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記事一覧(112)

「結婚」と「同棲」に違いはあるか

 正式な約束は関係の質を高める   非婚・晩婚化が進み、「出生率回復のためには婚外子を増やすべき」という怪しげな論説も飛びかうようになりました。果たして、一夫一婦の婚姻制度を相対化して、結婚と事実婚を同等に扱うような社会に未来はあるのでしょうか? 結婚は同棲よりも優れている   11月6日、結婚と同棲について米国のピュー・リサーチセンターが興味深い調査結果を発表しました。それによると、同棲中のカップルと、正式に結婚したカップルとでは、相手に対する信頼や満足度に明白な違いがあったのです。もちろん、より高いスコアが出たのは結婚したカップルの方です。 たとえば「相手が貞節を守っている」と信じる割合は、結婚カップル84%に対して、同棲カップルは71%。「相手が2人の利益のために行動している」と信頼する割合は結婚74%、同棲58%となっています。同様に「常に相手が真実を語っている」と信じる割合は、結婚68%、同棲52%。「責任をもったお金の使い方をしてくれている」と信じる割合も結婚56%、同棲40%と、いずれも結婚しているカップルの方が、より相手を信頼していることがわかったのです。 満足度についても、相手の子育てへのかかわり方、雑用の分担の仕方、コミュニケーションなど、いずれも結婚したカップルの方が、より満足度が高くなりました。さらに「相手を、他の誰よりも親しく感じる」割合も結婚では8割近く(78%)に達し、同棲の55%を大きく上回りました。 どうして、そのような違いが出るのでしょうか。断言はできませんが、関係を結ぶ際の理由や動機が関連しているかもしれません。実はこの調査では、結婚、あるいは同棲に至った主な理由も調べています。 それによると、「結婚に至った理由」では「愛情」(90%)、「友情」(66%)が1位、2位。「正式な約束をしたかった」(63%)が3番目となり、逆に「経済的合理性」(13%)や「利便性」(10%)を挙げた割合は1割前後にとどまりました。一方、同棲に至った理由で「愛情」(73%)「友情」(61%)に続いたのは、「経済的合理性」(38%)や「利便性」(37%)でした。そして、「正式な約束」のかわりに「関係を試してみたかった」(23%)が入るなど、非常に一時的で、自己都合の要素が高くなっています。ちなみに「子供が欲しかった」という理由も結婚(31%)が同棲(14%)より2倍ほど高くなっています。 より2人の関係に対するコミットメントの度合いが強い正式な結婚の方が、単なる同棲よりも2人の関係の質を高めるのは当然かもしれません。 同棲のリスクに対する認識が不足   この調査では、特に若い世代を中心に同棲に寛容な態度が増えていることも明らかになりました。結婚の予定がないままの同棲についても、全体で69%、18~29歳の若者では78%が「許容できる」と答えました。ただし、同棲に対する肯定的な見方は、いくつかの誤解に基づいています。 一つは「結婚前の同棲」がもたらす効果についてです。全体の半数近く(48%)、若者では6割以上(63%)が、「結婚前に同棲すると、結婚後の生活に良い影響がある」と答え、「悪い影響がある」と答えたのは1割ほどにとどまりました。しかし、事実は逆です。各種研究では、結婚前に同棲を経験したカップルは、そうでないカップルに比べて、結婚生活の質が低く、離婚も多くなることが分かっています。 また、子育てに関して「結婚と同棲が同等」と答える割合も、全体で約6割(59%)に上りましたが、これも大きな間違いです。米国の家族学者による研究では、同棲カップルの関係は、結婚した夫婦よりも不安定で、子供が幼くして両親の別離を経験する割合が高くなります。その結果、子供の成長にとって、社会的、教育的、心理的な悪影響が出ているのです。 正式な「結婚」は、公式な誓約がないままの「同棲」に比べて、相手への信頼や満足度、関係の安定性や子供の養育など、あらゆる面で優れています。婚姻制度を曖昧にすることは、カップルにとっても、その子供たちにとっても危険な風潮だと言えるでしょう。(O)

