「徴用工問題」は日韓関係の「時限爆弾」

日韓基本条約以降の両国関係が根本から覆される恐れも

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、国政運営5カ年計画に「従軍慰安婦被害者をたたえる日」を制定するとの内容を盛り込みました。日本の外務省はソウルの日本大使館を通じて抗議。慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的解決」を明記した2015年の日韓合意を順守するよう求めました。

しかし、韓国に進出した日系企業にとって、「徴用工問題」での大法院(最高裁に相当)の判決の方が深刻でしょう。日本が朝鮮半島を統治下に置いていた第2次世界大戦中に、労働に従事させられたとする元朝鮮人徴用工やその遺族が、韓国に現地法人を持つ個々の日本企業を相手取って法的賠償を求めた裁判で、大法院は12年5月に日韓請求権協定で個人請求権は放棄されていないとの判断を示しました。

日韓国交正常化40周年の2005年、韓国政府は国交正常化交渉に関する外交文書を公開しましたが、その際、日韓請求権協定に対する再評価が行われるようになりました。例えば、「完全かつ最終的に解決された」(2条1項)請求権に個人のものは含まれているのか、などの疑問がそうです。韓国政府は請求権協定に対する法的立場を整理し、慰安婦・被爆者・在サハリン韓国人の個人請求権は放棄されていないとの考えを示しました。戦時徴用工についても検証の対象になりましたが、時の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は、請求権協定で日本から受け取った無償3億ドルについて、「強制動員被害補償問題解決の性格の資金等が包括的に勘案されている」として、事実上、決着済みとした経緯があります。その意味で、大法院の判断は韓国政府の解釈とは明らかに異なります。

こうしたなか、大法院判決から5年となる今年4月に、韓国の市民団体がソウルの日本大使館や釜山(プサン)の日本総領事館の前に、解放記念日にあたる8月15日に徴用工の像の設置することを発表しているほか、今月20日にも別の団体が南部・済州(チェジュ)島の在済州日本総領事館前に同様の像を設置する計画があることを発表しました。また、終戦間際、長崎市の「端島炭坑」で旧日本軍が過酷な労働を強いていた徴用工を題材にした映画「軍艦島」が26日から韓国で公開され、人気俳優が出演していることもあり注目を集めています。この映画は史実を反映した記録映画ではなく、あくまで創作であることを監督自身が語っていますが、日韓の歴史問題をめぐって韓国国内に否定的な世論が高まることも予想されます。

大法院判決の後、差し戻し審で賠償を命じられた複数の日本企業は不服として再上告中です。しかし、大法院が12年の判決内容を自ら覆すとは考えにくく、日本企業に賠償を命じる判決を確定することが確実視されています。徴用工問題は必ず爆発するという「時限爆弾」と表現する専門家もいます。韓国政府もこの問題には頭を悩ませており、65年の日韓基本条約以降の両国関係が根本から覆される恐れがあるので要注意です。(H=ソウル在住)

Weekly Voice by UPF

「Weekly Voice by UPF」は、国連NGOであるUniversal Peace Federation Japan(以下、UPF-Japan)が、国内外の政治、経済、社会および文化について、UPFが推進する平和大使運動の視点から問題提起を行うウェブメディアです。 ※なお、ここで発表された内容はあくまで筆者個人の見方であり、必ずしもUPFの公式見解ではありません。