世界の難民・避難民が過去最多 国際社会に打つ手はあるか

6月20日国連「世界難民の日」に考える

6月20日は国連「世界難民の日」でした。欧米を中心に大きなイシューとなっている「難民問題」。海外ニュースで、紛争地を逃れてきたシリアやロヒンギャの人々とその家族の表情を目にする私たち日本人の多くは、その悲惨さに同情を禁じ得ない一方、どこか遠くの場所で起こっている不幸な出来事として感じていることも、また事実ではないでしょうか。

毎年、国連の難民高等弁務官事務所(UNHCR)はこの「世界難民の日」に合わせて、「グローバル・トレンズ・レポート」という報告書を出しています。19日発表の同報告書によると、戦争や暴力行為、迫害によって避難を余儀なくされた人の数が、昨年末の避難民総数は前年よりも300万人近く増え、過去最多の6850万人に達しました。10年前の4270万人に比べ、5割増加したといいます。

難民・避難民の増加の大きな要因の1つに、紛争の増加があります。紛争や内戦には迫害や虐殺が伴うことが多いからです。

18日に赤十字国際委員会(ICRC)が発表した報告書「戦争における抑制の根源」(Roots of Restraint in War)最新版によると、今世紀に入って世界の内戦の数が2倍以上に増加したといいます。ICRCによると、2001年から2016年の間で「非国際的武力紛争」の件数は30から70以上に増加しているといいます。

紛争で問題を解決しようとする動きが加速するなか、政府が国内の紛争や騒乱を制御できず、ガバナンスと治安が崩壊する国や地域に対し、いまや国連や米欧が主導する国際秩序、安全保障の仕組みが機能しなくなりつつあります。

国連は2005年の世界サミットで、自国民の保護という国家の基本的な義務を果たす能力や意思のない国家に対し、その国の人々について「保護する責任」を負うとした成果文書を採択しました。しかしシリアの現状に代表されるように、国連もその役割を十分に果たせていません。

国連総会は2016年9月、「難民と移民に関する国連サミット」を開きました。難民問題を扱う初の首脳会議でした。ただ、難民支援の資金負担をはじめとする人道面の支援強化と同時に、内戦の終結に向けた外交努力など、状況を抜本的に改善させるための国際協力が話し合われたものの、問題の規模からすると十分な成果とは言えませんでした

同会議には安倍首相も出席し、人道援助や難民受け入れ国への支援などで28億ドル(約2800億円)規模の資金を拠出することや、紛争の影響を受けた難民らへの教育支援や職業訓練実施を表明した。5年間で最大150人のシリア人留学生の受け入れも約束しました。ただ、これも国際的には「お金は出すが難民受け入れに消極的な国」という印象になったようです。

難民問題の解決は結局のところ、紛争の解決とともに、「難民を受け入れ、一定期間保護したのち出身国への自主的な帰還を促す」「受け入れ、定住・永住させる」「受け入れ、別の国での再定住を目指す」に限られますが、これに対し受け入れ側の体制に限界が来ているのが実情です。

世界的な政治動向も難民にとって逆風と言えます。欧州の一部の国では難民や移民の受け入れに反対する政党が支持を伸ばしています。イタリアの新政権は今月、地中海で救助された難民の受け入れを拒否しました。経済負担や安全保障上の問題からです。

「人間の安全保障」と「国の安全保障」の両立を図ることは容易ではありません。しかし、放っていても危機的状況はますます深刻化するだけです。各国の政治的意志と協調の姿勢が求められています。(S)

Weekly Voice by UPF

「Weekly Voice by UPF」は、国連NGOであるUniversal Peace Federation Japan(以下、UPF-Japan)が、国内外の政治、経済、社会および文化について、UPFが推進する平和大使運動の視点から問題提起を行うウェブメディアです。 ※なお、ここで発表された内容はあくまで筆者個人の見方であり、必ずしもUPFの公式見解ではありません。