トランプ氏弾劾調査開始 今後の行方が大統領選に大きく影響

〜民主「公開証言」で攻勢かけるも「もろ刃の剣」?〜米下院本会議は10月31日の本会議で、トランプ大統領のウクライナ疑惑の弾劾調査開始を正式に決定する決議案を野党民主党議員らの賛成多数で可決しました。野党の民主党はトランプ氏の不正疑惑を把握する政府関係者らの公開証言に着手し、不正疑惑の深刻さを米国民に訴えていく方針で、トランプ氏の弾劾訴追に向けて手続きを進めたことになり、民主党と政権との対立が激しくなります。下院での決議は賛成232、反対196で可決。ただ、共和党員は1人も首を縦に振らなかった一方、民主党からは2人の造反者が出ました。共和党は現時点でトランプ氏擁護で結束しており、一連の弾劾プロセスにおけるトランプ大統領の最初の勝利だとする論評もあります。大統領の罷免には、下院で弾劾訴追が可決されたうえで、上院での弾劾裁判で3分の2の議員が有罪に票を入れる必要があります。共和党が多数派を占める上院で3分の2以上の賛成を得るのはかなりハードルが高いとみられます。今回の決議ではトランプ氏の不正疑惑について公開証言を行う権限を民主党のシフ議員が率いる下院情報特別委員長に付与すると明記し、これまでの非公開証言も「一部を除き」公開するとしました。日本のメディアの多くはこれを、「これまでトランプ政権関係者らを非公開で聴取してきた民主党が、今後は公開証言を交えて世論の関心を高めたい考え」と報じています。しかし実際のところ、決議は、9月末に民主党のペロシ下院議長が議決を取らずに決定した弾劾調査について、これを違法だとする共和党の主張をかわすために行ったものです。調査を任されたシフ委員長は調査を非公開にして独断で証人喚問を行い、トランプ氏に不利な情報だけを公開し、共和党議員の参加を限定するなど、民主国家ではありえない秘密調査を糾弾されていました。そもそも「ウクライナ疑惑」とは、オバマ政権下でバイデン前副大統領が政治力を使って息子のハンター・バイデン氏に巨額の利益誘導したとされる問題に端を発しています。バイデン氏の「利益誘導」とトランプ氏の「職権乱用」。両者の疑惑へのメディアの扱いは後者だけがクローズアップされていて、「論点ずらし」の批判は免れず、バランスを欠いていると言わざるを得ません。トランプ氏が大統領に就任して以来、米国の主要リベラルメディアはロシア疑惑を追及し続けました。しかし、特別検察官を任命して22カ月の時間と2500万ドル(約28億円)をかけた捜査は「トランプ陣営およびそれに関わる人物がロシア政府と共謀、協調した事実は認められなかった」と結論付け、終了しました。今回はウクライナ疑惑では弾劾調査の開始まではたどり着きました。今後、議会公聴会での関係者の証言をへて、米国民がどのような世論を形成していくかが注目です。しかし、そこで何も出てこなければ、トランプ氏は「民主党が国政をほったらかしてトランプ罷免に熱中している」と主張し、来年に迫った大統領選挙も一気にトランプ氏有利に傾くかもしれません。これはある意味、二大政党の二極化が進んでいる現在の米国政治特有の事情と言えるでしょう。(t)

児童は教員をよく見ている

 神戸「教諭いじめ」問題 同校の児童同士も急増 先ごろ、神戸市の市立東須磨小学校に勤務する20代の男性教員が、同僚の先輩教員4人から激しいいじめを受けていたとされるニュースが話題になりました。報道されているいじめの内容だけでも、「女性教員に対して性的な内容を含むメッセージを送信するよう強要」「尻を殴ったり、足を踏みつける」といったものや、被害者を羽交い締めにして激辛カレーを無理矢理食べさせている様子を写した画像が明らかにされています。被害者の男性教員は精神的に不安定になり、今年9月から休暇による療養を余儀なくされており、担任していたクラスには急きょ臨時講師が配置されています。男性教員側は、処分内容や職場の改善状況を踏まえ、刑事告訴について検討するといいます。東京都内で小学校教員をしている筆者の友人に聞くと、「学校は、子供たちだけでなく、教員にとっても逃げ場のない閉鎖的な環境だ」とこぼします。「皆、個人でストレスためながら、仕事している。管理職から業務を押し付けられてやっている感覚になる時も。今回の神戸の場合も、子供たちのために自分の頭で考えて行動する習慣がついてないのでは」とも。もちろん、ストレスが原因だと擁護したいわけではありません。それどころか、今回のケースは暴行罪、強要罪が成立する可能性すらあるれっきとした犯罪行為です。また、状況は学校現場において異なるでしょう。ただ、一般的に学校現場が閉鎖的なコミュニティになりやすいことは以前から指摘されています。学校の風通しを良くし、外部との交流を促進するための取り組みをどう進めていくかは緊急の課題と言えます。閉鎖的なコミュニティで問題が見つかりづらい構造の中で、相談窓口増や管理職育成など、問題への予防的措置も急務です。教員同士がいじめ合っていれば、生徒のことなど、真剣に見ているとは到底思えません。いじめに際して、この学校の他の同僚や先輩の教師は何をしていたのでしょうか。いじめは加害者と被害者だけの問題ではなく、環境にも大きな原因があります。昨日17日に開かれた同市議会文教こども委員会で、教育委員会はこの小学校で子供どうしのいじめが急増していることを明らかにしました。認知件数が2017年度は0件だったのに対し、18年度は13件、本年度は半年間で16件にも増えているというのです。認知件数がいじめの実態を正確に反映しているとは必ずしも言えませんが、看過できない数字です。この場で、教育委員会は「推測だが教員の人間関係が影響した可能性もある」として、対策を急ぐ考えを示しました。可能性ではなく間違いなく影響しているでしょう。問題を「教育委員会でも文科省でもなく、いじめをする人間の本質だ」との声もありますが、児童は教員をよく観察しています。教員間のパワハラもしっかり見透かされていたのでしょう。学校現場や教育委員会、文部科学省が一眼となって「いじめが絶対に許されない行為であると児童生徒に指導する」ことを徹底する取り組みを本気ですすめることはもちろんですが、周囲がこの問題を傍観することなく、各家庭においても、今回の神戸の事例を通じて、子供たちとの会話や触れ合いを確保し、ともに考えることが重要になるでしょう。(W)

