「家族喪失社会」の孤独な老後

世代を超えて支えあう仕組みをいかにつくるのか

7月5日、総務省が2017年1月1日現在の人口統計を発表した際、出生数の100万人割れが話題になりました。同時に、高齢者の総人口比率も27.17%となり、実に日本人4人のうち1人が65歳以上となっています。では、そうした方々は今、誰と、どんな暮らしを送っているのでしょうか。

6月末に厚生労働省が発表した統計では、高齢者のみで暮らす世帯が約1300万世帯に上る一方で、三世代で暮らす世帯は、年々減少し続けています。高齢者のいる世帯のうち、最も多いのは「夫婦のみ世帯」で31.1%、「単独世帯」が27.1%、「三世代世帯」は11%にすぎません。1986年に「三世代世帯」が44.8%を占めていたことと比較して、その変化のスピードはあまりにも急激です。今や、波平さんや友蔵さんのように孫と一つ屋根の下で暮らすおじいちゃん、おばあちゃんは、およそ1〜2割に過ぎません。

子供や孫と暮らさない(暮らせない)高齢者の増加は、様々な問題を生み出します。介護全体のうち、高齢者同士で介護を行う「老々介護」は54.7%を占めています。また、一人で食事を行う高齢男性はうつ病の発症率が2.7倍になります。年間3万件に上る「孤独死」も今後、さらに増えていくでしょう。

また、近年、高齢者犯罪が高水準で推移していますが、中でも高齢者による暴行事件が20年余りの間に数十倍に増えています。89年には暴行で検挙された高齢者は48人でしたが、2015年には実に3808人に達しました。ここにも、高齢者の孤立が少なからず影響を与えているといわれます。

もともと、人間は加齢とともに脳の機能が低下するため、感情を抑制できず、怒りっぽくなることがわかっています。精神科医の和田秀樹氏は、こうした高齢者に対しては「受容、傾聴、共感が重要」だと指摘しました。かつては子供や孫などが年寄りを敬い、大切にする環境がありましたが、現代の孤立した高齢者には、自分の話に耳を傾けてくれる親族も、寂しい事情を共感してくれる友人も不足しています。こうした環境も、高齢者が暴行事件を引き起こす一因だと考えられているのです。

深刻なのは、生涯未婚率が上昇し、40代、50代の男女に「孤立した高齢者」予備軍が急増しているという事実です。このうち、高価な介護施設に入居できる人は別として、かなりの数の人々が高齢者のみの、あるいは一人きりの不便で寂しい生活を送るしかありません。

先日、厚労省が「認知症サポーター」の育成目標を1200万人に引き上げましたが、実際、認知症に限らず、高齢者の見守り、サポートには全国民挙げての取り組みが必要となるでしょう。最近では、子育てに関して近隣住民がサポートしあう仕組みづくりも進んでいますが、それらは高齢者にとっても有益なものとなるでしょう。育児をサポートしてほしい若者世代と、高齢者のみで寂しく暮らす世代とは、お互いのニーズを補いあえる可能性があるからです。「三世代家族」は難しくても、「三世代コミュニティ」ならば作れるかもしれません。

いずれにせよ、赤ん坊として生まれ、加齢とともに体が衰える人間は、複数世代が助けあって暮らすよう宿命づけられていることを改めて認識しなければなりません。そのことは特に、これから結婚適齢期を迎える世代にとって重要な教訓となるはずです。(O)

Weekly Voice by UPF

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