日本の課題解決へ避けて通れない「働き方改革」

従来の雇用慣行が少子化助長の一因

安倍首相が昨年夏、アベノミクスの第2ステージとして「新3本の矢」を掲げましたが、それを達成する手段の一つとしてクローズアップされたのが「働き方改革」です。電通社員の過労による自殺や、ヤマト運輸の長時間労働と残業代未払いが社会問題化したことで昨今、さらに注目を集めています。

政府はこのほど、専門職で年収の高い人を労働時間の規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」を盛り込んだ労働基準法改正案を、連合の要請を受けて修正する方針を固めました。働き過ぎを防ぐ対策の強化を求める連合の要請を受け入れた上で、今秋の臨時国会に改正案を出し直す見通しです。

今年3月、安倍首相が議長を務める「働き方改革実現会議」で、同一労働同一賃金の実現や長時間労働是正など働き方改革実行計画案が示され、政府は法案化に向け厚生労働省の労働政策審議会での審議を進めてきました。当初、連合や野党は高プロについて、「残業代ゼロ法案だ」と強く批判してきましたが、7月17日になって連合の逢見事務局長が「条件付きで認める」と発表したため、一気に法律化の流れができました。

そもそも、なぜ「働き方改革」が必要なのでしょうか。

それは日本経済が抱える課題のいずれもが、働き方と密接に関係しているからです。

もっとも本質的なポイントが、従来の働き方が少子化を助長している点です。人口減少問題の解決には、いうまでもなく出生率の引き上げが必須の課題です。しかし、従来の働き方は男性の育児・家事の参加を阻み、女性の子育ての機会費用を高めていると指摘されています。

次に、従来型の働き方が経済の構造改革を阻んでいる点です。旧来の雇用・労働慣行の特徴である終身雇用・年功序列(年功賃金)・OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を通じた人材育成が、現在の長時間労働、正規・非正規格差、雇用の固定化、天下りなどの一因となっています。

さらに、日本経済の深刻な人手不足を緩和するには、女性や高齢者、外国人などの参入を促し、効率的に生産性を引き上げなければなりません。そのためにも働き方改革は必須なのです。

このように日本の社会・経済の課題解決のためには、働き方改革は避けて通れない問題です。冒頭の高プロの問題は、従来の日本の雇用形態であった「メンバーシップ型」(人に仕事をつける=同一企業長期雇用型)から「ジョブ型」(仕事に人をつける=専門能力による流動的雇用型)への変化がもはや避けられなくなることを示しています。そのために必要なことは、必要なスキルや能力をもっと積極的に身につけることだけでなく、かつてないスピードで技術革新が進む中で「陳腐化」しない能力開発が個々人に求められる時代になりつつあるのです。

国全体として①人口減少や労働力不足へどう対応するか②旧来の長時間労働モデルをいかに脱し、かつ生産性を向上させるか③どうやってワークライフバランスを実現して健康で幸福な個人と家庭の生活を実現するか――。いずれも解決の鍵は、政府と国民が共に「働き方改革」の議論を、単に同一労働同一賃金の実現や長時間労働是正の解決だけに留めず、その本質を理解しながら制度改革→業務改革→意識改革を進めていかなければなりません。(Y)

Weekly Voice by UPF

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