少子化対策の切り札となるか 幼児教育無償化まで1カ月

幼児教育の質的向上と家庭の育児観見直しが今後の課題10月1日の消費税の増税まで1カ月を切りました。これに合わせ、幼児教育・保育の無償化がスタートします。幼稚園や認可保育所、認定こども園に通う3〜5歳児は親の所得に関係なく全員、0〜2歳児は所得の低い住民税非課税世帯のみ無料になるほか、認可外保育サービスや幼稚園も、条件付きだが補助の対象(無償の上限額あり)となります。幼保無償化に伴う必要負担は国と自治体とで7000億円超とされ、消費増税に伴う増収分がそのままあてられる計算です。幼保無償化は安倍政権の掲げる「全世代型社会保障」の看板政策であり、「国難」と呼ぶ少子化への対策と、女性の就労支援が目的とされています。保護者の負担軽減という点からは歓迎すべきことです。しかし、無償化すればそれで解決するという問題ではありません。昨今、待機児童問題や保育所内の虐待など、保育環境をめぐるさまざまなニュースが取り沙汰されるなか、無償化には心配の声も多く聞かれます。無償化で需要が伸びることで、待機児童の増加や保育の質の低下、そして教育格差のさらなる拡大が懸念されているのです。保育の質が改善しない根本的な原因の一つは、保育現場の業務の増加とともに保育士や幼稚園教諭が専門職として十分に認識されていないことです。質の高い幼児教育のためには、保育環境の充実とともに、教員や保育士の資質・能力向上、待遇改善が不可欠であることはいうまでもありません。また、少子化対策としての無償化にはより大きな問題点があります。それは、少子化の原因を「母親の負担が大きい」「保育園に入れない」「経済的な負担が大きい」などと矮小化してしまうことで、「育児はコストがかかる」「子供はリスクである」といった思考を若者世代に強調してしまうことです。総合人材サービスのパーソルキャリアがこのほど行った調査(全国の20〜40代の働きながら子育てをする男女600人が対象)では、「家庭の時間を十分に取れている」と回答した人は約1割(14.0%)。また、「十分に取れていないと感じる家庭の時間」の項目では、「自分のための時間」と同率で「子供との触れあいの時間」(92.8%)がトップでした。無償化で、子育て家庭には一定の時期に金銭的な余裕が生まれることになるかもしれませんが、時間的な余裕も生まれるのでしょうか。本来めざすべきは、多少は経済的コストがかかっても、「子育てしたい」「子供がいて楽しい」と思える社会のはずです。本気で少子化の克服をめざすなら、男女の役割意識や働き方などを含め、結婚や子を持つことについて、十分な情報や啓発のための資料を提供すべきです。また、学校教育の場でも、個人の自由な選択を前提としつつ、結婚して子供を産み、社会を受け継いでいくことの重要性について教える場が必要ではないでしょうか。10月から実施される無償化が、幼児教育・保育の質的な向上とともに、子育てについて社会全体で考える機会となることを願います。(S)

