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記事一覧(79)

「異常気象」の常態化 「安全な所などない」との自覚を

このたびの「平成30年7月豪雨」により、被災された皆様には謹んでお見舞いを申し上げるとともに、今なお避難されている皆様の安全と、一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。未曾有の西日本豪雨、ハード面の対策だけでは限界警察庁はきょう13日、今回の西日本豪雨による被災地での死者が、午前4時45分時点で204人に上ったと発表しました。避難所生活も長期化が指摘されており、お年寄が板張りの床に横になっている状況です。豪雨の終息の一方で酷暑が地域を襲っており、関連死が心配です。「経験したことのないような大雨で、重大な危険が差し迫った異常事態です。市町村から発令された避難情報に直ちに従うなど、適切な行動をとってください」。今月6日、北部九州3県や広島県、岡山県などに「大雨特別警報」が発表されて以降、合わせて11の府と県に特別警報が発令されました。気象庁のまとめによると、今回の西日本豪雨で観測した72時間の雨量が119地点で過去最高を記録しました。全国に約1300ある観測地点の約1割にあたり、過去最大となります。特別警報は2011年の紀伊半島豪雨などを教訓に、13年8月から運用がスタート。1991年以降の観測データを基に「50年に1度」の異常雨量などの値を定め、それを超えれば発表されています。この5年間、日本全国で計10回発表されており、福岡県では昨年の九州豪雨に続いて2年連続で発表されました。もはや「異常気象」の常態化と呼べる状況です。現在も、気象庁や日本気象協会などの専門機関や専門家が、甚大な被害をもたらした豪雨の詳しい分析を進めていますが、温暖化に伴う異常気象は、明らかに新たな段階に入ったと言っていいでしょう。特別警報では「過去に経験したことがない」という表現が付けられますが、「経験したことがない」とは過去の想定を超えた対策が必要であることを意味します。今回の豪雨では、防災や治水の概念を根底から変えてしまいました。今後、治水技術や防災技術、救出技術のいっそうの向上など、あらゆる災害対策を強化しなければなりません。一方で、豪雨災害が起きるたびに、堤防や砂防ダムなどインフラの整備が強化されますが、異常気象が続く今、そうしたハード面の対策にも限界があります。私たちが肝に銘じるべきは、今後いかなる場所においてもこのような自体が起きうるという意識とその備えです。今回、浸水した場所は河川に挟まれた場所など、もともと地形的に災害リスクが高い場所でした。また、高齢者を中心に、逃げ遅れも原因の一つと考えられています。「ここは大丈夫」「自分は大丈夫」という意識を改め、ふだんから自宅周辺の地形や避難所を確かめ、万一の行動を想定し、警報などに敏感に反応することが大切です。災害列島の恐ろしさをかみしめながら、高齢化や過疎化の問題とも向き合いながら、あらゆる想定を見直す時がきています。(S)

