韓国大統領に文在寅氏、「積弊の清算」で若年層が圧倒的支持

格差社会や社会の不公正に若年層の怒りは沸点に

韓国大統領選挙は9日に投開票が行われ、文在寅(ムン・ジェイン)氏が当選しました。朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾・罷免による補欠選挙だったため、引継ぎの期間なしで10日に大統領に就任。これまでの選挙モードから一気に統治モードに切り替わりました。今日は大統領選挙を総括し、今後を展望してみたいと思います。

文氏の勝利のポイントは、①「積弊」と呼ばれる旧体制の弊害の清算②最大与党「共に民主党」の組織力③盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下に秘書室長(日本の官房長官に相当)として青瓦台(大統領府)に勤務した経験――の3つに要約されます。

特に積弊に関して、日本人の感覚すれば朴氏が罷免された時点で清算は終わっており、朴氏の逮捕まで要求するのはやりすぎではないかと考えがちです。しかし、格差社会や社会の不正や不公平に対する若年層の怒りや叫びはもはや沸点に達しており、彼らは今回、軍事独裁政権の時から積み重ねられた政治、経済、社会分野での構造的な問題まで清算するよう求めました。そのような積弊を清算してくれそうだと思える候補者が、他ならぬ文氏だったわけです。

実際、文氏の選挙集会は終始、若者の熱狂に包まれていました。まさに、朴氏の弾劾を迫った「ろうそく集会」の延長だったわけです。反面、与党保守「自由韓国党」の洪準杓(ホン・ジュンピョ)候補の集会は、弾劾の無効を訴えた「大極旗(テグッキ)集会」さながら、白髪交じりの60代以上が中心でした。

一方、中道野党「国民の党」安哲秀(アン・チョルス)候補は選挙戦終盤、選挙カーから降りてカフェやデパートを歩きながら直接市民に語りかける戦術に切り替えました。態度を保留している保守層を取り込もうと無理をする姿が、有権者にとても不自然に映りました。結果、中道という立場のあいまいさから保守層をつなぎとめきれず、支持率も下落しました。その後、遊説スタイルに切り替えたことで、安氏は本来持っている良さを取り戻し始めましたが、時すでに遅く、選挙では洪氏にも逆転を許しました。ただ、議席40という国民の党としての組織力の弱さを考慮すれば、健闘したとの見方もあります。

積弊勢力と「協治」も

さて文新政権ですが、今後は厳しい国会運営が予想されます。共に民主党は、議席数が韓国国会(300議席)の半分にとどかない「少数与党」だからです。韓国国会では、法案を通すには2分の1ではなく、5分の3の賛成を必要とします。つまり、野党の協力なしに共に民主党の公約である雇用創出のための法案などを通すことはできません。

選挙終盤に洪氏が猛追したことで、「傾いた運動場」(従来、韓国の政治風土の中で常に右派が有利な状況を示す言葉。今回は朴前大統領の収賄事件と保守政権への不満から、逆に選挙戦が左派に有利に働いている意味で用いられた)といわれ、瀕死の状態だった保守政党も息を吹き返しました。文氏もそのことを意識しており、選挙終盤に自由韓国党を「協治」(協調・協力関係)の対象だと発言しています。

しかし、自由韓国党と組むということは「積弊勢力との妥協」を意味することになるため、若年層が文氏に対して抱いた希望が一気に失望に変わる恐れがあり、もろ刃の剣といえます。

3〜4年後には文氏に失望した若年層は再びろうそくに火を灯すのでしょうか?

韓国では世代間の対立は今後も深刻なまま続いていきそうです。(H=ソウル在住)

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