日本は反「内向き政策」・反「保護主義」の旗手に

トランプ米大統領就任100日、「米国第一」外交に世界は戸惑いの視線

米国のトランプ大統領が就任してから100日になりました。4月29日に公開したビデオ演説で、トランプ氏は「政権最初の100日は米国史上最も成功を収めたと思う」と自画自賛したうえで、国内に雇用を取り戻したなどと主張しました。

トランプ外交の100日については、就任当初の、国益を優先し、同盟関係を軽視する方向に向かうのではという警戒感は薄まり、特にシリア空爆、中国・北朝鮮への強い圧力については、共和党のみならず民主党の一部からも評価されています。マティス国防長官、マクマスター大統領補佐官、ティラーソン国務長官と、歴代政権史上最強ともいわれる有能な主要閣僚に囲まれ、トランプ政権はうまく機能し始めているというのが専門家の大方の意見です。

こうした変化を「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」の変化と見る向きがある一方、「シリアも北朝鮮も自国への悪影響を第一に考えた結果であり、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの離脱や地球温暖化対策を目的とする規制見直し、国連やODA(政府開発援助)への拠出金削減方針が『アメリカ・ファースト』の名のもとで行われていることに変わりはない」との指摘もあり、世界はいまだ戸惑いの視線を送っています。

昨年6月の英国EU離脱選択(今年3月に正式に離脱交渉開始)とともに、戦後の新たな国際秩序づくりをリードしてきた西側民主主義のリーダーがともに「内向き」ともいえる姿勢に転じた背景には、経済格差の拡大や相次ぐテロへの不安増大などが挙げられています。

しかし、時に「自国中心主義」ともいえるこうした政策には、逆に世界のパワーバランスを不安定化させる危険性が潜んでいます。特に、世界秩序の形成に大きな役割を担ってきた多国間の枠組みが無力化することは大きな問題です。

その一例が、米国のTPP離脱に見られるような通商政策です。保護主義的な通商政策を通じた米国への雇用還流や、法人税や所得税の減税など景気刺激策を打ち出しても、それが必ずしも格差是正につながるわけではありません。むしろ、国際的な分業やモノやサービスの自由な往来を妨げることで貿易の鈍化(スロー・トレード)が起こり、世界経済の勢いが鈍るばかりか、国家間、地域間の貿易紛争を招きかねません。

直近の国際通貨基金(IMF)の発表(4月18日)では、2017年の世界経済の成長率を3.5%と予想し、1月時点の3.4%から引き上げました。しかし、IMFはこの発表の際にも、保護主義的な政策が広範な景気回復を抑制する恐れがあると警告することを忘れませんでした。

今後、欧州で相次ぐ選挙でこうした内向きが一気に加速するかは不明ですが、EU各国が全体として相次ぐテロや移民問題で揺れているのは現実です。中国やロシアも、今後さらに強権主義を発動させて世界中が内向きになる可能性を含んでいます。大局的に考えて最も避けなければならないのは、環太平洋圏の通商関係のリーダーシップを中国に奪取されることです。外交や安全保障とも関連するこの戦略上のリスクを軽視してはいけません。

このような状況を見るにつけ、今こそ日本が国際社会の内向き志向に警鐘を鳴らし、開かれた自由主義の価値を発信する旗手としての役割を担わなければなりません。(S)

Weekly Voice by UPF

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