「人づくりは国づくりの基本」の視点から精密な制度設計を

「高等教育無償化」で越えなければならない課題とは

昨年秋の総選挙で、教育無償化を公約に掲げた自民党が信任を得たことからも明らかなように、国が次代を担う人材に投資することへの異論は少ないでしょう。

少子高齢化社会の人口構造の下で、高齢者に偏っている社会保障財源の配分を「全世代型」に転換し、教育の無償化を通じて若い世代にも財源を充てることで、いわゆる「シルバーデモクラシー」の弊害を打破する狙いは間違っていないと思います。経済格差と教育格差の世代間連鎖を断ち切ることも焦眉の課題です。

しかし具体的な議論が進む中で、これからはその大義や意義を具現化する細かい検討が必要になってきます。

低所得世帯を対象とした高等教育の無償化については、専門家会議の第一回会合が先月30日に開かれ、支援対象となる学生の成績などの要件や、対象となる大学側にも課される要件をどうするか、そして授業料を減免する方法などについても議論がスタートしました。これは、去年12月に閣議決定された政府の2兆円規模の政策パッケージの柱のひとつで、一部の低所得世帯に限り大学などの授業料を減免したり、1年生については入学金も免除するなどとしたものです。

言うまでもなく高等教育の無償化には巨額の財源が必要であり、教育投資の必要性と同時に、無償化による効果が大きい、より具体的な政策設計が急がれているのです。

特に大学以上の教育無償化については、専門家の中でも意見が分かれ、財源問題のほかにも多方面から問題点が指摘されています。

まずは、大学の授業料免除が教育投資のリターンとしてどこまで期待できるのかがいまひとつ不明瞭な点です。教育格差を縮小させるために「子供たちの学齢がなるべく小さい時に行うべき」といった考えは多くの専門家の間でも指摘されており、その意味で幼児教育に対する投資の社会的なリターンの高さは、専門家だけでなく国民一般の感覚としても異論が少ないと思います。

一方、大学無償化については、大学教育の質や内容について議論が続いており、結論が出ていません。多様化、複雑化する社会の中で、国民自らが自分の道を切り開くための教育は大学だけでなく、職業訓練や企業内研修、生涯教育などで行われるべきとの考えです。

第2に、大学に進学しない人との公平性の問題です。5割強の日本の大学進学率では、約半数の人は高卒以下で働いていることになります。したがって大学無償化は、大学に行っていない(あるいは行けない)人々が納めた税金を、大学に行く人にあてがうことになるとの不公平感を指摘する声があがっています。

以上の議論のほかにも、国が授業料を肩代わりすることで国から大学への介入が強まるとの反発や、逆に「無償化は教育機関への『補助金』であり、ずさんな経営をしている大学を公費でカバーするもの」との批判もあります。

どれも見落とすことのできない議論ですが、それでもなお高等教育に対する効率的な資源配分が充分でないことは確かです。「人づくり革命」とともに政府は現在、働き方改革を進めていますが、テーマの1つに「雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の充実」も掲げられています。同時に、高等教育無償化の問題は「親が教育費を負担」「18歳で大学入学」「ほぼ全員が卒業して、新卒就職」といった現在の社会慣行や通念を時代に合わせて変化させていくでしょう。

「人づくり」は「国づくり」の基本であることを忘れることなく、当事者意識をもって「無償化」議論を見守りたいものです。(K)

Weekly Voice by UPF

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