UPF-Japan PR

記事一覧(55)

待ったなしの少子化対策 国民全体で問題意識を

「2兆円政策パッケージ」を閣議決定政府は「人づくり革命」の実現に向けた2兆円規模の「経済政策パッケージ」を本日8日、閣議決定しました。「新しい経済政策パッケージ」と題された案では、①幼児教育の無償化②高等教育の無償化③保育・介護人材の処遇改善――などを主要項目に掲げました。中でも、幼児教育や保育の費用については約8千億円を充て、認可保育所に通う3〜5歳児は全て無償とする方針です(認可外保育所や延長保育などをどこまで支援するかは、来夏まで結論を先送り)。また、賃上げを通じて介護人材と保育士の待遇を改善するほか、2020年度末までに待機児童解消に向けた32万人分の保育の受け皿整備も行う予定です。安倍首相は先の衆院選で、少子化を北朝鮮問題と並ぶ「国難」と位置付け、消費増税による財源の使途を見直して対策に充てることを旗印に掲げました。それまでの自民、公明、旧民主の3党合意に基づく社会保障・税一体改革が、団塊世代が高齢化することへの対応を念頭に置いたものだったことから考えると、大きく形を変えたものといえます。財源の使途変更を伴う安倍氏の方針発表に、当初は自民党内部や厚労省からも戸惑いの声が上がりました。しかし、深刻な少子化を克服していくために、子育て世代が抱える不安を解消するという方向性は間違っていません。高齢者向けの社会保障経費を合理化して現役・子育て世代に振り向けることは、一方の財政再建の視点からも当然の結論でしょう。いうまでもなく、低出生率の原因は未婚率の上昇と結婚後に持つ子供の数が少ないことにあります。待ったなしの少子化問題。これを経済や雇用環境の厳しさにのみ責任転嫁する時は過ぎました。特に地方における少子化とそれに伴う人口減少は、地域社会の活力低下といったレベルを超え、もはや生き残るか消滅するかの存立基盤に関わる問題となっています。とはいえ、その対策を地方に任せきりにすることはできません。ある地域の人口が他の地域に移動して出生率が上昇しても、移動元の地域の人口が減少し出生率が下がるなら、それは単なる「ゼロサム・ゲーム」に過ぎないからです。財政の総合的・効率的な支出の観点からも、その第一の責任は政府(国)にあるのです。結婚や出産を政策として押し付けることはできませんし、そのような「暗黙のプレッシャー」が若者世代、とくに女性に過度の負担を強いたり差別につながってはいけません。しかし同時に、少子化対策が家庭と社会の基盤を維持、強化し、さらに持続させるための最優先の政策課題であり、婚姻制度や家族機能まで包含した家族制度の中心であるという点は、立場の違いを越えて国民全体で共有しなければなりません。(S)

自傷行為急増の背景にSNS?

米国で10~14歳女子の自傷行為が3倍に「米国医師会雑誌(JAMA)」で発表された研究によると、米国の10~14歳の少女の自傷行為が2009年以降、急増しています。2009年の10万人当たり109.8人から2015年は317.7人と約3倍に、年率では18.8%の増加となります。この数字は15~19歳の増加率7.2%や20~24歳の2%と比較しても突出しています。一方、男子についてはそれほど目立った変化はありません。「自己愛過剰社会」などの著書で知られるジーン・M・トゥエンギ博士(サンディエゴ州立大学心理学教授)は、スマホとSNSの普及が原因ではないかと指摘しました。特に男子と比べて女子の伸びが突出した理由について、女子のほうが「外見」や「社会的評価」に敏感なことを挙げています。SNSは、まさにこれらの「展示場」であり、まだ自己が確立していない年少の女子たちは「いいね」やフォロワーの数に一喜一憂してしまうのです。現代の子供たちは男女問わずスマホに向き合う時間が増えていますが、男の子はゲームに興じ、女の子はSNSにより多くの時間を費やすことがわかっています。そしてメンタルの状態に、より深刻な影響を与えるのは後者です。SNSについては遠距離の親族、友人との交流など便利さもある一方で、いじめのツールやフェイクニュースの温床になるなど負の側面も目立つようになりました。座間市の悲惨な事件でもTwitterが容疑者と被害者の接点になっています。もし本当に10代前半女子の自傷行為の急増がSNSと関連しているなら、お酒や車の運転に年齢制限があるように、SNSの年齢制限も真剣に検討されるべきかもしれません。いずれにせよ、思春期の繊細な感受性を、めまぐるしく変わるSNS上の評価に晒すことは大変なリスクをはらんでいます。彼女たちの自我の安定、成長にとって必要なのは、移ろいやすいSNS上の関係ではなく、家族など、自らを変わらず愛し勇気づけてくれる身近な人々との関係です。子供たちがスマホやSNSに引き付けられたとしても、それ以上に、身近な人たちとの関係が深ければ、それほど大きな問題になることはないでしょう。こうした問題と向き合うことを通して、改めて子供の成長に対する大人たちの責任を見つめ直す必要があります。(O)

