UPF-Japan PR

記事一覧(92)

深まる米国社会の分断に懸念

中間選挙で見えた米民主主義の転換点6日の米議会の中間選挙は、上院は与党・共和党が過半数を維持した一方、下院は民主党が過半数を制しました。トランプ大統領が早々と勝利を宣言する一方、民主党も下院奪還で歓喜に沸くという結果となりました。日本の多くのメディアはこれを「ねじれ状態」と報じ、トランプ氏の政策に一定の歯止めがかかると指摘しています。ただ、多くの民主党支持者が期待した「ブルーウェーブ(青い波)」は起きませんでした。もともと中間選挙では与党が大きく後退するのが通例であることを考えれば、上院はもちろん、下院でも共和党が事前の予想より健闘したという見方が妥当ではないでしょうか。実際、マーケットの反応もこの見方に沿っているといえます。一方で、今回の中間選挙に至る過程では、共和、民主両党の関係者や支持者に爆発物が送られるテロがあったほか、乱射事件、移民を乗せたキャラバン、LGBTQらの権利、若者、女性など、米国の主要なイシューを想起させる出来事が多数ありました。結果として、中間選挙で史上最年少候補者や、LGBTを公にしている候補者、女性候補者やムスリム候補者が多く当選していることは、米国民主主義の歴史上、大きな転換点を印象づけるものになりました。また、負けて議席を失った議員は両党ともに穏健派と思しき人が多いのが特徴です。中道が分解され、極端な「アメリカ・ファースト」とリベラルに収斂していくプロセスと指摘する声もあり、米国の分断は簡単には解消されそうにありません。(W)

独メルケル氏「退場」で揺れるEU

メルケル独首相は10月29日、与党・キリスト教民主同盟(CDU)が12月に開く党大会で党首として再選を目指さず、首相も2021年までの現在の任期限りで退き、政界からも引退すると表明しました。今回の決断は、ドイツ産業の集積地であるバイエルン州議会選に続き、金融の中心都市フランクフルトなどがあるヘッセン州議会選でも敗北、しかも大敗という結果を受けての引責辞任という形です。バイエルン州の場合、CDUの姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)の後退でしたが、ヘッセン州での敗北は首相自身が率いるCDUのものだったため、より直接的な打撃になったものとみられます。メルケル氏の「退場」は、ドイツのみならずEUにも大きな波紋を広げています。2005年にドイツ首相に就任して以来、メルケル氏は欧州連合(EU)の実質的トップとして影響力を行使してきました。EUの経験したバブルとその破裂、さらには欧州債務危機など幾多の困難にも重要な仲介者の役割を果たしてきました。名実共にEUの礎を築いた政治家の1人と言われるメルケル氏が、EU誕生からちょうど25年となる11月1日を前に退場を発表したことは、一つの時代の終わりを象徴するものとなりました。メルケル氏にとってターニングポイントなったのは、2015年夏、ハンガリーが国境の防衛を唱えた時、これを非人道的と非難し、「難民は1人たりとも拒否しない」と主張した出来事でした。その後、そのドイツ自身もあまりの難民の多さに流入制限に舵を切らざるを得なくなってしまったことが失敗と評価されてしまったのです。今日の難民問題に対する世論の趨勢は、反グローバリズムの高まりと軌を一にしています。すなわち、自国の政治、経済、治安が破綻したという理由で、法律や国境手続きを無視して経済大国に押し寄せ、豊かな国の富の分け前にあずかろうとする人々に対し、多くの人々が不公平感を感じています。これは自由貿易に象徴されるグローバリズムの結果、自分たちの生活や雇用が脅かされていると主張する中間層の人々の思いとリンクしています。まさに、今回のブラジル大統領選挙の結果、トランプ大統領の人気、そして、メルケル政権へのNOがそのことを表しているといえるでしょう。今後の大きな懸念は、そうした反グローバリズムが排他的な「人種差別主義」や極右的な「愛国主義」と結びついて、一種の「ポピュリズム」(大衆迎合主義)に陥っているようにみえる点です。反グローバリズムを掲げる政治家が、本当にグローバリズムの弊害に歯止めをかけられるのかは疑問です。英国がEU離脱の国民投票を実施する前、反対派はEUへの負担金の大きさをその理由に上げていましたが、現在、英国が進めているのは離脱後にも負担金を支払いながら域内の自由貿易の恩恵にあずかる道です。今後、EUの盟主である独仏の連携がEU存続の鍵を握ることになりますが、南北問題、英国の離脱、そして難民問題などに、メルケル後のリーダーが適切に対応できるのでしょうか。(S)