国内優先で日韓、米韓関係に深刻な亀裂

文政権が日韓GSOMIA破棄を決定さすがにそこまでは、と思われていた一線を越えてしまいました。韓国大統領府は22日、日本と結んでいた軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄することを決めたと発表、23日午後、日本側に正式に伝達しました。常識的には、貿易や歴史と安保問題は全く別の領域であり、よもやGSOMIAを破棄するはずがないと予想されていましたが、文政権は破棄を国内向けのメッセージとして選択したようです。韓国政府は日本が韓国を貿易優遇措置国から除外したことで、両国の安全保障上の協力関係に「重大な」変化をもたらしたためと説明しています。日本のネット界隈では「破棄で困るのは韓国」「安全保障の分野にまで感情論を持ちこむとは」といったあきらめの感情が拡大しているように見受けられますが、日本としては早急に事態の客観的な影響を見極める必要があります。今回の決定を、日本が嫌いとか韓国国内の不満を抑えるためといった感情論で捉えるのは表層的でしょう。GSOMIAの締結は2016年ですが、締結に至るまでには、韓国内で日本との軍事機密の共有に根強い反対があり、締結が4年伸びた経緯があります。それも、米国が日韓の間をとりもって、やっと締結に漕ぎ着けたものです。GSOMIAは実質的に意味がないという指摘もありますが、これは米国を軸とした日米、米韓というトライアングル同盟の象徴であり、中国、北朝鮮などに対峙する東アジアの安全保障体制の中に、この枠組みが存在すること自体に意義がありました。一方、文在寅(ムン・ジェイン)政権が北朝鮮との統合、中国経済圏への参画を急いでいると考えれば、今回の破棄も納得です。通貨危機に直結しかねない「ウォン安」や、「企業収益の悪化」「失業率の上昇」など、韓国ではいま、多くの経済指標が悪化しています。日本が「経済制裁」を課していることを言い訳に、日米韓の対北朝鮮の連携からいち早く脱しようとしているとの指摘もあります。韓国に厳しい見方をする専門家からは、今回の破棄が「北朝鮮と韓国は急速に“裏で”近づいているという証拠」「GSOMIAが本来、情報を漏洩しないための枠組みであるのに、実際は横流ししていたという噂がある意味、事実に近いのでは」「表向きは批判しつつ、中、ロ、北朝鮮、韓国が裏でガッチリ組んでいる」との声さえ上がっています。今回の破棄によって、日韓はともかく、まずは米韓関係が悪化が懸念されます。この決定は韓国の安全保障、ひいては韓国民にとってもマイナスであることはいうまでもありません。米国側から見れば、在韓米軍の撤退と韓国との同盟破棄をするか否かは、軍事情報が韓国から北朝鮮、中国に漏洩するリスクと、対中国防衛ラインが38度線から対馬に後退するリスクを天秤にかけて判断することになります。中ロの戦闘機が日韓を隔てる日本海の上空を飛び、北朝鮮がミサイル実験を繰り返しています。東アジア情勢が混沌とするなか、日本も静観してはいられません。米国とのさらなる連携強化を進めるとともに、印豪を加えたインド太平洋戦略を進めなければなりません。(Q)

夫婦、父母という言葉が消えてしまう?

LGBT・同性婚、参院選の隠れた争点参議院議員選挙の投票日が迫ってきました。読売新聞の世論調査では、今回の参院選最大の争点は「年金」(41%)となっています。生産年齢人口が減り、高齢者の割合が人口の3割に迫るなか、多くの国民が老後の生活に関心をもつのは当然のことでしょう。ただし、年金問題がここまで深刻化した背景には「非婚・晩婚化」など結婚・家族文化の衰退があります。本来であれば、結婚や家族をどのように立て直していくのか、家族政策が争点としてクローズアップされるべきですが、表立って家庭再建を掲げる政治家、政党はなかなか見当たりません。一方で、一夫一婦の婚姻制度をさらに弱体化させる恐れのある同性婚問題に対しては、一部の野党が積極的に推進する立場を明確にしており、慎重姿勢の自民党などとは対照的な姿勢を見せています。リベラル系メディアの『ハフポスト』(日本版)は7月4日時点の公約をもとに、同性婚への各党の立場を比較しています。それによると、同性婚賛成は立憲民主、共産、社会民主、維新。態度を明らかにしていないのは自民、公明、国民民主となっています。賛成派のなかでも立憲民主党は、渋谷区同性パートナーシップ条例の適用カップル第1号となったレスビアンの増原裕子氏(現在は、当時のパートナーと関係を解消し、新たに勝間和代氏とパートナー関係にあることを公表)を京都選挙区で擁立。全国比例でもゲイの石川大我・前豊島区議が名簿に名を連ねています。(このほか「れいわ新選組」からトランスジェンダーの安富歩・東京大学教授が立候補)。したがって、家族政策という点では、LGBT・同性婚に対する立場が一つの争点だと言えるでしょう。LGBT・同性婚に対する立場を争点としてみた場合、注意すべきことは、これがいわゆる「人権問題」ではなく、婚姻・家族制度に対する価値観の対立だということです。それは、今年6月、立憲民主党、共産党、社会民主党の野党三党が衆議院に提出した同性婚合法化にむけた民法の一部改正案(通称:婚姻平等法案)の内容をみれば明らかです。同法案では、①同性婚合法化②同性カップルに特別養子縁組を認める③「夫婦」「夫」「妻」を「婚姻の当事者」とし、「父母」「父」「母」を「親」に変更するなど、結婚・家族に関わる文言を性中立的なものに改正する――という3点が柱となっています。②については、同性婚を認めている欧米諸国ですら子供を持つことは認めない国もあるなか、非常に急進的な内容だと言えるでしょう。③も同様です。米国でもオバマ政権時代に教育省が公文書の「父」「母」の欄を「親1」「親2」に変更したことが話題になりましたが、それを民法に明記しようというのですから、これはもう男女の区別や一夫一婦制度を根底から覆す「社会革命」と言わざるを得ません。性的マイノリティに対する差別や人権侵害があれば解消するのは当然のことです。しかし、そのことと男女の区別に基づく社会制度や、一夫一婦の婚姻制度を相対化したり否定することとは、まったく次元の違う問題です。これらの過激なLGBT・同性婚運動は「性解放」や「ジェンダーフリー」といった、伝統的な性道徳や家族制度を否定する家庭破壊運動の延長線上に出てきたものです。結婚と家族を立て直すべき現代日本にあって、こうした一部野党の動きには警戒が必要です。(O)