トランプ大統領の「マッドマン・セオリー」は有効か

今の北朝鮮は60年代の中国と状況が酷似今の北朝鮮は、60年代の中国と状況が似ています。核実験を断行したり、文化大革命が起こったりするなど、当時の中国は「政治的、軍事的にも危険な国」と認識されていました。おまけに、指導者の毛沢東国家主席は高齢ということもあり、判断力の衰えに対する指摘もあったといいます。当然、米国では中国が核保有国になることを恐れて、「今こそ攻撃すべき」との見方が強まりました。しかし、1969年に発足したニクソン政権はむしろ中国に接近。72年に米大統領として初めて訪中したことはご存知でしょう。それでは、ニクソン訪中の目的はなんだったのでしょうか。理由は2つです。1つはソ連と中国の間にくさびを打ち込むという政治的な理由。もう1つは、巨大市場に進出するという経済的な理由です。10億人がコカ・コーラを飲む姿を想像してみてください。ところでトランプ氏が、「常軌を逸していて、予測不可能」と相手に思わせる「マッドマン・セオリー(狂気理論)」と呼ばれる外交戦術を発案したニクソン元大統領の信奉者でもあることはよく知られている事実です。仮にトランプ氏が関係正常化に向けて北朝鮮と交渉すれば、中国との間にくさびを打つことになるでしょう。何より北朝鮮自身も、中国への依存度を軽減したいと考えて、米国との直接交渉を望んでいます。米国企業にとって、北朝鮮市場は中国のような魅力には欠けるでしょうが、トランプ氏はひょっとしたら平壌に高層ビル「トランプタワー」を建てることに関心があるかもしれません。またトランプ氏はオバマ前大統領のレガシィ(遺産)を否定しようと躍起になっています。対北朝鮮政策に関して、オバマ氏のレガシィと呼べるものは何もないので、オバマ氏との違いをアピールしたいトランプ氏にとっても魅力でしょう。さらには、当時の中国は今の北朝鮮以上にトップ層がイデオロギーに凝り固まっており、実用的な思考に欠けているという認識でした。ところで、米朝が関係正常化で一致する場合のことを考えてみましょう。北朝鮮は核開発による部分的な抑止力で妥協する見返りとして、米国は北朝鮮の体制転換を諦めることになる可能性が高そうです。米朝交渉は日本と韓国にとって望ましいディールではなさそうですが、可能性が捨てきれません。(H=ソウル在住)

「働き方改革」に求められる「働く=生きる」の視点

「労働時間の短縮」から次の段階へ産経新聞などによると、自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長が、同日行われた衆院本会議の代表質問で野党側からの質問通告が本会議直前だったと明かし、質問通告を受けて安倍晋三首相の答弁内容を作成する政府職員の負担が大きくなっていることに言及しました。「働き方改革を進めている中で考えるべきことがあるのでは」という声が党役員会でもあがったといいます。プレミアムフライデーや残業代ゼロ法案など、「働き方改革」という言葉に注目が集まっています。働き方改革とは本来、安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」の実現に向けた取り組み全体を差すもので、人々のライフサイクルを構築し直し、女性や高齢者などの労働機会を増やすことで、出生率および生産性の向上を達成しようというのが、働き方改革の本来の趣旨です。しかし現在、各企業で進む働き方改革の取り組みを見てみると、「労働時間の短縮」に焦点が当てられていることがほとんどといえるでしょう。昨年、電通の新入社員が過労自殺したことや、今年10月にもNHKの記者が過労死したことも明らかになり、そうした流れに拍車がかかりました。もちろん、従業員の健康を守ることは雇用する企業側の管理責任であり義務です。従業員個人が健康であることが意欲、能力の向上ひいては生産性の向上につながることはいうまでもありません。しかし、「業務の効率化」「労働時間の短縮」をうたうだけでなく、業務やビジネスそのものを見直さなければ根本的な改革にはなりません。現在、日本人の働きがいや生産性はG7の中で最下位です。労働時間が短縮され、空いた時間を持て余して街をふらつく「フラリーマン」など、働き方の意識と働き方改革にズレが生じている事象も現れてきました。「労働時間を短縮する」ことを短期的な視点だとすれば、中長期的な視点もクローズアップされなければならないでしょう。すなわち中長期的には、多くの世代にとってこの「働き方」が「生き方」につながるものとなり、「働きがい」が「生きがい」であるといえるような改革の視点です。一億総活躍社会のもう一つの目玉政策として掲げられている「人づくり革命」。その具体策を検討する「人生100年時代構想会議」の有識者議員に起用されたリンダ・グラットン英ロンドン・ビジネススクール教授は、これからの働き方について大事なのが「レジリエンス」(精神的な回復力)だと説きます。国際的にもビジネスにおいても変化の激しい環境の中で、「心身ともに活力にあふれ、苦しい状況でもそれを挽回する能力」が必要だと教授は主張しています。自分の能力を高め、逆境から挽回する精神力をもって、組織の内外を問わず異なるバックグラウンドの人たちと協力しながらイノベーションを起こす――。こうした「知的なレジリエンス」「心のレジリエンス」「人とのつながりに関するレジリエンス」を高めることが、働き方改革を成功させるヒントかもしれません。そのためには、企業も社会も大きく意識を変えなければなりません。グローバル化とテクノロジーが発達した現代、消極的な社会に戻ることはもうできません。前述の、小泉氏が提起した「衆院本会議の質問通告」問題で、このニュースを伝えるネットメディアには、読者から「もう(質疑と答弁は)グループウェアでいいんじゃない?」といったコメントも書き込まれました。それはちょっと行き過ぎだとしても、今後、社会のいたるところで「自己本位ではなく利他的であること」「クローズドではなくオープンであること」「決まりに縛られず柔軟であること」といった視点がますます求められてくると感じます。(S)

