日本に圧力を加えたという「事実」を得ました。また、TPP加盟を主張する日本に対し、TAGという形でFTAへと広がる可能性のあるテーブルに着かせたと主張できます。

一方、日本は実を取ったかっこうです。最大の脅威である自動車関税を一時的に回避し、TPPの水準に農産物の関税を押さえ、投資・サービス分野の開放はしないということで話をつけたことになります。米国のTPP復帰を主張しFTA交渉は避けたいとして来た日本政府にとって、FTA交渉を受け入れた訳ではないと主張できるTAG交渉入りは妙手といえるでしょう。

ただ、自動車問題が日本の喉に刺さったトゲであることは確かです。ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表も26日の首脳会談後、記者団に対し、日米交渉のキーエリアは自動車であると認めています。今回の合意で、自動車輸出への25%関税の実行はいったん回避されることになりますが、日本政府関係者からは「どこかの時点で、米国から押し込まれるリスクを抱えることになった」との声もあがっており、今後も難しい対応を迫られそうです。

問題はその先です。安倍首相が国連演説で宣言したように、日本には自由貿易を守る旗手となる責任があります。米国とうまくつきあいながら多国間主義にのっとったリーダーシップが求められています。グローバル経済の“いいとこ取り”で国家資本主義を突き進む中国は、当面、アジアと世界の安全保障上の脅威であり続けるでしょう。北朝鮮をめぐる情勢も動くなか、日本は米国、韓国をはじめ多国間による解決に導く貢献をすべきです。(W)

Weekly Voice by UPF

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