焦る習氏 主席就任後、初の訪朝

共闘確認も米国の譲歩は期待薄中国の習近平国家主席は20日、北朝鮮・平壌を公式訪問しました。両首脳はこれまで、中国で4回会談を重ねているものの、習氏の訪朝は2013年の主席就任以来初めてで、中国主席の訪朝は14年ぶりです。21日午前、会談の様子を伝えた北朝鮮の朝鮮中央通信は、両首脳の具体的なやり取りには言及せず、習氏の訪問を「朝中親善の不変と不敗を全世界に誇示する決定的な契機になる」と強調。朝鮮半島情勢をめぐっては「現在のように深刻で複雑な変化が起こる環境の中で、両国関係を深く発展させることは共同の利益になる」との認識で一致したとしています。一方、中国国営中央テレビ(CCTV)などが伝えたところでは、非核化をめぐる米朝協議の停滞に不満を漏らす正恩氏に、習氏は「国際社会は米朝が協議を続けて成果を出すことをいつも希望している」と述べ、協議継続を促したといいます。習氏のこの時期の訪朝は、来週に迫った大阪での20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、存在感をもって参加するための環境づくりとみられています。特に、トランプ米大統領との首脳会談が見込まれるなかで、貿易問題をはじめ対米交渉で手詰まり感がある中国としては、唯一にして定番の「北朝鮮カード」を外交カードとして用いたい思惑があります。これに加え、中国にとって、香港の「逃亡犯条例」改正問題の影響も大きいとみられます。香港問題は習政権にとって最優先の課題ですが、トランプ政権はすでに、大阪G20で香港の「逃亡犯条例」に反対するデモの問題を議論する意向を表明しています。習氏としては、これ以上の騒ぎにしないためにも他の問題へ関心をそらす必要があります。香港問題から世界の関心をそらさせ、「北朝鮮カード」を手にトランプ氏と互角に首脳会談を行う状況に持ち込めれば中国としては成果と言えるでしょう。しかし、今回の中朝会談がその環境づくりとなるかは疑問です。第1に、北朝鮮の非核化に対する米中のスタンスにはすでにかなりの隔たりがあり、トランプ政権は習政権の動きを読み切っています。習氏が正恩氏に制裁緩和をちらつかせて非核化に向けた言質を取り、中国が一定の役割を担うことを示そうとしても、それほどの効果はありません。トランプ氏にしてみれば、「俺はいつでも正恩氏と直接交渉できる」というわけです。そもそも、3回目の米朝会談への期待を表明しているのは正恩氏のほうなのです。第2に、習氏が正恩氏から従来より踏み込んだ非核化への約束を取りつけたとして、それが信用できないことは歴史が証明しています。特に今回の中朝会談では、北朝鮮も中国側のこういった苦しい事情がわかった上で、あえてカードとして使われることを受け入れ、経済支援といった見返りを見込んでいることは明らかです。そうした中国の焦りを見透かした上で、北朝鮮としては中国の経済支援を得られるようになれば、弱い立場から米国と交渉する必要がなくなるでしょう。北朝鮮問題に詳しい専門家の多くも、「北朝鮮の狙いは核兵器と中国からの経済支援の両方を手に入れること」と指摘しています。香港での大規模デモや、米貿易摩擦などの逆風をかわしたい習氏と、非核化をめぐる米国との交渉にこぎつけて経済制裁緩和の糸口を探りたい正恩氏。共闘の思惑は合致するものの、米国の譲歩を導くきっかけを見いだせるかは不透明です。(W)