改革求められる韓国の「スパイ組織」

分断国家、左右対決のはざまで揺れる国家情報院朴槿恵(パク・クネ)前政権時代に、韓国の情報機関である国家情報院(国情院)のトップを務めた李丙琪(イ・ビョンギ)元駐日大使と李氏の前任者、南在俊(ナム・ジェジュン)氏がソウル地検に逮捕されました。国情院が「特殊活動費」の一部を朴政権に上納したというのが逮捕の理由です。国情院による大統領府への特殊活動費の上納は、3日に逮捕された李載晩(イ・ジェマン)元大統領府総務秘書官の証言で明らかになりました。金額は総額で約40億ウォン(約4億円)相当といいます。特殊活動費というのはいわゆる「領収書のいらないカネ」のことで、国情院は年間5000億ウォンもの資金を自由に使えるといわれています。もちろん、使い道を国民に報告する義務はありませんし、組織上、国会の監視も及びません。朴氏がその特殊活動費を私的に使用していたことがわかれば、収賄や国庫損失罪に問われる可能性も出てきました。さてその国情院ですが、韓国でもベールに包まれた謎の組織となっています。不正の温床になっているとして、歴代の革新系大統領は国情院改革を選挙公約に掲げてきました。実際、国情院に対する疑惑としては、上記の裏金疑惑のほか以下のようなものがあります。 ①2012年の韓国大統領選の際、国情院が大規模な「コメント部隊」を組織し、文在寅(ムン・ジェイン)候補(当時)を批判した。検察は最低50億ウォンの国費を使ったとみている(当時の責任者、呉世勲<オ・セフン>前国情院トップは逮捕) ②李明博(イ・ミョンバク)政権時代に政権に批判的な人物のイメージ低下を図るために、ヌード写真を合成し、ネットで流布した ③李政権時代に政権を批判した番組を排除しようとテレビ局に対する検閲を強化した ④11年のソウル市長選に立候補した朴元淳氏(パク・ウォンスン=現ソウル市長)の当選を防ぐため、「北朝鮮のシンパ」というレッテルを貼るための工作を行った ⑤李政権が金大中(キム・デジュン)前大統領のノーベル平和賞受賞を剥奪するための市民運動をサポートした(国情院の前身の韓国中央情報部=KCIAが1973年に政権に批判的な金氏を東京で拉致(いわゆる金大中事件)。金氏が大統領就任後に国情院を縮小するなど、両者は緊張関係にあった)国情院の前進となるKCIAは1961年の創設。当時の朴正熙大統領の直属部隊として「ソ連KGBのような秘密警察のような性格が強かった」(韓国の専門家)といいます。現在の国情院は、大統領に毎朝インテリジェンスをブリーフィングする米CIAのような組織を目標にしています。専門家によると、情報員は「韓国の007」としてのプライドが高いそうですが、実態は上記の疑惑の内容からしても実態はかなりスケールが小さく、日本で言えば国家2種(省庁の地方出先機関などの幹部候補)の公務員の域を出ないそうです。いずれにせよ、国情院を巡る問題は分断国家で左右対決の激しい韓国ならではの現象でしょう。(H=ソウル在住)

