トランプ大統領の「マッドマン・セオリー」は有効か

今の北朝鮮は60年代の中国と状況が酷似

今の北朝鮮は、60年代の中国と状況が似ています。核実験を断行したり、文化大革命が起こったりするなど、当時の中国は「政治的、軍事的にも危険な国」と認識されていました。おまけに、指導者の毛沢東国家主席は高齢ということもあり、判断力の衰えに対する指摘もあったといいます。

当然、米国では中国が核保有国になることを恐れて、「今こそ攻撃すべき」との見方が強まりました。しかし、1969年に発足したニクソン政権はむしろ中国に接近。72年に米大統領として初めて訪中したことはご存知でしょう。

それでは、ニクソン訪中の目的はなんだったのでしょうか。理由は2つです。1つはソ連と中国の間にくさびを打ち込むという政治的な理由。もう1つは、巨大市場に進出するという経済的な理由です。10億人がコカ・コーラを飲む姿を想像してみてください。

ところでトランプ氏が、「常軌を逸していて、予測不可能」と相手に思わせる「マッドマン・セオリー(狂気理論)」と呼ばれる外交戦術を発案したニクソン元大統領の信奉者でもあることはよく知られている事実です。

仮にトランプ氏が関係正常化に向けて北朝鮮と交渉すれば、中国との間にくさびを打つことになるでしょう。何より北朝鮮自身も、中国への依存度を軽減したいと考えて、米国との直接交渉を望んでいます。米国企業にとって、北朝鮮市場は中国のような魅力には欠けるでしょうが、トランプ氏はひょっとしたら平壌に高層ビル「トランプタワー」を建てることに関心があるかもしれません。

またトランプ氏はオバマ前大統領のレガシィ(遺産)を否定しようと躍起になっています。対北朝鮮政策に関して、オバマ氏のレガシィと呼べるものは何もないので、オバマ氏との違いをアピールしたいトランプ氏にとっても魅力でしょう。

さらには、当時の中国は今の北朝鮮以上にトップ層がイデオロギーに凝り固まっており、実用的な思考に欠けているという認識でした。

ところで、米朝が関係正常化で一致する場合のことを考えてみましょう。北朝鮮は核開発による部分的な抑止力で妥協する見返りとして、米国は北朝鮮の体制転換を諦めることになる可能性が高そうです。

米朝交渉は日本と韓国にとって望ましいディールではなさそうですが、可能性が捨てきれません。(H=ソウル在住)

Weekly Voice by UPF

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