地域の個性を強化し雇用機会の拡大を

「地方創生推進交付金」の対象を拡大、政府方針

政府は6月18日、地方自治体が独自に行う取り組みを支援する「地方創生推進交付金」の対象を拡大する方針を固めました。従来の交付金の対象は、東京一極集中是正や人口減対策に取り組む自治体が、民間と連携して進める観光振興や地方移住促進策、街づくりが中心でした。これに対し、6月9日の閣議決定では、新たな地方創生の基本方針として「地方創生の加速化」が明記され、地方の「稼ぐ力」の強化が掲げられました。これを受け、成長が見込まれる事業について、業種を問わず「地域経済牽引事業」に指定し、中核企業に自治体を通じて交付金を重点的に配分することで、これまでの人を呼び込む事業から一歩踏み込み、地方自治体に「稼ぐ力」を求めたのは新たな試みといえます。

自治体が民間並みの経営感覚を持てるのか疑問視する向きもあるようですが、「地域の活性化はその地域が担う」という視点をより明確にした点で、今回の方針決定は評価できます。

従来型の地域づくりが主に国主導で行われてきたために、全国で同じような地域振興が「金太郎飴」的に生み出される傾向があり、地域による環境やニーズの違いにうまく対応できずに停滞するケースが少なくないことを考えれば、今後の地域政策が向かう方向性は、各地域が地域資源を生かしながら、より個性的な方向を推し進めることでしょう。そのために、過疎地域や山間地域のような取り残された地域に配慮しつつも、「伸びる地域」をできるだけ伸ばすような施策も必要です。また、大学や研究機関などの知的資源を組み合わせながら、地域の成長力を高めていく発想も今後ますます強化されていくべきでしょう。

地方における、「少子化による人口減少で潜在成長率が低下し、雇用機会が減少」→「雇用・所得を得るために生産年齢世代の都市部流出」→「さらに潜在成長率が低下」という負のスパイラルは深刻です。一方で、従来の地方創生推進の基本方針の一つである「『東京一極集中』の歯止め」については、もう少し冷静な視点が必要です。東京への人口集中は事実ですが、総務省やシンクタンクが公表した人口増加率の統計で見ると、札幌や仙台、福岡などの中核都市の増加率のほうが東京都区や首都圏主要都市より高いのです。つまり、人口の集中は「東京一極」というよりは中心都市に向かっているというのが正確でしょう。そして、そうした傾向は、政策の問題というより現在の経済・社会構造の流れが「サービス産業化」による規模のメリットの追求や、「高齢化」による利便性や効率性などの集積を追求した結果の自然な流れといえます。そう考えると、「東京一極集中」の是正が、ただちに地方創生や出生率上昇につながるとは考えにくいのが実情です。

地方創生の現実的な視点は、人口が集まっている都市部の経済力をさらに活性化させつつ、民間と連携しながら、今後伸びる需要を創り上げていくことです。今回の「地方創生推進交付金」の対象拡大が、例えばAIなどのテクノロジーの積極活用を推し進め、社会環境に対応するイノベーションを生み出すきっかけとなることを期待します。

同時に、地方が行う少子化対策については、就学、雇用の機会次第で若者や子育て世代が容易に他地域に移動するなど、効率の悪さが指摘されていることから、地方任せではなく国が主導して対策を講じる必要があります。(S)

Weekly Voice by UPF

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