北朝鮮の「ほほえみ外交」で揺れる半島情勢

日米韓という鎖の一番弱いつなぎ目を狙う

北朝鮮の「ほほえみ外交」で朝鮮半島情勢が揺れ動いています。

まずは、平昌冬季五輪に合わせた公演の下見をするため訪韓した北朝鮮の芸術団「牡丹峰楽団」の玄松月(ヒョン・ソンウォル)団長が、その美貌とスタイルで韓国メディアをとりこにしました。24時間放送のニュース専門チャンネル、YTNは玄団長の一挙手一投足を伝え、最大手の朝鮮日報は玄団長の写真を一面で掲載するなど、玄団長は韓国人、特に中高年男性の心を鷲掴みにしました。

今度は、金正恩(キム・ジョンウン)委員長の妹、金与正(キム・ヨジョン)氏の突然の韓国訪問です。北朝鮮で権力を世襲してきた金一族として初めての訪韓だけに、国内外のメディアの注目を集めました。強面のイメージがある金委員長の妹とは思えない、その知的で洗練された振る舞いに、韓国では北に対する印象が一変するようでした。メディアの報道も与正氏について好意的に報道。北朝鮮が核の開発を進めていることはまるでなかったような歓迎ぶりでした。

その与正氏は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領に正恩氏の親書を手渡して訪朝を要請したわけですが、これも見事でした。

文大統領の葛藤は相当なものでしょう。訪朝したい気持ちは山々でしょうが、米国を納得させるには、訪朝の目的が「非核化に向けた」ものでなければならないからです。まずは、平昌五輪直後に予定している米韓軍事演習に注目が集まります。ここで、文氏が中止や規模の縮小というカードを切らないことを祈るばかりです。

「鎖の強さは一番弱いつなぎ目で決まる」という言葉があります。逆に言えば、鎖を切るには、一番弱いつなぎ目を狙えばいいということになります。北朝鮮のほほえみ外交は、日米韓の3国の連携で一番弱い韓国を狙った、実に巧妙なものでした。しかも、韓国人の特徴である「民族に対する情」に徹底的に訴えかけました。

ほほえみ外交は英語で「Charm Offensive」と表現しますが、なるほど恐るべき攻撃力です。北朝鮮のほほえみ外交がすごいのは、それが「つくり笑い」であると感じさせない点です。気付いたら、文氏がその微笑みで完全に懐柔されていた、ということがないように願いたいところです。(H=ソウル在住)

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