児童虐待の対応力をどう強化すべきか

児相と警察の連携、厚労省が実態調査相次ぐ児童虐待事件で課題が指摘されている児童相談所(児相)と警察との連携について、厚生労働省が初の全国調査に乗り出すことになりました。札幌市中央区で池田詩梨(ことり)ちゃん(2)が衰弱死した事件で、児相と警察の連携に問題があったとの指摘があり、児童相談所と警察との間の人事交流についてや、どのような情報を共有しているかなど、実態把握を急ぎます。政府は昨年7月に、虐待防止の緊急対策をまとめ、虐待による外傷や育児放棄(ネグレクト)、性的虐待などがあると考えられるケースは、児相と警察が情報共有を徹底し、立ち入り検査をする場合などは必要に応じて警察に援助を要請することをルール化していました。しかし、虐待死事件はなくならず、機能しているとは言えません。札幌市の事件を巡っては、児相と警察にそれぞれ虐待を疑う通報が寄せられたものの、警察が母子との面会に向かった際に児相が同行せず、連携に問題があったことが明らかになっています。市児相には昨年9月に住民から最初の通報があり、このときは職員が面会に訪れています。しかし、その後も虐待は続いていたとみられ、「火が付いたように」泣き叫ぶ声や、何かにぶつかるような物音が続くことに、近隣住民がいたたまれなくなって市児相に連絡しています。しかし、市児相は電話連絡だけで問題なしと判断。目黒区の事件後、政府から全国に通知されていた「通告から48時間以内に安全確認する」とのルールも無視されていました。虐待事件で加害者が責任を負うのは当然ですが、こうした悲惨な事件が起こるたびに児相、警察、学校など当局の不作為が繰り返し明らかになっている事実も看過できません。繰り返される悲劇に、この際、警察に対応を一本化し、児相は保護した後のケアに徹するべきだとの意見も出ています。大人が殺されそうになって大声を出していれば警察が動くのに、子供の泣き声だと動かないのはおかしいというわけです。事態の緊急性や深刻さを考えると、警察権のような一定の公権力の行使を求める意見も理解できますが、体制を整備・再構築して、専門家を育成することもやはり必要だと思います。児相が言及している人手不足の現実も受け止めながら、教職員・PTAや自治体の世話役をしてきた主婦などの再登用も含め、関わる人数を増やす必要性も感じます。家庭の体罰を禁止する法改正が近く成立見通しですが、法の実効性を保ち、子供を虐待から守るにはどうしたらいいのか。実態調査とともに体制整備に向けた主体的な取り組みを急がなければなりません。(M)

GAFAがもたらすのは恩恵? それとも弊害?

G20福岡で「デジタル課税」具体化に向けた議論がスタート昨年来、欧州で議論されていたGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のような巨大IT企業、いわゆるデジタル・プラットフォーマーに対する規制強化の動きが、日本を含め世界に広がってきました。彼らの独占・寡占状態が、取引企業や消費者個人にもたらす不利益や、プライバシー保護に配慮した動きです。昨年末に経済産業省や公正取引委員会などが行った調査では、取引先や個人からの不平や不満が目立ちました。例えば、事業者に一方的な料金体系の大幅値上げや過大な手数料、理不尽なペナルティーなどの問題。また、個人では、アプリや閲覧記録などを通じて知らぬ間に個人情報を吸い上げられているプライバシーの問題や、SNSのフェイスブックで個人データの流出が発覚するなど、情報の取り扱いの不透明さも指摘されています。これに加え、新たにプラットフォーマーに対する課税の議論も高まってきました。いわゆる「デジタル課税」の考え方です。新たな課税の必要性が議論される背景には、企業が本社や支店、工場などの拠点を設けた国で得た所得(利益)に法人税を課すという従来のルールでは、そうした拠点を置かなくても、書籍や音楽のネット配信やネット広告など、オンライン上で国境を越えたサービスを行い、巨額の利益を上げることができる巨大IT企業などが適切に課税されず、他の企業と比べて不公平だ、との認識があります。日経新聞などが報じているところでは、巨大IT企業に対するデジタル課税について、6月8、9日に福岡市で開かれる主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、2020年の合意をめざす基本方針が採択される見通しとなりました。具体的には、企業の本社機能がある国から、デジタルサービスなどの利用者がいる国により多くの税収を配分する方法などが検討されるようです。グローバル化とIT技術の飛躍的な進歩が世界の経済構造を大きく変える一方、基本的な国際税制は1世紀前に開発されて以来、ほとんど変わっていませんでした。新たな課税方針が合意されれば、今後、実体のない本社を低税率国に置いて法人税を回避するような取り引きは次第にやりにくくなるでしょう。その意味で、福岡でのG20財務相会合は国際協調の歴史的な契機となる可能性があります。デジタル課税の議論は今後、利益を計上する国で課税する原則から、利用者が多い国、すなわちその企業が利益を上げるのに貢献した消費者のいる国で税を課す流れに移行していくだろうと見る専門家もいます。こうした動きに対し、情報技術の恩恵が行き届いていいない国や地域が残るなか、デジタルサービスの普及を遅らせる危険性があるとの声も上がっています。たしかに、情報技術のおかげで地球上の誰もが平等に情報にアクセスできるようになったことは事実です。貧しい農村や政情が不安定な危険地域で暮らす女性や子供がインターネット上で学ぶ機会を得ることができ、スマートフォンを使ってビジネスを起こすこともできるようになりました。IT技術やデジタルサービスの普及がもたらす恩恵と、それを担う新たな経済圏が生み出す富の寡占状態。福岡でのG20が、こうした問題の両側面をしっかり見極め、単に国際税制に限らず、世界に恩恵をもたらす情報流通とプライバシーや安全のバランスも考慮した最適点を探求し、国際ルール・基準づくりに結実させていく出発点となるよう期待します。(M)