「自由で開かれたインド太平洋戦略」で中国の膨張食い止めよ

トランプ氏来日で結束アピール 日本が提唱の外交戦略、米側が踏襲を表明21の国・地域でつくるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議がきょう10日、ベトナムのダナンで開幕しました。安倍晋三首相は9日に現地入りし、各国首脳と個別会談を通じ北朝鮮の包囲網づくりで積極外交を展開しています。安倍氏はAPECとそれに続くフィリピンでの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議の期間中に、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、李克強首相と個別に会談する方向です。両会議には、日韓中を歴訪したトランプ米大統領も出席。安倍氏は6日の日米首脳会談で北朝鮮に最大限の圧力を加える方針で一致したことを踏まえ、トランプ氏と連携して、参加国の首脳に圧力強化の必要性を訴えたい考えです。トランプ氏が今回のアジア歴訪で、日本を最初の訪問国に選び、両国の結束を内外に示したことは、アジア太平洋地域の安定と発展にとって大きな意義があったといえるでしょう。特に、日米の結束アピールは対北のみならず、ある意味、それ以上に中国に対する強いけん制になりました。日米両首脳は今回、両国共通の外交指針として「自由で開かれたインド太平洋戦略」を確認しました。同戦略は、アジアからアフリカにかけての地域を「自由と法の支配、市場経済を重んじる場」と位置づけ、この地域の連携を強化して域内の安定と繁栄につなげる考え方で、昨年8月にケニアで開かれたアフリカ開発会議(TICAD VI)で安倍氏が発表したものです。これまでトランプ政権の内向き志向が懸念されていたことを考えると、米国がこの段階で日本の外交戦略を踏襲したことは、安倍政権の大きな成果といってよいでしょう。メディアや専門家の中には、インド太平洋戦略を推し進めることで「中国を刺激し、関係改善に支障になる」との懸念もあります。しかし、現在の中国はここ10年の間にはるかに強力で、自信に満ちています。もはや日本には、中国への「遠慮」から、本来追求すべき国益の確保に消極的でいられる余裕はないのです。それは中国の政治的膨張と海洋権益拡大の動きをますます加速化させることになるでしょう。共産党大会を終えたばかりの習主席の権力が劇的に拡大している様子は明らかです。習氏は今世紀半ばまでに、高まる経済力や軍事力、ソフトパワーを背景に、一貫した戦略的台頭を推進しようとしています。中国共産党は10月24日に閉幕した党大会で、党規約に「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」を盛り込むことを決め、外交面については「中国の特色ある大国外交により新型の国際関係を構築」を柱の1つに掲げました。日本がこうした中国に対してとるべき道は、「戦略的互恵関係」の枠組みで日本が積極的に中国経済に関与しながら、中国を欧米ルールに従う市場経済圏として参加させることを狙う一方、日米印豪を中心にとした価値観を共有する国と地域が、持続可能な政治経済基盤を構築していくことで中国に向き合う交渉力を高め、最終的には中国に略奪的な膨張戦略を放棄させることです。そのためには、この「自由で開かれたインド太平洋戦略」を掛け声だけで終わらせず、日米のより具体的で実効性のある協力関係を強めながら、韓国も含めた日米韓の同盟関係を盤石にすることが欠かせません。(S)

