男女の区別と「多様な性」

 性自認にもとづくトイレの使用は認められるべきか

7月24日、大阪大学は性的少数者への差別を解消するために、全教職員、学生を対象に「性の多様性」を尊重する基本方針を策定したと発表しました。具体的な方策の一つとして、性別を問わずに利用できる「オール・ジェンダー」のトイレ表示を作成。多目的トイレに掲示したり、学外での活用も呼び掛けるとしています。

大阪大学は「国立大での策定は珍しい」と胸を張りました。この例にみられるように、「性的少数者の人権に配慮すること」イコール「先進的」というイメージが広がっています。もちろん、困っている人に配慮することは大切ですが、この「性自認に基づくトイレ使用」については様々な問題点も指摘されています。

今回のように「多目的トイレ」という、もともと性の区別なく使用できるトイレについては、それほど問題はありませんが、米国などでは、男女別のトイレについても、身体的な性別にかかわらず、自分が自認する性別のトイレを使用できるようにしようという動きが出てきています。オバマ政権時代には、全国の公立学校に教育省、司法省の連名で、上述のような通達が出されたほどです(トランプ政権になって撤回)。

現実を無視した「先進的な」取り組みは、様々な弊害を生むことがあります。具体的に考えて見ましょう。オバマ政権の通達のように、「身体的には男性で、性自認が女性」(MtF)という人が、女性トイレを使用する、ということに本当に問題はないのでしょうか? 性自認を外側から診断することはできないため、MtFのトランスジェンダーを詐称する性犯罪者が、女性トイレに紛れ込む可能性もないとは言えません。

実際に、米国では保守派のキリスト教徒ばかりでなく、フェミニズムの立場に立つ女性運動家などからも懸念の声が上がっています。保守派のヘリテージ財団が開いたシンポジウムでは、女性運動家らが「レイプ被害者などにとっては、男性の体を持った人が同じトイレを使用することは、恐怖以外の何物でもない」と訴えました。

日本でも、女子大にMtFのトランスジェンダーを受け入れるべきか、という議論が一部で始まっています。男女別のスポーツチームに関しても、同様の議論が出てくるでしょう。現実の生活の中では、更衣室やシャワールーム、列車の女性専用車両、夜行バスの座席順など、男女の区別を前提とした施設や制度は数多く存在します。それらはどうなっていくのでしょうか?

現在、欧米の「性自認」をめぐる議論では、「男女の区別」を基本に据えること自体が、トランスジェンダーにとっては苦痛であり差別であるという論調が支配的となっており、企業のエントリーシートなどから性別欄が消えたり、Facebook(英語版)の性別欄では数十種類の性別が選べるようになっています。

個人の人権に配慮することと、各種の政策や制度の根幹に変更を加えることとは、慎重に区別されなければなりません。99%以上の人が「男女」という、性の厳密な区別を基本に生活している以上、社会も、その区別に従って構築されるのが合理的です。男女の区別を廃止し、「多様な性」に基づいて社会制度を再構築することは、様々な副作用を産むことになるでしょう。(O)

Weekly Voice by UPF

「Weekly Voice by UPF」は、国連NGOであるUniversal Peace Federation Japan(以下、UPF-Japan)が、国内外の政治、経済、社会および文化について、UPFが推進する平和大使運動の視点から問題提起を行うウェブメディアです。 ※なお、ここで発表された内容はあくまで筆者個人の見方であり、必ずしもUPFの公式見解ではありません。