「焦る」北朝鮮に日米は毅然とした対応を

またも「飛翔体」発射 国連決議違反も意に介さず?北朝鮮は9日午後、短距離ミサイルと推定される飛翔体2発を発射しました。北朝鮮は先週4日にも、金正恩(キム・ジョンウン)委員長立ち会いで、複数のロケット砲と少なくとも1発の短距離ミサイルを東海岸から海に向けて発射したばかり。今回の発射は、米国のビーガン北朝鮮担当特別大使が韓国を訪問する中で実施されました。米国は4日の発射を「不問」に付しましたが、北朝鮮は度合いを強めながら挑発を継続しています。2回目の発射後に記者団の質問を受けた米国のトランプ大統領は、飛翔体について分析中だとしながらも、発射されたのは「短距離ミサイルだった」と指摘。「彼らは交渉したがっているが、その準備が整っているとは思わない」と述べ、不快感を示しました。前回の発射の際に、ポンペオ米国務長官は米国や日韓の安全に支障をきたすものではない、と意に介しませんでした。それにもかかわらず、またしても飛翔体を発射した北朝鮮。日米はその意図を読みあぐねているようです。ただ、いずれにしても米国との交渉が行き詰まり状態のなか、今回の発射は北朝鮮が焦っている証拠だとも言えます。今回の北朝鮮の行動は、国連決議に違反して国際社会の反発を招いても、米国の脅威に繋がるICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射しないというトランプ氏との約束を破らないことで、国連は見限り、米国のみを交渉相手とする決意を示したかっこうです。そしてその背景には、日米が主導した制裁が効いていることや、決裂に終わったハノイ米朝首脳会談後、中国、ロシアから冷たくあしらわれ、国内の政権基盤が危うくなる可能性が出はじめている事情があるとの指摘もあります。北朝鮮は今後、大統領選が本格的に動き出す秋口に向けて、継続的にミサイルを発射し、外交的成果をあげたいトランプ氏から譲歩を引き出す考えとみられますが、今のところ米国は冷静です。9日には、国連制裁に違反して北朝鮮から石炭を輸出していた同国船籍の運搬船を押収したと発表。国連制裁違反で北朝鮮船舶が押収されるのは初めてで、北の飛翔体発射後間もないタイミングで発表し、北朝鮮を揺さぶる狙いとみられています。他方、日本は今回の発射を受けてもなお「安全保障に影響はない」(安倍首相)とコメントしていますが、北朝鮮に対し間違ったシグナルを送らないように注意しなければなりません。正恩氏が、制裁を主張してきた日本に対し、参院選を前に日朝首脳会談を実現し、拉致問題である程度の譲歩をちらつかせて対話ムードをつくるなどのシナリオを描いていたとしてもなんら不思議はありません。北朝鮮の硬軟織り交ぜた瀬戸際外交を過去何度も見せつけられてきました。日米同盟が最重要である点に異論はありませんが、トランプ頼み一辺倒では日朝交渉の前進はおろか、かえって対話と圧力の圧力路線が弛緩し、北に利するような状況をつくりかねないことを肝に銘じるべきです。(Q)

リベラル化と多様化が進む民主党支持層の心つかめるか

「本命」バイデン氏が大統領選に出馬表明2020年の米大統領選に向けた野党・民主党の候補選びがかつてない混戦模様です。25日には、オバマ米政権の副大統領だったジョー・バイデン氏(76)が正式に立候補を表明し、これで民主党の候補者は20人になりました。同日、ユーチューブなどSNS上で公開された動画メッセージの中でバイデン氏は、「米国の魂」が危機に瀕しており、それを救うために戦わねばならない、と主張。「トランプ大統領に8年の任期を許せば、トランプ氏は米国と我々の本質を永遠に、根底から変えてしまう。私はそれを傍観することはできない」と訴え、出馬を表明しました。政治経験や知名度で群を抜くバイデン氏は各世論調査でトップを走っており、メディアの多くも「民主党の本命」と報じています。ただ、現在76歳で仮に大統領となれば任期中に80歳を迎えることから、その高齢を懸念する声もあるほか、最近ではバイデン氏に背中をなでられるなど「不適切な接触」をされたと主張する複数の女性が告発に踏み切り、批判にさらされました。とはいえ、バイデン氏は民主党の中道を行く重鎮で、良心派、国際派とされ、何より副大統領としての実績や政策スタンスに関する知名度は抜群です。米国の伝統的、国際社会での中心的役割、民主主義の再確立、などを訴えることで、トランプ氏との差も示しており、左派のサンダース氏、GAFAの解体を唱えるウォーレン上院議員などと比べると中道で、王道の候補と言えるでしょう。それでも、バイデン氏が民主党候補者の中で首位の座を守りきれるかどうかは不透明です。というのも、近年、民主党とその支持者は社会的価値観や経済政策でリベラル化を強めており、そのことはサンダース氏をはじめ非主流派といえる候補者の増加に表れています。つまり、民主党支持層が「多様性や大胆なリベラリズム」を求める中で、「政策能力と実績」によって戦おうとするバイデン氏がどこまで票を得られるかは微妙というわけです。過去にも王道の候補と呼ばれた民主党のゴア氏がブッシュ大統領に敗北した例があります。バイデン氏がトランプ氏に勝つには、米国保守層に対抗できるリベラル層を固めるモメンタムの醸成が必要でしょう。(W)