移民受け入れ問題、日本でも国民的議論を始めるべき

「移民キャラバン」1万人が米国に向け北上中中米・ホンジュラスなどから米国に向けて、大勢の移民が隊列を組んで移動中、というニュースが注目を集めています。その名も「移民キャラバン」。彼らは米国への入国をめざして主に徒歩で北上中で、中には赤ちゃんを抱いたり、子供の手を取ったりして進む人も多くいます。元々は10月中旬に、中米・ホンジュラス北西部の都市サンペドロスラのバスターミナルに集まった100人あまりが米国をめざしていました。さらに、SNSを通じて集まった約2000人がキャラバンを組織。彼らの多くは自国の凶悪犯罪や政情不安、貧困から逃れるために米国行きを決めたといいます。その後、グアテマラを通過しメキシコに入る道程で、エルサルバドルなどからの参加者も吸収し、雪だるま式に膨らんだ結果、現在、その数は7000人から1万人とみられています(国連推計)。この問題を巡り、トランプ米大統領は毎日のようにツイッターで移民キャラバンを非難。移民の入国を阻止するため、メキシコとの国境に最大1000人の実戦部隊を派遣する方針を25日に明らかにしました。また、キャラバンを止められない中米諸国への援助打ち切りもちらつかせています。米国では議会の中間選挙直前ということもあり、大きな話題となっています。一部には、中間選挙を狙って、移民の米国入国を支援してきたNGO「国境なき人々」(Pueblos Sin Fronteras)が意図的にキャラバンを組織したと指摘されています。これが事実だとしたら、皮肉なことに、今のところこの問題は反移民姿勢をとるトランプ氏と共和党に有利に働いているように思われます。映像で報じられるキャラバンの光景は、トランプ氏が訴えてきた移民の脅威や「壁」の必要性を証明しているように見えるからです。今後、トランプ政権がキャラバンに対して強硬姿勢を取った場合に、米国世論がどのように動くかは不明ですが、トランプ氏は「キャラバンにはベネズエラの左翼や民主党が資金提供している」「中東出身者が紛れ込んでいる」などの発言を繰り返しており、中間選挙対策に利用される巡り合わせになってしまいました。ただ、こうした米国の政治的側面を抜きにして考えてみると、移民問題は実に難しい問題です。移民問題が発生する背景には大きく分けて、「社会・文化」と「経済・雇用」の側面があると言われます。私たち日本人の多くは他国に移住して、その国の人間になろうとは考えていません。それは社会が安全で文化的も恵まれており、格差の問題が指摘されているとはいっても国を捨てるほどではないと考えるからです。しかし、世界にはそうでない人々がいることを直視しなければなりません。経済的に困窮し、日々、生命や安全が脅かされている人々が他国に雇用と安全を求めようとすることを「いけないこと」と言えないのが移民問題の難しさではないかと思います。ひるがえって、労働力としての外国人受け入れ拡大に動きつつある日本。移民受け入れで激しい議論が繰り返されるEUはもとより、多文化主義を掲げる代表的な移民国家、カナダやオーストラリアなどが受け入れに苦慮している現実を前に、これまで国民国家としての一体性を保ってきたわが国も、転換点に差し掛かっているといえるでしょう。(S)

