米国との貿易戦争で中国経済が急減速

株式時価総額で世界第2位から陥落 日本を下回る

トランプ政権が仕掛けた貿易摩擦、特に米中貿易戦争が市場を揺るがしています。メインターゲットにされた中国は人民元の下落と株価下落の悪循環が始まりました。

米国は中国に対し、貿易赤字削減に向けた強硬姿勢を崩さない構えです。中国では企業が過剰な債務を抱えており、このまま貿易戦争で景気が後退すれば、企業業績悪化で不良債権が積み上がり、金融不安が一気に広まりかねない状況です。一方、打撃は世界経済に跳ね返り、米国も自らの首を絞める事態に陥る可能性もあります。

今回、米国が口火を切った米中摩擦の要因には次の3点が考えられます。

第一に、すでに述べた貿易赤字の削減です。トランプ氏が一貫して重視してきたのが貿易赤字の削減で、その方法は二国間交渉です。

第二に、ハイテク分野における米中の「覇権争い」です。米国は経済規模だけでなく、ITや人工知能(AI)など最先端技術で各国をリードしてきました。これに対し、中国政府は2015年、「中国製造2025」と名付けた産業政策を掲げ、半導体、電気自動車(EV)など主要分野で世界トップに立つ目標を設定しました。政府の圧倒的な資金量と全面的な支援を背景に、この分野で急速に力を付けつつあります。

第三に、中間選挙です。トランプ氏は今年11月に行われる中間選挙に向けた票固めとして、使えるものは全て使うと考えているのでしょう。

中国の4〜6月期国内総生産(GDP)は、底堅い民需に支えられ6%台の成長率を維持していますが、米国との貿易摩擦が景気腰折れリスクとして重くのしかかっています。

株式市場にも動揺が広がっています。3日、時価総額で中国が世界2位の座を日本に明け渡しました。米ブルームバーグ・ニュースによる3日の日中取引データによると、株式時価総額で中国は6兆900億ドル(約680兆円)、日本は6兆1700億ドル(約690兆円)。中国は2014年に世界2位となって以来初めて、日本を下回りました。

中国経済の減速懸念が強まる中で、習近平指導部が安定化策に転じました。昨年来、当局は目先の景気よりも過剰債務問題の解消といった構造改革を重視する政策をとってきましたが、経済の変調を前に、抑制していたインフラ投資の積極化などにより景気を下支えする方向にかじを切りました。習指導部の求心力低下も噂される中で景気の安定は最重要課題ですが、インフラ投資の過熱はさらなる債務拡大につながりかねません。

米国との貿易戦争も中国政府だけで対応することは困難です。GDP世界2位の中国経済が腰折れすれば、貿易量が減る米国や欧州、日本の経済鈍化につながります。

米中の動きは経済的合理性よりも政治的思惑が強く、米中間選挙後は収束すると指摘する専門家もいます。しかし、それ以前に想定以上の悪影響が世界経済に広がる恐れもあります。(K)

Weekly Voice by UPF

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