サムスントップに懲役5年

「政経癒着」断絶への第一歩か

韓国のソウル中央地裁は8月25日、前大統領の朴槿恵(パク・クネ)被告への贈賄罪などに問われたサムスングループ経営トップのサムスン電子副会長、李在鎔(イ・ジェヨン)被告に懲役5年(求刑12年)の判決を言い渡しました。これまで横領や背任などで有罪判決を受けた財閥トップの中で最も重い刑となりました。韓国では、横領や背任などで有罪判決を受けた財閥トップに対する判決はこれまで「懲役3年執行猶予5年」が「相場」でした。今回の判決は、いわゆる「Too Big to Jail(企業が大きすぎてトップを収監できない)」という公式が崩れるきっかけになりそうです。

今回の判決内容は、貧富の差を生む財閥を嫌う韓国世論を意識した面も否定できないとの見方があります。いわゆる「情治国家」として、憲法や法律よりも国民の情緒を優先するなど法治国家としての韓国の未熟さを指摘する声が出ているのも事実です。あるいは、韓国司法の左傾化を憂う声も上がっています。しかし、韓国の財閥の問題点を知る筆者としては、その意見に対しては半分賛成で半分反対の立場です。

それでは、韓国の財閥の何が問題なのでしょうか。

韓国を代表するグループ企業のサムスンや現代自動車、ロッテの支配構造は、系列会社同士が株式を持ち合う複雑な「循環出資」になっています。簡単に説明すると、A社→B社→C社→D社→A社というように順繰りに株式を保有しているわけです。 サムスンであれば、サムスン物産→サムスン生命→サムスン電子などの順番になっています。

日本でも企業同士の株式の持ち合いはよく見られますが、韓国の循環出資のポイントは、わずかな持ち分で創業者一族がグループ全体を支配するのがポイントです。例えば、現在闘病中の李健熙(イ・ゴンヒ)サムスン電子会長でさえ、サムスン電子株を3%も保有していません。その李会長がサムスン電子の会長であり、サムスングループの総帥でいられるのは、ひとえにこの循環出資によるものです。もちろん、李会長自身は優れた経営者です。

李会長らグループ総裁の悩みは、どのようにして子供たちに事業を継承させるかということです。よく使われるスキームが、いわゆる「内部取引」です。 例えば、グループ内に物流やIT関連の会社を設立します。その会社の株式はグループ総帥の息子たちが所有します。そして、グループ全体が集中的にその会社に仕事を発注するわけです。当然、売り上げは上がります。次は、その会社の株式上場です。すると、グループの総帥の子供たちは莫大な利益を手にできます。今度は、その資金でサムスン電子や現代自動車などグループ内の中核企業の株式を購入するというわけです。

李在鎔被告の場合、サムスン電子を支配するには、自身が筆頭株主を務める第一毛織という企業とサムスン電子の株を保有するサムスン物産の合併を成功させる必要がありました。しかし、それがかなり無理な合併であったことは、サムスン物産の物言う株主、米エリオットマネジメントが強く反対し、合併取り消しを求めて裁判所に提訴したことでも分かります。 何が問題だったかというと、合併の過程でサムスン物産の株価が低く評価されてしまったわけです。ただ、李副会長がサムスン電子の支配権を強めるという以外に、合併に経済的な合理性はありませんでした。

さらに、サムスングループにはもう一つ大きな課題があるのですが、長くなりますので続きはまた今度。(H=ソウル在住)

Weekly Voice by UPF

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