世界の難民・避難民が過去最多 国際社会に打つ手はあるか

6月20日国連「世界難民の日」に考える6月20日は国連「世界難民の日」でした。欧米を中心に大きなイシューとなっている「難民問題」。海外ニュースで、紛争地を逃れてきたシリアやロヒンギャの人々とその家族の表情を目にする私たち日本人の多くは、その悲惨さに同情を禁じ得ない一方、どこか遠くの場所で起こっている不幸な出来事として感じていることも、また事実ではないでしょうか。毎年、国連の難民高等弁務官事務所(UNHCR)はこの「世界難民の日」に合わせて、「グローバル・トレンズ・レポート」という報告書を出しています。19日発表の同報告書によると、戦争や暴力行為、迫害によって避難を余儀なくされた人の数が、昨年末の避難民総数は前年よりも300万人近く増え、過去最多の6850万人に達しました。10年前の4270万人に比べ、5割増加したといいます。難民・避難民の増加の大きな要因の1つに、紛争の増加があります。紛争や内戦には迫害や虐殺が伴うことが多いからです。18日に赤十字国際委員会(ICRC)が発表した報告書「戦争における抑制の根源」(Roots of Restraint in War)最新版によると、今世紀に入って世界の内戦の数が2倍以上に増加したといいます。ICRCによると、2001年から2016年の間で「非国際的武力紛争」の件数は30から70以上に増加しているといいます。紛争で問題を解決しようとする動きが加速するなか、政府が国内の紛争や騒乱を制御できず、ガバナンスと治安が崩壊する国や地域に対し、いまや国連や米欧が主導する国際秩序、安全保障の仕組みが機能しなくなりつつあります。国連は2005年の世界サミットで、自国民の保護という国家の基本的な義務を果たす能力や意思のない国家に対し、その国の人々について「保護する責任」を負うとした成果文書を採択しました。しかしシリアの現状に代表されるように、国連もその役割を十分に果たせていません。国連総会は2016年9月、「難民と移民に関する国連サミット」を開きました。難民問題を扱う初の首脳会議でした。ただ、難民支援の資金負担をはじめとする人道面の支援強化と同時に、内戦の終結に向けた外交努力など、状況を抜本的に改善させるための国際協力が話し合われたものの、問題の規模からすると十分な成果とは言えませんでした同会議には安倍首相も出席し、人道援助や難民受け入れ国への支援などで28億ドル(約2800億円)規模の資金を拠出することや、紛争の影響を受けた難民らへの教育支援や職業訓練実施を表明した。5年間で最大150人のシリア人留学生の受け入れも約束しました。ただ、これも国際的には「お金は出すが難民受け入れに消極的な国」という印象になったようです。難民問題の解決は結局のところ、紛争の解決とともに、「難民を受け入れ、一定期間保護したのち出身国への自主的な帰還を促す」「受け入れ、定住・永住させる」「受け入れ、別の国での再定住を目指す」に限られますが、これに対し受け入れ側の体制に限界が来ているのが実情です。世界的な政治動向も難民にとって逆風と言えます。欧州の一部の国では難民や移民の受け入れに反対する政党が支持を伸ばしています。イタリアの新政権は今月、地中海で救助された難民の受け入れを拒否しました。経済負担や安全保障上の問題からです。「人間の安全保障」と「国の安全保障」の両立を図ることは容易ではありません。しかし、放っていても危機的状況はますます深刻化するだけです。各国の政治的意志と協調の姿勢が求められています。(S)