停滞する日韓 不断の努力で関係再構築を

「日韓共同宣言」から20年 許されぬ冷笑的態度1998年10月に当時の小渕恵三首相と金大中(キム・デジュン)大統領が発表した「日韓共同宣言」から20周年。サブタイトルとして「21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」と冠した同宣言は、日本が韓国に対し、過去の歴史への反省とおわびを初めて公式に明文化するとともに、韓国も戦後の日本の平和への取り組みについて評価する内容でした。両国間に横たわる歴史問題に区切りをつけ、和解と未来志向の関係発展をうたう画期的な内容だったといえます。東京千代田区のホテルで9日、「日韓パートナーシップ宣言」20周年記念シンポジウムが開かれ、会場に駆けつけた安倍首相は、現在、日本で人気のある韓国料理「チーズ・タッカルビ」に触れて「第3次韓流ブームが起こっている」と述べ、参加した両国関係者を和ませました。ただ両国関係には改善の兆しが見えず、さまざまなあつれきが続いています。今月5日、韓国は自国開催の国際観艦式において海上自衛隊が自衛艦旗である旭日旗の掲揚を自粛するよう求めて譲らず、日本は派遣を見送りました。8日、共同宣言20周年を報じた韓国・中央日報は「日韓関係はこじれており転換点ははるか遠い」と悲観的な見方を示しました。また、国民日報も「領土問題や慰安婦問題で日韓関係が日に日に悪化しており、共同宣言の意義は薄れつつある」と指摘しました。さらに、韓国政府は慰安婦合意に基づいて設立した「和解・癒やし財団」の解散を示唆。文氏は9月の日韓首脳会談で、解散を求める韓国世論を伝えたといわれ、慰安婦問題を担当する陳善美(チン・ソンミ)女性家族相も11日、財団について「速やかに処理する」と述べ、解散させる方針を示唆したものと受け止められています。これに加え、朝鮮半島情勢が目まぐるしく動くなか、青瓦台(韓国大統領府)の関心は北朝鮮と米国に集中しているというのが実情でしょう。今年に入って、日韓政府が温めていた10月8日を前後する文大統領の国賓としての来日と、新たな日韓宣言の発表という構想も立ち消えになってしまいました。一方の日本は、北朝鮮の核・ミサイル問題や拉致問題の解決に向け、韓国との連携を重視しています。対立が先鋭化しないよう「友好」維持に腐心しています。9日のシンポジウムは200人ほどの小規模なものだったにもかかわらず、安倍氏はあえて参加。そこで「隣国ゆえに難しい問題があり、乗り越えるには政治のリーダーシップが必要だ。関係発展へ文在寅(ムン・ジェイン)大統領と努力したい」と強調したのもその熱意の表れといえます。いうまでもなく、朝鮮半島の平和と非核化に向けた南北対話が進むなか、この地域の平和定着のために日本の果たす役割は決定的に重要です。であれば、両国関係の現状を冷笑的に見つめることは許されません。民間の人的、文化的交流の拡大はもちろん、政府間の粘り強い努力が今後も必要です。歴史認識問題などの解決は容易ではありませんが、調整役を買って出るような知日派・知韓派の政治家や経済人のネットワークの再構築が急務です。日韓関係について、「日本は未来志向を強調し過ぎ、韓国はあまりにも過去に執着する」といった声がよく聞かれます。これを変化させ、韓国が未来志向を強調し、日本が過去を見るよう呼びかけるメッセージが共有されなければなりません。そのための羅針盤として日韓共同宣言は20年の時を経てなお、私たちに行くべき方向を示してくれているのではないでしょうか。(U)

対米「新通商交渉開始」で実を取った安倍氏

「自由貿易の旗手」としての日本の役割とは貿易不均衡の是正問題に焦点が当たっていた26日の日米首脳会談で、両国は新たな通商交渉の開始で合意しました。会談後に発表された共同声明によると、合意されたのは以下の3点です。  ・国内での調整をへて、日米物品貿易協定(TAG)締結に向け、農産品などの関税を含む2国間交渉の開始する  ・米国が検討する自動車などの関税引き上げ措置は交渉中には発動しない  ・日本の農林水産品は、環太平洋連携協定(TPP)などの過去の経済連携協定水準を上回る関税の引き下げはしない今回の合意について、結局は「先送り」「時間稼ぎ」と指摘する声があるのは事実です。ただ、韓国が米韓FTAの再交渉に応じたものの自動車の追加関税を回避する成果が得られなかったことや、カナダがNAFTAの対米再交渉に応じない姿勢を貫いたことで、関係を悪化させている状況などを考えれば、安倍外交は一定の評価を得て良いのではないかと思います。トランプ氏は中間選挙を控えて、日本に圧力を加えたという「事実」を得ました。また、TPP加盟を主張する日本に対し、TAGという形でFTAへと広がる可能性のあるテーブルに着かせたと主張できます。一方、日本は実を取ったかっこうです。最大の脅威である自動車関税を一時的に回避し、TPPの水準に農産物の関税を押さえ、投資・サービス分野の開放はしないということで話をつけたことになります。米国のTPP復帰を主張しFTA交渉は避けたいとして来た日本政府にとって、FTA交渉を受け入れた訳ではないと主張できるTAG交渉入りは妙手といえるでしょう。ただ、自動車問題が日本の喉に刺さったトゲであることは確かです。ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表も26日の首脳会談後、記者団に対し、日米交渉のキーエリアは自動車であると認めています。今回の合意で、自動車輸出への25%関税の実行はいったん回避されることになりますが、日本政府関係者からは「どこかの時点で、米国から押し込まれるリスクを抱えることになった」との声もあがっており、今後も難しい対応を迫られそうです。問題はその先です。安倍首相が国連演説で宣言したように、日本には自由貿易を守る旗手となる責任があります。米国とうまくつきあいながら多国間主義にのっとったリーダーシップが求められています。グローバル経済の“いいとこ取り”で国家資本主義を突き進む中国は、当面、アジアと世界の安全保障上の脅威であり続けるでしょう。北朝鮮をめぐる情勢も動くなか、日本は米国、韓国をはじめ多国間による解決に導く貢献をすべきです。(W)