ルター本来の意図は実現したのか

宗教改革500年を迎えて今年10月31日をもってルターの宗教改革から500周年を迎えました。米国の神学者ピーター・ライトハートは、宗教改革が果たした様々な功績を認めつつも、「宗教改革は失敗した」と題するコラムを書いています。その真意は何でしょうか?そもそもルターをはじめとするプロテスタントは新しい教派を創ろうとしたのではなく、当時のカトリック教会全体、ひいてはヨーロッパ全体の「再福音化」を願っていました。しかし、結果として教会は分断され、カトリック教会から分かれたプロテスタント自体も、いくつもの教派に分裂したままです。さらにライトハートは、現在のキリスト教徒たちが、この分断された状態をノーマルだと感じるようにすらなっていると指摘しました。彼は、この状態を「最悪」と表現します。なぜなら、本来、ルターが回復しようとした「福音」の核心は、イエス・キリストが神と人、さらには人と人をも相互に和解させ、新しい普遍的な共同体をつくるところにあったからです。「あらゆる人種、言語、国籍から引き出された人々が集う教会こそが、福音の生きたしるし」だとライトハートは主張します。彼は「プロテスタントが互いに分断され、カトリックや正教その他と分離している限り、福音の完全性が現れることはない」と述べ「統一こそが福音の命令であり要求だ」と結論付けました。ルターは福音を回復しようとしましたが、それによって築いた「分断」が、逆に福音を損なってしまう結果をもたらしてしまいました。これを指してライトハートは「宗教改革は失敗した」と表現するのです。もちろん、マックス・ウェーバーやリンゼイ卿などが指摘したように、宗教改革は、経済面では資本主義、政治面では民主主義の発展に大きく貢献しました。宗教改革の延長線上に生まれた米国が、ファシズムや共産主義の脅威から世界を救ったことも特筆されるべきです。しかし、現代においては、ライトハートが警告するように、キリスト教が分断していることの弊害のほうが、より大きくなっていると言えるでしょう。宗教改革の故郷であるヨーロッパをはじめとして、世界はまさに分断の危機に瀕しています。民族や国家のエゴがぶつかりあい混迷を深める世界を平和に導くためには、「人類の良心」ともいうべき宗教者がモデルを示す必要があります。あらゆる宗教は、エゴを克服し、互いに愛し合うことを教えています。宗教が本来の目的、使命に立ち返るとき、超宗教的な対話と協力による平和の実現こそが、それぞれの宗教、教派の行くべき道であることがわかるでしょう。現代の社会を見れば、宗教者たちが手を結び合い、一つになって声を挙げるべき時代であることは明白です。世俗化したヨーロッパを先頭に、物質的な享楽主義や行き過ぎた個人主義の蔓延によって、性道徳が破壊され、結婚、家庭の価値が危機に瀕しています。全米で同性婚が合法化される際、カトリック、プロテスタントの聖職者が結束して反対したように、あらゆる宗教が道徳性の回復と家庭の再建に向かって共通の努力を始めるべき時でしょう。宗教改革500年。キリスト教は、ルターが意図した「真の救い」の実現に向けてさらなる一歩を進めることができるでしょうか。世界人口の1/3を占めるキリスト教は、家庭問題、環境問題、難民問題など、人類が直面する様々な課題の解決に向けて主導的な役割を果たす潜在的可能性を持っています。その動向は、日本を含む人類全体の未来とも決して無縁ではありません。(O)

サムスンで世代交代が加速 快進撃の功労者、副会長が退任発表

過去最高益でも緩めぬ「非常事態」経営韓国・サムスン電子で世代交代が加速しています。グループを事実上率いる李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が長期の不在の中、経営をリードしてきた権五鉉(クォン・オヒョン)副会長が先月中旬、電撃的な退任発表をしました。2017年7〜9月期の業績が四半期ベースで過去最高を更新したと発表した直後だけに、韓国メディアでも驚きを持って受け止められました。権副会長は、半導体とディスプレーといったいわゆる部品部門のトップ。今のサムスン電子の収益のほとんどを半導体事業が稼いでいることを考えると、サムスン快進撃の最大の功労者の一人と言えます。聞けば、社内の広報担当者も報道資料発表直前まで、権氏の退任を知らされていなかったようです。しかし、サムスン電子は李健煕(イ・ゴンヒ)会長が経営の陣頭に立っていた時から、業績が好調な時にこそ社員に危機意識を受け付けることで組織を引き締めてきました。同社では、李会長の経営哲学をまとめた「知行33訓 知って、行動して、人を使って、教えて、評価せよ」という冊子が全役員に配布されます。初版は1997年。第2版は2010年です。李会長は、1訓目に経営者の心得として「危機意識」を強調しています。役員には絶えず、「今どこにいて、どこに行くのか、きちんと進んでいるか?」と問うているわけです。2訓目が「未来洞察」です。5年後、10年後を見据えなければならないという内容です。権副会長は退任発表の報道資料で、過去最大の業績を挙げたことについて「過去の投資によるものにすぎない。未来の成長産業は育成できなかった」と敗戦の将のような弁を述べています。李副会長は、拘置所の中から人事を通じてグループ内の引き締めを図りました。父親にならい、好業績のときこそ好機と思ったに違いありません。「サムスン電子で働くのと、人間として幸せな人生を送るのはまったく違う問題」という言葉をよく聞きます。しかし、すくなくとも、このような「非常事態経営」を維持している限りは、サムスン電子の成長は続きそうです。(H=ソウル在住)

忍び寄る同性婚合法化(後編)

