「反差別」なら暴力は許されるのか

米国の市民集団に紛れ込む「極左」グループ

今、米国では保守(右派)とリベラル(左派)の文化戦争が激化しており、双方に過激な暴力的集団を生み出しています。日本では、左傾化した米国主流メディアの情報しか取り上げないせいか、極右、白人至上主義者に対する批判は伝えられても、極左の過激派についてはあまり積極的に報道されていません。しかし、トランプ政権の成立以降、極左集団の活動は活発化しており、各地で暴力事件を引き起こしています。


暴力を肯定する極左集団「アンティファ」

そうした集団の中で、代表的なものが「アンティファ(Antifa)」、アンチ・ファシズム運動です。彼らは、極右の集会ばかりでなく、トランプ大統領の就任式をはじめ、共和党系の集会があるたびに黒い覆面姿で現れ、こん棒をふりまわしたり、唐辛子スプレーを噴射したりしています。すでに2011年の反格差、反グローバリズムのオキュパイ・ムーブメントでも彼らの姿は目立っていましたが、そのルーツは1930年代のヨーロッパにさかのぼります。

当時、ヨーロッパではイタリアのムッソリーニ、ドイツのヒトラーが率いるファシズムの嵐が吹き荒れていました。そうしたファシズムに対抗して、共産主義者、無政府主義者が中心となって開始されたのが、アンティファでした。最初のアンティファと称するグループは、1932年7月10日、コミンテルンの密かな支援の下にドイツ共産党によって組織されたといわれます。

ファシズムはもちろん批判されるべきです。しかし、左翼勢力が中心となって形成された「アンティファ・ムーブメント」の問題点は、既存のあらゆる政治的権威や資本主義体制そのものを「抑圧、差別」として反対し、対抗手段として「直接的行動(暴力)」を積極的に肯定するところにあります。つまり、反ファシズムを口実とした、共産主義の革命運動なのです。


エスカレートする「極右」と「極左」の対立

彼らは、米国ではファシズムの代わりに「人種主義(レイシズム)」に反対し、奴隷制と共に発展してきた米国の歴史そのものを否定する運動を繰り広げています。奴隷制を支持する側だった南軍関連の記念碑や銅像の撤去運動を推進したり、人種差別を米大陸に持ち込んだ元凶としてコロンブス関連のモニュメントを破壊するなどしています。

そうした行き過ぎともいえる動きが、米国の歴史に誇りをもつキリスト教徒など保守層の危機感を煽り、極右勢力が拡大する一因ともなっています。8月12日、バージニア州シャーロッツビルで起こった衝突事件も、その延長線上で起こったものでした。

この事件は、南軍の英雄リー将軍の銅像撤去に反対する「極右、白人至上主義者」と「市民集団」との衝突だったと伝えられています。しかし実際には、市民集団の側にもアンティファなど全米から召集された極左集団が含まれており、極右勢力と文字通りの乱闘騒ぎを繰り広げていました。

結果として、一人の極右青年が車を暴走させて女性の命を奪うという悲劇が起きたため、極右勢力の側に非難が集中しましたが、混乱をエスカレートさせた責任自体は双方の過激派にあったといえます。また、8月27日にもカリフォルニア州バークレーで、ごく少数の右翼活動家に対して、100人余りのアンティファメンバーが、一方的に殴る蹴るの暴行を加える事件が起きています。

その意味では、トランプ大統領が述べた「双方に責任がある」という言葉は、必ずしも間違いではありません。しかし、「どちらの側にもいい奴がいる」と述べたことは、犠牲者も出した暴力集団に対して、明らかに不適切な発言でした。


保守、リベラルがともに、過激主義に対して声をあげるべき

現在、必要なことは保守、リベラル問わず、双方に存在する過激派に対して非難の声を挙げることでしょう。その点で、ニューヨーク・タイムズなど主流メディアに掲載される一部のリベラル知識人の論調は気になります。彼らは、アンティファの暴力を「極右の差別主義者から平等や民主主義を守るためのもので、極右の暴力と同じように扱うことはできない」と擁護しています。まるで、冷戦時代の「帝国主義米国の核兵器は悪だが、解放勢力であるソ連の核兵器は善だ」という共産党、旧社会党の主張そのものですが、そうしたご都合主義は通用しないでしょう。

格差が拡大し、若者を中心に既存の社会秩序への不信感が高まる中で、極右極左を問わず、お互いを諸悪の根源と見なして、敵対勢力への誹謗、中傷、暴力をためらわない勢力が力を増しています。彼らの運動が社会をより良い方向に導くことはなく、さらなる分裂と破壊をもたらすだけであり、決して容認すべきものではありません。

すでに保守の側では共和党議員、トランプ政権関係者などが、極右、白人至上主義団体を明確に非難し、距離を置く姿勢を鮮明にしつつあります。共和党最大の支持母体でもある福音派の南部バプテスト評議会も過去の奴隷制を反省するとともに、オルト・ライトや白人至上主義を非難する声明を正式に採択しました。同様に、リベラルの側からもアンティファなど過激な極左勢力に対して明確に反対の声をあげる義務があるでしょう。(O)

Weekly Voice by UPF

「Weekly Voice by UPF」は、国連NGOであるUniversal Peace Federation Japan(以下、UPF-Japan)が、国内外の政治、経済、社会および文化について、UPFが推進する平和大使運動の視点から問題提起を行うウェブメディアです。 ※なお、ここで発表された内容はあくまで筆者個人の見方であり、必ずしもUPFの公式見解ではありません。