米朝「仲介者」として真価問われる文大統領

~第3回南北首脳会談で金委員長に大幅な譲歩迫る?~今回は、来週18日から開催される第3回南北首脳会談の行方を占いたいと思います。ご存知のように、現在、核を巡って米朝関係が停滞しています。実効性のある非核化に向け、核開発の全容把握が欠かせないとする米国と、休戦状態にある朝鮮戦争の終戦宣言を優先すべきだと主張する北朝鮮との間には隔たりが大きく、交渉は入口で行き詰まってしまった状態です。通常、非核化のプロセスは「凍結→申告→査察→検証→破棄」の順番になるわけですが、現段階では、その最初のステップである凍結が終わったという認識です。それ以降のプロセスとして、米国側の「申告・査察→終戦宣言」と、北朝鮮側の「終戦宣言→申告・査察」という優先順位を巡って溝が埋まらないというのが今の状況であるわけです。ですから来週の南北首脳会談で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は金正恩(キム・ジョンウン)委員長に対し、非核化に向けた「大胆で予想を超えた譲歩」を求めるはずです。そして、その内容を持って、今度はトランプ大統領にも大胆な譲歩を求め、自身の公約である「終戦宣言の年内実現」に向けて弾みをつけたいところでしょう。筆者の予想は、今回の文氏の訪朝をきっかけに、米朝関係や朝鮮半島情勢は一気に進んでいくというものです。理由をいくつか上げますと、何よりも文氏と正恩氏との間には信頼関係があります。聞くところによると、文氏は正恩氏のことを「彼は国のトップに立って以来、約束した内容をすべて実行している」と言い、正恩氏は、文氏の政権初期の段階で信頼関係を築けたことをとても喜んでいるといいます。次に、「終戦宣言と在韓米軍の動向とは全く関係がない」という正恩氏の発言です。これを額面通り受け取るかどうかは賛否が分かれるところですが、少なくとも文政権の中枢は正恩氏の言葉をそのごとく捉えているようです。実際、終戦宣言をしたからと言って、それがすぐに在韓米軍の撤退につながることは万が一にもありえません。また、先日、ロシア・ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムでは、中国の習近平主席が「終戦宣言は米朝間の問題」とも発言しています。平和協定に全く関わらないというわけではないのでしょうが、この発言も文氏にとって追い風となっています。課題があるとすれば、政権と官僚の対立でしょう。官僚から政権トップへの「ボトムアップ型」が従来の外交プロセスですが、現在の米朝は完全にトップダウンという仕組みになっています。心配なのは、トランプ氏と正恩氏がトップ同士で決定した内容を官僚が履行できない(しない)という状況が生じた場合です。いずれにせよ、文氏と正恩氏、トランプ氏との間で信頼関係さえできれば、正恩氏の言葉のごとく「核が必要なくなる」という状況に発展する可能性が低くないと思われます。今の「トランプ・正恩・文」の関係が、核問題を解決できる千載一遇のチャンスかもしれません。そのカギを握る文氏の来週の訪朝から目が離せません。(H=ソウル在住)

