「働き方改革」に求められる「働く=生きる」の視点

「労働時間の短縮」から次の段階へ

産経新聞などによると、自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長が、同日行われた衆院本会議の代表質問で野党側からの質問通告が本会議直前だったと明かし、質問通告を受けて安倍晋三首相の答弁内容を作成する政府職員の負担が大きくなっていることに言及しました。「働き方改革を進めている中で考えるべきことがあるのでは」という声が党役員会でもあがったといいます。

プレミアムフライデーや残業代ゼロ法案など、「働き方改革」という言葉に注目が集まっています。働き方改革とは本来、安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」の実現に向けた取り組み全体を差すもので、人々のライフサイクルを構築し直し、女性や高齢者などの労働機会を増やすことで、出生率および生産性の向上を達成しようというのが、働き方改革の本来の趣旨です。

しかし現在、各企業で進む働き方改革の取り組みを見てみると、「労働時間の短縮」に焦点が当てられていることがほとんどといえるでしょう。昨年、電通の新入社員が過労自殺したことや、今年10月にもNHKの記者が過労死したことも明らかになり、そうした流れに拍車がかかりました。

もちろん、従業員の健康を守ることは雇用する企業側の管理責任であり義務です。従業員個人が健康であることが意欲、能力の向上ひいては生産性の向上につながることはいうまでもありません。

しかし、「業務の効率化」「労働時間の短縮」をうたうだけでなく、業務やビジネスそのものを見直さなければ根本的な改革にはなりません。現在、日本人の働きがいや生産性はG7の中で最下位です。労働時間が短縮され、空いた時間を持て余して街をふらつく「フラリーマン」など、働き方の意識と働き方改革にズレが生じている事象も現れてきました。

「労働時間を短縮する」ことを短期的な視点だとすれば、中長期的な視点もクローズアップされなければならないでしょう。すなわち中長期的には、多くの世代にとってこの「働き方」が「生き方」につながるものとなり、「働きがい」が「生きがい」であるといえるような改革の視点です。

一億総活躍社会のもう一つの目玉政策として掲げられている「人づくり革命」。その具体策を検討する「人生100年時代構想会議」の有識者議員に起用されたリンダ・グラットン英ロンドン・ビジネススクール教授は、これからの働き方について大事なのが「レジリエンス」(精神的な回復力)だと説きます。国際的にもビジネスにおいても変化の激しい環境の中で、「心身ともに活力にあふれ、苦しい状況でもそれを挽回する能力」が必要だと教授は主張しています。自分の能力を高め、逆境から挽回する精神力をもって、組織の内外を問わず異なるバックグラウンドの人たちと協力しながらイノベーションを起こす――。こうした「知的なレジリエンス」「心のレジリエンス」「人とのつながりに関するレジリエンス」を高めることが、働き方改革を成功させるヒントかもしれません。

そのためには、企業も社会も大きく意識を変えなければなりません。グローバル化とテクノロジーが発達した現代、消極的な社会に戻ることはもうできません。

前述の、小泉氏が提起した「衆院本会議の質問通告」問題で、このニュースを伝えるネットメディアには、読者から「もう(質疑と答弁は)グループウェアでいいんじゃない?」といったコメントも書き込まれました。

それはちょっと行き過ぎだとしても、今後、社会のいたるところで「自己本位ではなく利他的であること」「クローズドではなくオープンであること」「決まりに縛られず柔軟であること」といった視点がますます求められてくると感じます。(S)

Weekly Voice by UPF

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