「AI時代」の到来が私たちに突きつけているもの

最近、「人工知能(AI)の進化が人間から仕事を奪うのではないか」といった話題を耳にするようになりました。AIの急激な進化の背景には、安価な並列処理機能の開発やAIの学習に必要なビッグデータが急激に増加したこと、問題を解決するためのアルゴリズム(計算方法)の改良などが上げられます。

昨年、Googleが開発したAI「Alpha Go」(アルファ碁)が日中韓の囲碁のトップ棋士相手に60戦60勝したニュースは衝撃を与えました。AIを搭載した自動運転車の普及や、医師がAIを扱うオペレーターのような役割を担いながらAIの判断を患者に伝えるような時代も想像できるまでになりました。

未来学者で実業家でもあるレイ・カーツワイル氏は、AIの知性が人類の知性の総和を超える時点を「シンギュラリティ(技術的特異点)」と呼び、それを2045年と予測しています。

このようにAIをはじめとするテクノロジーの進化には目覚ましいものがあり、将来の仕事について不安の声が上がることはもっともなことでしょう。一方で、こうした進歩によって人々の仕事や働き方が変わることは過去の産業革命などを振り返っても明らかで、決して今回が初めてではない、との意見もあります。単に人間の仕事を奪ってきたわけではなく、社会構造や人々の働きを変化させ、それに応じて人間側の役割分担を変えてきたのだ、という主張です。

しかし、AIの急激な進化がこれまでにない、私たちの想像を超える変化を社会や人間自身に及ぼす可能性について異議を唱える人は少ないでしょう。

今後、さまざまな労働環境でAIとコミュニケーションを取り、AI間の最適な組み合わせを考え、協働していくことが重要になってきますが、そうした人材を育成するために子供の教育や労働者の研修環境をどう整備するかは急を要する課題です。特に、少子化によって教育格差が深刻さを増す日本ではなおさらです。また、「人間は必ずしも働かなくていい時代がやってくる」という識者もいます。その場合、世帯所得をいかに保障するか、また働くことによって得られる精神的な生きがいを、哲学や芸術、スポーツに振り向けることが可能なのか、といった問題を考えなくてはならないでしょう。

将来、AIを搭載した自動車による自動運転システムが当たり前になった場合、人間による運転すら道路交通法違反になる可能性もあり、、遺伝子工学などバイオ研究の進化と連動して、人間とコンピュータが物理的に接続する可能性があることがメディアで発表されているとなると笑い話ではすみません。社会倫理をAIにいかに教育するかという問題です。

このようにAIの進化は、現在の人々の価値観を変え、人と人の関係性の価値にも変化が起こすのではないかと考えられています。それは例えば、GDPのような国家の経済価値を計る指標に、家事や子育てといった社会的労働が考慮されるようになることも意味しています。

AI時代の本格的到来は、人間性の本質や価値観といった問題を私たちに突きつけているのであり、それはもうすぐそこまで来ています。

(S)

Weekly Voice by UPF

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