既存の「女性学」が持つ限界とは

上野名誉教授の「祝辞」を読む東京大学入学式での「祝辞」が話題となっています。祝辞の主は、わが国における「女性学」の草分けであり、フェミニストとして知られる上野千鶴子名誉教授(70)。日本社会や東大内部にも残る根深い女性差別に言及しつつ、「頑張っても報われない社会が待っている」と辛口のスピーチを展開しました。これに対しては、一部に「入学式にふさわしくない」との批判もありましたが、40、50代の女性を中心に賛同、共感する意見が多数を占めました。共感の背景には、女性が弱者として虐げられてきた歴史があり、上野氏の問題提起には耳を傾けるべき内容も多く含まれています。祝辞の中では、東大の男子学生が私大の女子学生に集団で性的な凌辱を加えた事件も取り上げられました。残念ながら、女性の尊厳を踏みにじる同種の事件は後を絶ちません。男性たちは、女性の価値を軽んじてきた歴史を痛切に反省しなければならないでしょう。また、上野氏は「報われた」立場に立っている東大の新入生に対して、与えられた環境に感謝するとともに、自らの力を報われない立場にある人々を助けるために使ってほしいと呼びかけました。もちろん、こうした呼びかけ自体は大変すばらしいものです。一方で、男性と女性を「強者―弱者」「支配―被支配」の関係として捉える論法には限界があることも確かです。氏の「女性学」やその背景にあるフェミニズム運動は、男性優位の社会にあって一貫して女性の社会進出や地位向上を求めて戦ってきました。しかし、現代においては、男女を敵対関係のようにとらえる思考法だけでは対処できない問題が増えてきています。ちなみに、2017年の大学進学率は男子55.9%、女子49.1%。短大(本科)進学率を含めると女子の大学等進学率は57.7%まで上昇し、進学面での男女格差はほぼ消滅しました。大学卒の就職率についても男子97.5%、女子98.6%で全く差はありません。しかし、女性の学歴、年収が上昇する一方で、結婚相手の男性に、自分よりも高い学歴、年収を求める女性の傾向は変わりませんでした。その結果として結婚相手として「選ばれる男性」が相対的に減少。非婚・晩婚化が加速するという皮肉な現象が起きています。これは決して上野氏が指摘するように、幼いころからの男性優位の刷り込みの結果として、女性の意識が変わらないのではありません。妊娠、出産という重要な役割を果たす女性が、男性に経済的なサポートを期待するのは非常に自然で、合理的なあり方だからです。実際に、女性の社会進出が進んでいるようにみえる米国ですら、家計収入に占める平均的な割合は夫7、妻3となっており、男性が家計の主たる担い手となる傾向は変わりません。また、女性の社会進出や自立が進むなかで、家庭や地域社会が空洞化するという問題も起きてきました。子育てや親せき・近所づきあい、町内会やPTAの活動など、これまで主に主婦が担ってきた分野が機能不全に陥り、様々な社会病理を生み出しています。現代では、家族機能の弱体化を、保育園など行政の役割として引き受けようという考え方が主流ですが、こうした方向性はますます家庭や地域の弱体化を加速するでしょう。つまり、現代の男女をめぐる課題は、女性が一定の社会進出を果たしたことを前提として、いかに家庭や地域社会の機能を維持、再生するかという非常に高度な段階に入っているのです。上野氏の「女性学」をはじめフェミニズム運動は、共産主義の革命思想から大きな影響を受けており、家父長制や男性優位の社会を敵視して、女性の自立と権利を勝ち取るために戦ってきました。しかし、そこで攻撃された男女の性役割や、伝統的な一夫一婦の家族制度には「男尊女卑」という負の側面だけでなく、男女の性差にもとづく役割分担という知恵深い要素もあったのです。これからの「女性学」やフェミニズム運動は、共産主義的な思考法や、女性を一方的に「弱者」と見る被害者意識からの脱却が大きな課題となるでしょう。男性と女性は対立関係ではなく、お互いに異なる強みを持ちつつ補い合う「相補的関係」です。また、男女が協力しあって営む「家庭」が安定してこそ、個人の権利や幸福も守られるのです。その意味で、上野氏の闘争的な「女性学」は、時代的な使命を終えました。むしろ、これからは男女が共に幸福になる「家庭学」の登場こそが願われています。(O)