米国は北朝鮮を先制攻撃するか

このほど韓国を訪れたティラーソン米国務長官は「戦略的忍耐は終わった」として、北朝鮮の核開発に対して軍事的対応を辞さない考えを示しました。北朝鮮の核開発に時間的猶予を与える考えが米国にないことを歓迎する一方、朝鮮半島有事の際には韓国側も無傷ではいられなくなるため、韓国人は複雑な感情を抱いています。

果たして、米国の先制攻撃はありえるのでしょうか? 筆者はその可能性を極めて低いと見ています。 例えば、トランプ大統領最側近のバノン氏は、ホワイトハウスのスタッフにデビッド・ハルバースタムの著書「ベスト・アンド・ブライテスト」を読ませたという話があります。ベトナム戦争を拡大させたのは、ケネディ政権で集められ、ジョンソン政権に引き継がれたエスタブリッシュメントだったという内容ですが、バノン氏は米メディアに「指導者の小さなミスが、後で取り返しのつかない大きなミスにつながることが分かった」と同書について語っています。それほど慎重な彼が、簡単に北朝鮮に対する先制攻撃に踏み切るとは思えません。

南カリフォルニア大学教授のデビット・カン氏もティラーソン氏に発言に懐疑的な立場です。カン氏はCNN系列のグローバルブリーフィングの取材に対し「(戦略的忍耐が終わったことを)この目で見たときに初めてそれを信じよう」としています。カン氏は軍事的対応は「アメリカの国民感情が許さない」とし、「犠牲が大きすぎるから」とその説明しています。

また、「Foreign Policy」という外交関連の雑誌に、米国と中国は「ワンコリア」について話し合うべきだという記事が掲載されたことを伝えておかなければなりません。米シンクタンク、「カーネギーエンドウメント・フォー・インターナショナル・ピース」で中国の安全保障を専門とするマイケル・スウェイン・シニアフェローは、中国が朝鮮半島の安全保障を担保する代わりに、在韓米軍が撤退する内容の提案を行っています。在韓米軍の撤退は韓国の保守派の反発が強そうですから、今すぐに実現する可能性はありませんが、このような議論が出てきていること自体が注目すべきことだと思います。

当面は、イランに対して行ったような制裁を継続するしか道はなさそうです。 共和党のジョージ・W・ブッシュ前大統領の補佐官を務めた朝鮮半島専門家で、ジョージタウン大学のビクター・チャ教授の言葉を引用します。「Sanctions are tool of diplomacy. They do not work…until they do.(制裁は外交の道具だ。それは、効果が現れるまで効果は現れない」 。

韓国では米国の先制攻撃は十分に議論されていません。むしろ核兵器による自主防衛論の方が広まっている感じがあります。

次期大統領選挙では左翼政権の誕生が有力視されていますが、その場合、開城工業団地の操業を再開して北との対話を始める可能性が高いと思われます。韓国の大統領としては、米中で朝鮮半島の方向性を頭越しに決定されることに対する抵抗があり、何らかの形でイニシアチブを取りたいという思いが強いからです。(H=ソウル在住)

Weekly Voice by UPF

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