「日米に溝」大手メディアの世論誘導に注意

トランプ氏「真珠湾」発言と日朝極秘会談報道の裏側日米政府は安倍首相が自民党総裁選で3選された場合、トランプ米大統領との首脳会談を9月25日に米国で行う方向で最終調整に入ったようです。北朝鮮や日米通商問題について協議する見通しです。一方、メディアからは「日米蜜月」に疑問を呈する論調も目立ち始めました。直近では、米ワシントン・ポスト紙(電子版)が8月28日、6月の日米首脳会談で、トランプ氏が安倍氏に対し「私は真珠湾を忘れない」と述べた上で、対日貿易赤字に強い不満を表明したと報じました。また、同じポスト紙は米高官の情報として、日本と北朝鮮が今年7月、ベトナムで米国に知らせずに極秘裏に会談を進めたと報じました。日本側からは情報機関である内閣情報調査室トップ、北村滋内閣情報官が、北朝鮮側からは金聖恵(キム・ソンヘ)統一戦線策略室長がそれぞれ参加したと伝え、これに対し米側が不快感を示したと書いています。日本の時事通信や韓国の中央日報などもポスト紙を引用する形で報道し、日米関係悪化を匂わせています。しかし、本当に日米関係は悪化しているのでしょうか。私たちは、こうしたメディアが今頃になって6月の会談を持ち出し、しかも「真珠湾」などの単語を強調して報じている点に注意を払う必要があると思います。さらに、直接関係のない7月の極秘会談をこれにつなげて報道する意図は何でしょうか。ご存知のようにワシントン・ポストは米国を代表するリベラル系新聞で、事あるごとにトランプ政権と対立してきました。反トランプと言われる巨大企業アマゾンのCEO、ジェフ・ベゾス氏が同紙のオーナーであり、トランプ氏も「ベゾスがアマゾンのロビー活動拠点としてワシントン・ポストを利用している」と非難しています。こうした対立がある一方で、トランプ氏のツイッターなどの発言をみても、今のところ「真珠湾」発言や日朝極秘会談に対する言及や批判的なコメントはありません。今回の件では、むしろメディア側が「真珠湾」「不快感」などの感情的なワードを、発した主体や経緯を曖昧にしたまま報道している点に疑問を抱かざるを得ません。メディアが「日米関係に溝をつくる」という意図を持って情報操作をしているとすれば、これは大きく国益に反する行為であり、安全保障上の大問題です。こうした報道にそそのかされて両国関係にマイナス感情が醸成されることのないよう注意しなければなりません。すでに今回の報道を受け、一部メディアでは「官邸は『真珠湾』発言の否定に躍起」といった報道も出ているようですが、事実であるなら困ったことです。読者である私たちも、しっかりとしたメディアリテラシーを身につけ、冷静な目で情勢を判断したいものです。(Q)

なぜ日本では修士・博士が増えないのか

待遇改善の前に社会全体で考えるべきこと日本の科学技術力低下に歯止めがかからない現状が明らかになっています。文部科学省の科学技術・学術政策研究所が、22日に発表した国内外の科学技術動向の調査報告によると、人口当たりの修士・博士号取得者が近年、主要国で日本だけ減ったことが判明しました。また、基礎研究を担う大学に行き渡る研究費が2016年にドイツに初めて抜かれて世界4番目に落ちました。同所がまとめた「科学技術指標2018」は、学術論文の動向などを欧米や中国など主要国と比較し、日本の国際的な立ち位置が確認できるものです。その中で、日米英独仏中韓の7カ国で修士・博士号の人口100万人当たり取得者数を、2014〜17年度と08年度で比べた結果、日本だけが修士・博士号取得者は横ばい、または減少していました。大学部門の研究費は、日本は16年で2.08兆円だったのに対し、独は2.17兆円となり、比較可能な1981年以降で初めて抜かれました(トップは米6.77兆円、中国3.09兆円)。予算面でも人員面でも見通しが暗い日本の科学技術力。その原因について、これまでは研究者の働き方や給与面の待遇をはじめ、文科省などが強いる恣意的な選択と集中の結果、大学の安定的な財源が低下し、研究者のポスト削減が著しい点が指摘されてきました。しかし、そもそも多くの人が博士号や修士号を取得する社会になるためには、研究者の待遇改善とともに、それが明らかに社会にとって有益であると認識される必要があるでしょう。社会の課題と向き合い、その解決を模索する過程で、ハイレベルな研究者の知見がより国や地方行政の政策施策に生かされやすい仕組みを作る必要があると思います。学問や研究成果をめぐるこうした本質的な問いかけは、けっして大学や研究機関だけに投げかけられるべきではありません。今日の科学技術力低下の問題は、世の中の変化に合わせて、社会が公教育や研究者をどう扱うかについて考えてこなかった結果とも言えるからです。修士・博士卒の人材が専門性を生かして社会で活躍するには、その下支えとなる文化が不可欠です。とかく実務(現場)経験や人間関係が重視される日本社会で、より高度な専門性や体系的なアプローチが評価される文化です。人工知能やロボット、宇宙工学にエネルギー――。例えば、こうした最先端分野の技術力は経済・ビジネスの分野だけで生かされるのではありません。欧米、中ロなど各国では、その研究結果の多くが軍事分野への転用されるか、そもそも軍事技術から生まれている事実からすれば、科学技術力の低下はすなわち国の安全保障に関わる問題とも言えます。学問の軍事利用は日本ではタブー視されますが、だからといって両者の関係性から目を背けてはいられないのです。日本の国力を底上げするためにも、もっと社会とアカデミアの往き来が活発になることを期待します。(M)

