米国の朝鮮半島政策に驚くほどの一貫性

「先制(preemption)」と「予防(prevention)」の違いを正しく認識せよ

北朝鮮との対話の是非を巡りトランプ米大統領とティラーソン国務長官の発信にズレが際立っています。北朝鮮との対話路線を探るティラーソン国務長官に対し、トランプ米大統領は「時間の無駄だ」と酷評。一時は、米メディアではティラーソン氏の辞任論も取り沙汰されました。

米朝間の緊張が高まるたびに、当コラムでは「いかなる形であれ、北朝鮮との対話は必要」とのスタンスを取ってきました。確かに今は対話の時ではないかもしれませんが、これまでの経緯を見ても「出口戦略のない対話」には効果がないことは明白ですし、何よりも米朝の軍事衝突で日本と韓国に大変な被害をもたらされるというと最悪の事態を避けなければならないと思うからです。

ただ、米国の著名なジャーナリスト、ファリード・ザカリア氏も指摘しているように、もはや北朝鮮の非核化を対話の条件とする「ゾンビ政策」には効果が期待できないことは明らかです。「抑止は十分可能」と指摘する専門家も少なくありません。

とはいえ、トランプ政権による北朝鮮への攻撃の可能性は消えません。ここで「先制攻撃」について考えてみたいと思います。

先制攻撃に関しては、「先制(preemption)」と「予防(prevention)」の違いを正しく認識する必要があります。先制攻撃は国際法で認められていますが、予防戦争はそうではありません。先制攻撃は敵が今まさに攻撃しようとしており、その攻撃はもはや避けられないという前提が必要となります。つまり、先制攻撃によってその脅威を取り除くか、少なくともその攻撃によって受ける被害を軽減できるという見込みがあることが必要です。例えば、CIAなどの米国のインテリジェンス機関が「北朝鮮が今まさに韓国や日本を攻撃しようとしている」という情報を入手し、それが確かであった場合、米大統領が北朝鮮への先制攻撃を決断しないような状況は考えられません。

一方、予防戦争は敵の脅威が差し迫ったものではなく、近い将来にやってくるものでもないにも関わらず、敵が重大な脅威となる前に先に攻撃しようとするものです。

ただ、米国が予防戦争に出れば、北朝鮮が韓国だけでなく日本や米国本土に向けて反撃してくることは間違いありません。1951年以降の米国の朝鮮半島政策をみると、トランプ政権による予防戦争の可能性は極めて低いと指摘する米国人専門家もいます。

米国の朝鮮政策は、51年に当時のトルーマン大統領が朝鮮戦争で米軍を主体とする国連軍を指揮したマッカーサー司令官を解任して以来、一貫しています。それは、韓国を北朝鮮から守ることと、第2の朝鮮戦争を防止することです。実際、2010年の韓国哨戒艦沈没や延坪島(ヨンピョンド)砲撃では、北朝鮮に報復しようとする韓国に自制を促しました。韓国が報復すれば、全面戦争に発展する可能があったためです。

一方で、北朝鮮の指導者も愚かではありません。米韓の軍事力が彼らよりもはるかに勝っていることを知っているため、核兵器で韓国を先に攻撃するような自殺行為に出るとは考えにくいです。(H=ソウル在住)

Weekly Voice by UPF

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