5歳の女の子の悲劇を繰り返さないために

家庭教育支援法の早期成立を願う

目黒区碑文谷で虐待死した5歳の女の子(船戸結愛ちゃん)の事件は、親に許しを請うひらがなの手紙の悲痛さを伴って日本中に衝撃を与えました。様々な兆候が把握され、児童相談所による訪問も実施されていましたが、結果的に悲劇を防ぐことはできませんでした。今回の事件を受けて、「親の権利」を制限してでも、行政・司法が介入できる仕組みを整えるべきだとの指摘も出てきました。

そもそも、絶対的弱者である子供を産み育てる、つまり「親になる」ことには愛情と献身をもって適切な養育を行う義務と責任が伴います。しかし、保育士、教師など子供の成育に関わる職業に、一定の育成過程や実習、資格試験が存在する一方、「親になる」ことには、特段、義務付けられた学習機会や試験が存在しません。また、親になってからも、適切な養育を行っているかどうか、外部から把握する方法は限られています。深刻な虐待が推定される場合に、何らかの強制力を持った対処が必要だという意見が出てくるのも当然だと言えるでしょう。

ただし、警察と児童相談所との連携など深刻な事例への対応を強化すべきことはもちろんですが、そもそも虐待が起こらないように「親を育てる」仕組みづくりも必要ではないでしょうか。その意味で、現在、各地の自治体で制定が進んでいる「家庭教育支援条例」の取り組みには、非常に大きな意義があると言えます。

この条例は、第一次安倍内閣で成立した改正教育基本法(2006年)で「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」(第十条)と家庭教育の重要性が明記されたことを根拠としています。全国に先駆けて同条例を制定した熊本県では、それまでの縦割り行政の弊害が取り払われ、教育庁、警察本部、健康福祉課など5部局17課が連携して家庭教育支援を行うようになりました。また、子育てをする保護者に対しては「親の学び」プログラムを、今後、親になる中高生に対しては保育体験など「親になるための学び」プログラムを実施しています。ちなみに、同県の「親の学び」プログラムは17年度だけで計2197回開催され、受講者は7万8000人にのぼっています。

現在、8県5市に拡大している「家庭教育支援条例」の取り組みに対して、共産党などは「行政による家庭への介入だ」などと批判していますが、これはあまりにも的外れです。なぜなら、地域の繋がりが弱まり、三世代同居も減った現代では、第三者がまったく介入できない「密室化した子育て」こそが問題になっているからです。

子供の養育環境が悪化する中、家庭教育支援の充実には高いニーズがあります。同条例を制定した静岡県では、事前に行ったアンケートで7割の親が子育てに悩みや不安を持ち、半数以上が「先生以外に相談や意見交換の場がほしい」と答えていました。実際に、三島市が同条例のもとで実施したプログラムでは、参加者の98%が肯定的な評価を下しています。

国会でも、議員立法で「家庭教育支援法」の提出を目指す動きが出てきました。結愛ちゃんのような悲劇を繰り返さないためにも、早期の成立が望まれます。(O)

Weekly Voice by UPF

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