ボランティアの“経験値”をどう共有し生かしていくべきか

不明2歳児「奇跡の救出劇」が示唆した可能性良かったー! 山口県周防大島町で、家族で帰省中に12日から行方不明になっていた藤本理稀ちゃん(2)が15日午前6時半ごろ見つかったとの一報に、多くの人が胸をなでおろしたことと思います。行方不明になってから68時間が経過していたにもかかわらず、軽い脱水症状だけで健康状態に大きな問題がなかったのも奇跡と言えるでしょう。安堵の思いとともにもう一つ、私たちの胸を打ったのは、理稀ちゃんを発見、保護した78歳のボランティア男性の生き方でした。尾畠春夫さんは理稀ちゃん行方不明の報道を見て、14日午後に大分県日出町から現地に駆けつけ、15日早朝から捜索にあたり30分足らずで発見に至りました。発見後、メディアの取材に対し「小さな命が助かったと思った。本当にうれしかった。助かってよかった。ただそれだけ」と涙ながらに語る姿に、無私の心で人の役に立ちたいと願う尾畠さんの人柄がにじみ出ていました。もともとは大分県内で鮮魚店を営んでいた尾畠さんは65歳で仕事を辞め、「たくさんの人たちの優しさや感謝を受けて育ったこの世の中に何か恩返しをしたい」とボランティアを選びました。好きな登山を生かして山道の整備をしたり、被災地ボランティアとして、2011年の東日本大震災では、宮城県南三陸町で遺品探しなどの活動をしました。さらに、最近では西日本豪雨の際、広島・呉市でも泥かきを手伝ったといいます。78歳でこの体力と行動力。ただただ頭が下がる思いです。こうしたボランティアは二次被害の可能性もあることから、誰でもできることではありません。一方で、今回の尾畠さんの姿から私たちは多くのことを考えさせられます。その一つが、ボランティアとしての尾畠さんの経験値と現場力です。「子供は上に上がる」との経験と勘から、山の上のほうを捜索エリアに定め、見事に探し出しました。尾畠さんは、2016年末に大分県で行方不明になった女児の捜索ボランティアにも参加し、その時の経験が今回の捜索で生かされたことも明らかにしています。ただ活動をするのではなく、「仮説から検証」を繰り返していくことで経験値が積み上げられていったのでしょう。あらためて経験あるボランティアの力の大きさを感じさせました。今回のような捜索活動に限らず、充実した装備や機動力をもつ消防、警察、救急などの救助部隊と、しっかりとした知識や経験値を有するボランティアがうまく連携することで大きな成果を上げる可能性が高まると思われます。こうした経験値は、例えばAIのような高度な技術をもってしても容易に得られるものではありません。だからこそ昨今、自然災害が増えるなかでボランティア活動が進む中で、こうした経験値を共有する効果的な仕組みが広がることを期待したいと思います。人の役に立ちたいという思いと行動力、そして経験値を併せもったボランティアの存在は、今回のような事例に限らず、地域課題の解決や地域活性化においても、今後ますます必要とされていくでしょう。(W)

産業も軍事も主戦場は宇宙に?

米政府が「宇宙軍」創設計画を発表皆さんは「宇宙軍」と聞いて何を思い浮かべますか。宇宙人や地球外生命体の攻撃から地球を守る防衛隊? かつてSFの世界の中にしかなかった組織の創設が現実に近づいているようです。米国トランプ政権は9日、陸海空軍と海兵隊、沿岸警備隊に次ぐ6番目の軍として「宇宙軍」を2020年までに創設する計画を発表しました。トランプ大統領が今年6月に国防総省に指示していたものですが、新軍の創設には米議会の承認が必要で、議会や軍では反対論もあり曲折も予想されています。ペンス副大統領は国防総省での演説で、「果てしなく広がる宇宙で台頭する脅威に立ち向かう」ことになると述べたということですが、宇宙空間を陸海空に続く「新たな戦場」と位置付けているようです。実際、ロシアではすでに2001年にロシア連邦軍のもとに「宇宙軍」を置き、2015年には空軍と統合され「航空宇宙軍」を編成しています。中国も月面基地計画を独自に進め、宇宙ステーションの稼働を考えています。米国版「宇宙軍」の任務は、こうした中ロの動きを念頭に、まずは衛星軌道上にあるGPS衛星の監視がメインとなりそうですが、中長期的にはICBMを宇宙空間で迎撃するまで進みそうです。米国の今回の発表で思い出すのが、1980年代のレーガン政権下で進められた「戦略防衛構想(SDI=Strategic Defense Initiative)」、通称「スターウォーズ計画」です。敵の攻撃を宇宙空間で止めるというもので、ソ連崩壊につながったと言われています。宇宙の領空争いが懸念されるなか、めまぐるしい技術の進化に伴い宇宙の軍事利用の必要性が高まる流れは止められないでしょう。日本はこのような世界の趨勢の中でどのような進路を取るべきなのでしょうか。現代の航空産業もインターネットも、もともとは軍事技術の産物でした。軍事、産業両面で中国の脅威が迫る中、「宇宙軍」のニュースはもはやSFの話ではありません。(W)