希望の党も推す「LGBT差別禁止法」の危険性前回、日本学術会議の提言「性的マイノリティの権利保障をめざして」において事実上の同性婚合法化が主張されていることを批判しました。実はこの提言には、それ以外にも幾つかの問題点が含まれています。この後編では、「LGBT差別禁止法」および「『多様な性』の教育」「身体に関する自己決定権」の問題点について触れていきたいと思います。「LGBT差別禁止法」と思想、信教、言論の自由提言では「性的指向・性自認・身体的性」に基づく差別を禁止する「性的マイノリティ差別禁止法」の制定が主張されています。同様の法案は、すでに民進党、社民党、共産党などによって国会にも提出されており、今回の選挙でも、希望の党が「LGBT差別禁止法」制定を公約に掲げています。もちろん、差別は許されませんが、同法の制定は、深刻な「思想、信教の自由」の侵害をもたらし、言論弾圧に至る危険性をも孕んでいます。例えば、民進党など野党四党が2016年5月、衆院に提出した「LGBT差別解消法」を見ると、LGBTが「日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような」「事物、制度、慣行、観念その他一切」を解消すべきだとされています。ここには「観念」という言葉も含まれているため、「男らしさ・女らしさ」など、男女の性別を強調するような考え方までも、性的マイノリティの「生きづらさ」につながるとして主張できなくなる可能性があります。教義や慣行に基づいて、神社や教会などが結婚式を男女間のみに限定した場合も「差別」として罰せられるかもしれません。実は、これは決して杞憂ではありません。すでに欧米などでは「同性愛」について批判的な見解を述べただけで職を追われたり、裁判で訴えられる事例が相次いでいます。宗教的な信条の故に「同性婚」へのサービスをことわった写真家や花屋に罰金が命じられたケースもありました。他者の権利を侵害するような過度の人権の主張は認められるべきではありません。そうした意味で、殊更にLGBT当事者側の主張だけが一方的に認められるような法律は制定すべきではないでしょう。また、日本には「男女雇用機会均等法」におけるセクハラ禁止規定や、刑法の「侮辱罪」「名誉棄損罪」など、個人の尊厳を守る法律が数多く存在しており、LGBTに対する差別に対しても十分対処が可能です。「性の多様性」を小学校低学年から教育?教育に関する提言では、「『性の多様性』に関する教育を小学校低学年から盛り込み、異性愛中心主義を押し付けないように教育内容や教科書の改訂に取り組むこと」と明記されています。まず、この「性の多様性」という言葉自体が非常にイデオロギー的で大きな問題をはらんでいます。私たちの社会は「男性」「女性」の区別を基本として構築されています。実際に遺伝子、身体的特徴、脳の機能など、男女には明確な違いがあり、その違いを尊重し補い合うことで家庭や社会を形成していきます。従って、教育においては、むしろ男性と女性の違いをしっかり理解させ、それぞれの性にふさわしい発達を促すとともに、お互いの調和、協力を可能にするため、異性愛規範や守るべき性秩序について教育すべきなのです。しかし、この提言では、生物学的にも明らかな「男女」という区分を否定する思想を採用しています。まず、身体的な性についても「人の身体的性は、典型的な男女身体を両極に様々なグラデーションをなすのであり、連続的にとらえる必要がある」と書き、男女の区別を事実上なくしています。こうした教育を小学校低学年から行うことは、性意識の混乱をもたらすばかりでなく、男性、女性としての健全な発達や、異性関係の構築にも悪影響を与えることになるでしょう。リスクの伴う「性別移行」には慎重であるべきさらに、同提言では教育上の課題として「性的マイノリティ当事者の自尊感情を育む」ために様々な教育的配慮を要求しています。子供たちの「自尊感情」を育むことは重要ですが、一方で、本人の「性自認」「性的指向」を、ありのまま全面的に肯定することはリスクを伴います。特に思春期前の「性別違和」については、「75〜90%が成人するまでに解消する」と言われており、慎重な対応が必要です。例えば、低年齢の子供が訴える「性別違和」をそのまま肯定し、本人が望むまま、「思春期抑制剤」を処方して身体の自然な変化を遅らせたり、ホルモン治療を始めてしまうと、本来であれば解消するはずの「性別違和」が、ほぼ100%固定してしまうとされています。つまり、何もしなければ、成人までに「心と体の性が一致」したはずの子供たちまでもが、早すぎる性自認の肯定によって、生涯「性別違和」の苦しみを抱えて生きることになるのです。これを全米小児科医学会のミシェル・クレテラ会長は「一種の児童虐待だ」と批判しました。さらに、提言では「身体に関する自己決定権」が主張されていますが、十代の子供たちは「リスクに関する認識が弱い」傾向があることが知られており、性別移行にむけたホルモン治療や性別適合手術の是非を決定するには早すぎるという指摘があります。米保険福祉省の医療専門家チームも、これらの治療は「リスクが高いうえに利益が不明確だ」と主張しています。「性別違和」を抱える人への同情心から「性別移行」への要件緩和を主張する人々がいますが、むしろ本人が予期せぬリスクを背負わぬためにも「性別移行」については、単なる「自己決定」ではなく、より慎重な対応が望まれるのです。異論を認めない風潮は不健全このほかにも「自分の『体の性』とは異なる性別のトイレを使用することを認める」「女子大へのトランスジェンダーの入学を認める」「ホルモン療法や性別適合手術への保険適用を認める」など、欧米ですら、いまだに激しい議論を呼んでいる問題を、反対意見にほとんど触れることなく、あたかも当然の施策であるかのように提言しています。現在、性的マイノリティの問題に関しては、メディアなどで権利擁護派の意見ばかりが大きく取り上げられる中、客観的な議論を行うことが難しくなっています。同性婚に反対したり、小中学生への「性の多様化」教育に警鐘を鳴らしたりする人々も、決して性的マイノリティを差別しているわけではないのですが、「差別主義者」「わからずや」「時代遅れ」などのレッテルを貼られかねない状況です。このままでは欧米と同じく、性的マイノリティの権利問題に関して、慎重な意見を述べること自体が難しくなるでしょう。それは、「思想的なエコーチェンバー(残響室)」(※)をつくることであり、健全な議論を妨げ、結果的には社会全体の利益を損なうことになります。LGBT権利擁護派の意見のみを採用した今回の日本学術会議の提言は、そうした観点からも大きな問題を孕んでいます。権威ある機関には、それだけ公平性、中立性が要求されることを忘れるべきではないでしょう。(O)※特定の立場の意見や思想だけが影響力を持ち、異論を主張しにくい状況が生まれること。

