「リンちゃん殺害事件」が問いかけるもの

「健全な性意識」育む教育環境づくりを

現在、日本では、都会を中心に孤立した子育てが課題となってきており、地域社会によるサポートが、非常に重視されるようになってきました。同じ団地に住む人たちの中で子育てコミュニティをつくり、幼稚園の送迎を手伝ったり、短時間の預かりを引き受けるなどの取り組みも始まっています。

そうした中で、千葉県で起こったレェ・ティ・ニャット・リンちゃん殺害遺棄事件は、深刻な問いを投げかけました。容疑者として逮捕された人物が、朝の見守り活動などを積極的に行う保護者会の会長だったからです。もちろん、いまだ取り調べの段階であり予断は避けるべきですが、いずれにせよ、見守りや子育て支援を行う大人たちの中に、悪質な性犯罪者が紛れ込む可能性があることを、多くの人々が再認識することとなったのです。

「誰を信じたらいいのか、わからない」という近所の人々の言葉は、そのまま、幼い子供をもつ日本中の親たちの心情を代弁しています。

問題は地域社会だけに限りません。生徒にわいせつな行為を行って処罰される教師も後を絶たず、一部の大学では、サークルの合宿や飲み会などで女子学生に過度な飲酒をさせ、集団で強姦するという信じがたい事件も起こっています。しかも、そうした事件の犯人には、現役の医師や医学部の学生が含まれていたのです。

誰もが、こうした事件が起きた時には顔をしかめ、嫌悪感を表します。一部には、性犯罪者に対して欧米なみの厳罰を加え、生涯、GPSなどで行動を監視すべきだという強硬な意見もあがるほどです。ただし、それは事後的な処置にすぎません。医療の考え方と同じで、予防に勝る対策はないのですから、もっと「健全な性意識」をもった大人を育てることに関心を向けるべきではないでしょうか。

「純潔教育」というと、女子にのみ貞節が求められた古い時代を想起させるとして偏見を持つ人がいます。しかし、性の厳粛な価値や、それに伴う責任やリスクを理解させるとともに、異性に対し、敬意をもって適切な距離感を保つように教えることは、男女を問わず、非常に重要なことのはずです。

そうした教育を怠り、メディアをはじめ「性」を娯楽であるかのように扱う風潮を放置する一方で、性犯罪の撲滅を叫ぶのは、明らかに矛盾した行為です。安心して、子供たち、特に娘たちを育てられる社会をつくろうとすれば、健全な性教育の推進が欠かせません。

Weekly Voice by UPF

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