米国との貿易戦争で中国経済が急減速

株式時価総額で世界第2位から陥落 日本を下回るトランプ政権が仕掛けた貿易摩擦、特に米中貿易戦争が市場を揺るがしています。メインターゲットにされた中国は人民元の下落と株価下落の悪循環が始まりました。米国は中国に対し、貿易赤字削減に向けた強硬姿勢を崩さない構えです。中国では企業が過剰な債務を抱えており、このまま貿易戦争で景気が後退すれば、企業業績悪化で不良債権が積み上がり、金融不安が一気に広まりかねない状況です。一方、打撃は世界経済に跳ね返り、米国も自らの首を絞める事態に陥る可能性もあります。今回、米国が口火を切った米中摩擦の要因には次の3点が考えられます。第一に、すでに述べた貿易赤字の削減です。トランプ氏が一貫して重視してきたのが貿易赤字の削減で、その方法は二国間交渉です。第二に、ハイテク分野における米中の「覇権争い」です。米国は経済規模だけでなく、ITや人工知能(AI)など最先端技術で各国をリードしてきました。これに対し、中国政府は2015年、「中国製造2025」と名付けた産業政策を掲げ、半導体、電気自動車(EV)など主要分野で世界トップに立つ目標を設定しました。政府の圧倒的な資金量と全面的な支援を背景に、この分野で急速に力を付けつつあります。第三に、中間選挙です。トランプ氏は今年11月に行われる中間選挙に向けた票固めとして、使えるものは全て使うと考えているのでしょう。中国の4〜6月期国内総生産(GDP)は、底堅い民需に支えられ6%台の成長率を維持していますが、米国との貿易摩擦が景気腰折れリスクとして重くのしかかっています。株式市場にも動揺が広がっています。3日、時価総額で中国が世界2位の座を日本に明け渡しました。米ブルームバーグ・ニュースによる3日の日中取引データによると、株式時価総額で中国は6兆900億ドル(約680兆円)、日本は6兆1700億ドル(約690兆円)。中国は2014年に世界2位となって以来初めて、日本を下回りました。中国経済の減速懸念が強まる中で、習近平指導部が安定化策に転じました。昨年来、当局は目先の景気よりも過剰債務問題の解消といった構造改革を重視する政策をとってきましたが、経済の変調を前に、抑制していたインフラ投資の積極化などにより景気を下支えする方向にかじを切りました。習指導部の求心力低下も噂される中で景気の安定は最重要課題ですが、インフラ投資の過熱はさらなる債務拡大につながりかねません。米国との貿易戦争も中国政府だけで対応することは困難です。GDP世界2位の中国経済が腰折れすれば、貿易量が減る米国や欧州、日本の経済鈍化につながります。米中の動きは経済的合理性よりも政治的思惑が強く、米中間選挙後は収束すると指摘する専門家もいます。しかし、それ以前に想定以上の悪影響が世界経済に広がる恐れもあります。(K)