韓国でも「フェイクニュース」にご用心

社会揺るがす危険なうわさやスキャンダルを流す「チラシ」韓国に「チラシ」(찌라시)と呼ばれる情報誌があります。一枚刷りの広告媒体を示す日本語が語源ですが、韓国の「チラシ」は信ぴょう性の低い薄い情報やスキャンダルを流す媒体を指します。新聞に載らない裏情報が多く、企業や個人の名誉毀損の問題のほか、政治工作や株価操作の手段などにも使われます。少し前の話ですが、闘病中のサムスングループの李健熙(イ・ゴンヒ)会長の死亡説が証券街を駆けめぐるなど、株価にも影響を与える内容もあるため、企業側は対応に頭を悩ませています。チラシは、政界や国家機関、企業、マスコミなどの内部の人間が定期的に集まって情報交換を行い、専門業者が印刷物にして個人や企業に「カカオトーク」などのSNSを通じてPDFファイルなどで配布します。筆者もチラシを手にしたことがあります。経済や政治・社会、金融などの項目に分かれており、100ページを超える日もありました。虚偽の内容のチラシを制作・配布したり、裏を取らずにチラシの内容を記事にしたりすると、情報通信網法の名誉毀損罪が適応されます。警察に出頭を命じられる記者は後を絶たないと聞きます。場合によっては、7年以下の懲役、10年以下の資格停止または5000万ウォン以下の罰金が科されます。◇企業の「情報マン」とは朴槿恵(パク・クネ)前大統領元側近の人事介入疑惑の発端となった青瓦台(大統領府)の内部文書を、ハンファS&Cの対官業務(官公庁関連の業務)担当の社員がソウル警察庁から持ち出していたことが明らかになり、企業内で情報や対官業務を担当するいわゆる“情報マン”に注目が集まったことがありました。対官業務は公務員らと会って必要な情報を交換し、政府との窓口の役割をするため、大きな意味では情報関連の業務に含まれます。事業に関連した立法情報など国会や官公庁の情報のほか、ライバル社の動向、オーナーに関するうわさなども収集し、報告するのが任務です。SKテレコムやKTなどの大手通信社では、通信規制に関する業務を行う政府の放送通信委員会などを担当するチームだけで50人超を抱えていると言われます。情報マンにはコミュニケーション能力や信用、幅広い人脈が求められ、情報収集のための飲み会参加も多いため、体力も必須とされます。大企業の関係者は韓国メディアの取材で「情報を扱う仕事は簡単ではない。10年以上情報業務を続けている人は、該当業界では、ある程度実力を認められているとみてもいい」と話しています。今回は韓国の情報社会について書いてみました。ネットにも韓国に関するさまざまな情報が溢れていますが、私たちも情報リテラシーを高める努力を決して怠ってはなりません。(H=ソウル在住)

忍び寄る「同性婚合法化」(前編)