杉田水脈議員の「炎上記事」を読む

自民党・杉田水脈衆議院議員が『新潮45』で発表した記事が“炎上”しています。問題とされたのは、LGBTは「生産性がない」ため税金投入する必要はない、と述べた箇所です。「子供をつくらない」=「生産性がない」との表現は、不妊に悩む夫婦などの心情も考えれば不用意だったと言わざるを得ません。同議員の事務所にはゲイを名乗る人間から「お前を殺してやる!」とのメールが寄せられたほか、野党からも「ナチズムの思想による抹殺の歴史に通底」(有田芳生・立憲民主党参議院議員)、「無知、無理解、悪意に満ちた偏見で悪質な発言」(小池晃・共産党書記局長)などと一斉に批判の声が上がっています。一方で、ここぞと批判する野党勢力にも大きな「ブーメラン」が返ってきています。過去に立憲民主党顧問の菅直人元首相が、出生率が低い東京、愛知について「生産性が低い」と発言していたことが指摘されたのです。では、杉田議員の主張の全てが議員辞職を求められたり、殺害予告を受けるほど悪質なものだったのでしょうか。実際に「生産性がない」との記述を省いて杉田議員の記事を見ると、以下のように、LGBT問題に対して耳を傾けるべき指摘も多く含まれています。①「日本と欧米は違う」杉田議員の指摘のとおり、同性愛が犯罪とされたり、強制的に治療の対象となってきた欧米と違い、日本では歴史的にそこまで深刻なLGBT差別はありませんでした。彼女自身もLGBTへの差別感情がないことは明確にしています。実際に港区が実施したLGBTへのアンケートでは、LGBTであることが原因でハラスメントを受けた割合は1割前後で、女性のセクハラ経験率5割と比べても非常に低い水準となっています。いじめも同様で、一般的ないじめ経験率3〜4割と比較して、LGBTを理由にいじめられた経験をもつ人は約1割。一方、特に困ったことがないと答えたLGBTが約7割に達しています。つまり、いじめやハラスメント全般を減らすことが重要なのであり、LGBTだけに特化して「生きづらい」状況があるわけではありません。朝日新聞のように年間260件も報道するほど、突出した社会問題であるかどうかは疑問です。ちなみに、日本がすでにLGBTに十分寛容な社会であるとの認識は同性愛者からも示されています。大阪総領事を務めたゲイのパトリック・J・リネハン氏は帰国時のインタビューで次のように述べています。「日本は皆さんが思っている以上に寛容な国。米国のように、LGBTの存在を批判する政党や集団もない。私たちに悪口を言ったり、攻撃する人は一人もいませんでした」(毎日新聞[online]2014年7月27日)②「LGBTカップルへの税金投入は疑問」「生産性」という言葉で誤解を招いた部分ですが、本来、婚姻制度で夫婦に特別な保護を与えた理由に、社会の安定と持続性にかかわる「次世代育成」があったことは事実です。子供を設ける可能性がある男女の結びつきには安定性が求められるため、同居、相互扶助を義務付け、原則として離婚を禁止する代わりに、税制などで特別な保護を与えています。たとえ子供をもたない夫婦であっても、男女の性規範を確立するうえでは同様の意義があります。一方、同性愛カップルは、あくまでも私的な結びつきであり、公的に保護する理由はありません。税収や行政の人員に限りがある以上、公益性が低い同性カップルに対する特別の支援に疑問を持つのは当然のことです。これは人権や偏見に関わる議論ではなく、純粋に政策の妥当性に関する議論です。③「性的志向(LGB)と性自認(T)を区別すべき」これも重要な指摘です。自分の性別に違和感をもつ人と同性愛者では、抱える課題も必要とされる施策も全く異なります。また、杉田議員は指摘していませんが、Tの当事者の中にも様々なレベルがあります。深刻な性同一性障害の子供たちの事例で同情を引きながら、単なる性的逸脱行為まで正当化する風潮には警鐘を鳴らすべきです。④「メディア報道による子供への悪影響」これは最も議論されるべき部分です。現実に米国では、若者のあいだで同性愛者が急増しています。思春期には、女子高など同性の先輩を疑似恋愛の対象とすることがありますが、それは本来、一時的な感情にすぎません。しかし、ドラマなどで同性愛が当たり前のように描かれると、その影響を受けて自分も同性愛者だと思い込み、実際に同性と性関係を結ぶ若者が増えてしまうかもしれません。それは本人の人生を考えた時、必ずしも好ましいことではないでしょう。また、子供の「性別違和」の7〜9割は大人になると解消される一時的な思い込みだとわかっていますが、メディアでの過剰な扱いによって、そうした混乱に陥る子供を増やす危険性すらあるのです。⑤「男女の性の区別をあいまいにするリスク」私たちの社会は男女の性による区別を前提として成り立っています。それ自体、性倫理や犯罪防止の観点から見ても非常に重要なことですが、一部のLGBT人権派は「性別は自分で選ぶことができる」と主張します。医学的に男女の性別を確定できない状態で生まれてくる人や性別に違和感を持つ人が存在するのは確かですが、それは極めて少数であり、やはり性別は「男女」が基本です。マイノリティへの配慮は必要だとしても、大多数の人にとって必要な社会制度全体の変更を求めるのは明らかに行き過ぎです。杉田議員が表明した以上のような違和感や懸念について、全てではないにしても共感する人は少なくないはずです。LGBTに対する差別感情がないことを明確にしつつも、建設的な議論を重ねる必要を感じます。(O)