客観性・中立性を欠く「日本学術会議」の提言9月29日、日本学術会議が「性的マイノリティの権利保障をめざして」という提言書を発表しました。この中では、「婚姻の性中立化」という耳慣れない言葉で、事実上の「同性婚合法化」が提言されています。そのほか、「性の多様化」に関する教育の推進や、女子大へのトランスジェンダーの入学を推奨するような提言もなされています。非常に過激な内容だと言わざるを得ませんが、こうした極端に偏った提言が日本学術会議という権威ある機関によってなされたことは憂慮すべき事態です。同会議は「内閣総理大臣の所轄の下で…(中略)…『特別』の機関として設立され」「我が国の…(中略)…約84万人の科学者を内外に代表する機関」(同会議HPより)として位置づけられています。従って、今回の提言は、事実上、わが国の学界が公式に「同性婚合法化」を政府に要求したようなものなのです。あわせて今回の総選挙では、「希望の党」が公約の中にダイバーシティ社会の実現を掲げ、LGBT擁護の政策を打ち出しています。もともとこの問題に対して積極的な民進党、社民党、共産党などとあわせて、非常に警戒すべき動きだと言えるでしょう。同提言に対しては、いずれ十分な批判、検討が加えられるべきですが、まず、代表的な論点について、いくつか触れておきましょう。◇性的マイノリティが人口の7.6%と強調提言では「電通ダイバーシティ・ラボ」の調査が何度も引用されており、性的マイノリティの数の多さが迅速な対応の根拠の一つとして強調されています。しかし、この電通調査の7.6%という数字については注意が必要です。このうち「男女どちらとも決めたくない」などといった曖昧な返答を除くと、レスビアンやゲイといった厳密な同性愛者は1.4%にすぎず、心と体の性が一致しないトランスジェンダーも0.7%と非常に少ない数字になります。英米の公的機関による調査でも、同性愛者の比率は人口の1-2%台にとどまっています。また、2013年に文科省が行った調査では「性別違和」を感じる小中高生の数は606人で、全小中高生の0.0045%に過ぎませんでした。さらに民間団体が全国の児童養護施設を対象に行った調査でも、性別違和や同性愛の傾向を持つ子供の割合は、非常に曖昧なケースを含めても1%未満となっています。LGBTの実態が正確に把握されていない中で、電通調査の数字が独り歩きすることは過剰な政策対応を招くリスクがあります。事実、三重県伊賀市においては「7.6%を伊賀市にあてはめると、5000〜7000名の性的少数者が存在することになる」として、わずか1カ月程度の検討ののち「同性パートナーシップ宣誓書」の導入を決定しました。しかし、1年余りを経た時点でも、申請したのはわずか4組に過ぎませんでした。今回の提言には、法律の制定やガイドラインの策定に加え、各種行政文書の書式変更や公的調査の実施など、予算措置を伴う内容も数多く含まれています。政策の優先順位を適切に判断するためにも、「性的少数者」が人口の13人に1人という、なかば誇張されたデータを使用することは控えるべきです。◇「婚姻の性中立化」を提言提言では「婚姻の性中立化は必須であり、そのための民法改正」を求めるとしています。これは事実上の「同性婚合法化」の提言です。その理由として、「個人の利益を否定するに足りる強力な国家的ないし社会的利益が存在しない限り、個人の婚姻の自由を制約することは許されない」と述べています。これは、あまりにも一夫一婦の結婚制度の意義を軽んじた見方です。結婚を男女の一対一の関係に限定することには「強力な国家的ないし社会的利益」が存在するからです。そもそも「婚姻」が他の人間関係とは異なる特別な義務、特権を与えられているのは、それが次世代を生み育てる基盤だからです。人間は成人するまでの期間が非常に長いため、子供の実の両親が長期にわたって安定した関係を維持し、子供の育成環境に責任を持つ必要があります。そのためには婚姻制度を整え、健全な性秩序と異性愛規範が保たれるようにしなければなりません。逆に、現在の日本では、その「婚姻」が弱体化することによって深刻な「国難」が訪れています。非婚化・晩婚化による人口減少と地方の衰退、離婚にともなう一人親家庭の貧困問題や児童虐待の増加、更には増え続ける単身高齢者に対する社会保障、介護の問題などです。そうした中、改めて一夫一婦の安定的な「婚姻」の意義を見直し、保護、強化することこそが、重要な政策的課題となっています。それに対して、同性愛者の共同生活は、あくまでも当事者間の「個人的利益」に限定されるものであり、男女の婚姻に匹敵する国家的、社会的利益をもたらすものではありません。従って、両者を同列に扱う「婚姻の性中立化」=「同性婚合法化」は、現在の日本の課題解決に逆行するものであり、決して認められるべきではないでしょう。また、同提言では「婚姻」の憲法解釈についても偏りが見られます。これまで「婚姻は、両性の合意にのみ基づいて成立」するとした憲法24条は「同性婚を認めていない」という見解が主流でした。国会においても、安倍首相が「現憲法の下では、同性カップルの婚姻の成立を認めることは想定されていない」(2015年2月18日)と明確に答弁しています。しかし、提言の中では、審議に参加した棚村政行早稲田大学教授らの「憲法24条の立法趣旨は『家制度から婚姻を解放』することにあったため同性婚を否定していない」という主張を無批判に採用、著しく中立性を欠いています。この点からも、日本学術会議の提言には大きな問題があると言わざるを得ません。(O)※次回は「『性の多様化』の教育推進」『LGBT差別禁止法』について取り上げます。