米朝会談の背後で影響力高める中国に警戒を

シンガポールで12日に開催された米朝首脳会談。北朝鮮の最高指導者と現職の米国大統領が初めて対面したという意味で、紛れもなく「歴史的」だったと言えます。しかし、成果の判定はそう簡単ではありません。成果として言えることは、軍事衝突が起きるリスクが短期的にはほぼなくなったことでしょう。わずか10カ月前には、北朝鮮が「米国は制裁の何千倍もの報復に遭うだろう」と脅迫し、米国が「これまで世界が見たこともないような炎と怒りに遭遇することになる」と応じたことを考えれば、朝鮮半島の完全なる非核化が米朝直接交渉を中心とした外交交渉で進められる方針に舵を切ったことは評価すべきです。開催地シンガポールや韓国のメディアなどは、こうした観点から概ね会談を評価しています。「会談は第一歩でゴールではない。この会談で結論を求めるのは時期尚早」というわけです。一方で、欧米メディアの多くは否定的な論調です。非核化について目新しい成果や具体的な成果が何もなく、ただ単に、両首脳が切望するマスコミの注目を与えただけだという批判です。合意文書は総花的な目標を箇条書きにした内容の薄いもので、その実行に対する疑念の声も上がっています。北朝鮮にとっては、会談を通じて体制保証、人権問題の合意文書への不明記、CVID(完全で検証可能かつ不可逆的な非核化)も同じく不明記、米韓合同軍事演習の中止、国連制裁緩和など、多くの成果を手に入れたといえます。ここで注目すべきは、トランプ氏が米韓演習の中止を正恩氏に言明したことです。首脳会談前にトランプ氏が文在寅(ムン・ジェイン)大統領と電話で会談していたにもかかわらず、青瓦台(大統領府)はこの発表に不意を突かれた様子がうかがえます。文大統領の政策ブレーン、文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保特別補佐官は15日、「廃止ではなく、交渉が続くかぎり中断するということなら問題はない」と語り、平静を装いましたが、在韓米軍の縮小など、韓国の安保に決定的な影響を与える重要事案を米朝が頭越しに決めてしまうことへは警戒感が広がっています。交渉の渦中で同盟国である韓国との調整はおろか、コミュニケーションすらとれていない状態は、高度で複雑な外交交渉の舞台では相手に付け入る隙を与えてしまいかねません。日米韓の情報共有を強化することで対北朝鮮の交渉力を高めなければなりません。米朝会談と今後の交渉について、背後で影響力を強める中国の動きも見逃してはいけません。北朝鮮の核問題が国際社会の注目を集め続けるなか、強い反発を受けることなく、着々と「南シナ海の軍事化」を進めてきた中国。軍事専門家の多くは「南シナ海の軍事化」が仕上げ段階に入っているとみています。正恩氏は、習近平主席の支援や助言を求める形で、米朝会談を挟んで3度にわたり訪中。中国の影響力を印象づけました。また、在韓米軍の縮小ということになれば、今後、中国の韓国に対する影響力が高まり、朝鮮半島における中国のプレゼンスは急速に高まるでしょう。さらに、米朝、南北の両首脳会談の結果、北朝鮮のミサイルが韓国に向けて発射される可能性が減るとなれば、THAAD(高高度迎撃ミサイルシステム)を韓国に配備する理由がなくなりかねません。これも中国にとって大歓迎です。こうした懸念を日米韓がしっかりと共有し対応していくことは、東アジアの安全保障にとって切迫した課題といえるでしょう。(T)

官民のノウハウ還流が社会課題解決を促すきっかけに

国家公務員の副業、政府が容認へ政府はこのほど、成長戦略「未来投資戦略2018」に国家公務員の副業についての方向性を盛り込みました。具体的には、これまで原則禁止されていた国家公務員の副業を、特定非営利活動(NPO)法人など公益性の高い仕事に限って認める方針に改めることになりました。報酬を受け取ることも認められます。民間企業では人材流動化の視点から副業を容認する動きが広がっており、「働き方改革」を推進する政府としてもこれを後押ししたい考えです。国家公務員法に基づいた「営利企業の役員就任」や「自営業の経営」は引き続き禁止されますが、社会的な人手不足の緩和につながることはもちろん、国家公務員の持つ政策・法律の知見が民間でも活用されることになります。特に、人材不足によって課題解決のための施策が滞りがちな地域の活性化にもつながると期待されます。また、政府としても、公文書の書き換え問題などで“霞が関の論理”が国民の批判を受けるなか、役所の狭い世界に留まっていた公務員が社会の現場へと足を運んで汗をかく経験を積むことで、より現実に即した新しい発想の政策立案を期待できます。地方自治体では、神戸市が昨年4月、「地域貢献応援制度」と銘打ち、職務外に報酬を得て地域活動に従事することを認める通達を出しました。同制度によって副業を認められた職員は現在、それぞれNPO法人と地域自治会で活動しているといいます。今回の政府方針については、公務員が関わるNPOが政府から補助金を得るのに有利に働いたり、実質的な天下りにつながらないよう注意は必要です。しかし、社会課題が多様化、複雑化するなか、官民がそれぞれ持つ専門的なノウハウが還流するきっかけができる点は高く評価すべきでしょう。今後長い目で見て、社会全体の生産性向上や人材の有効活用につながればと思います。(S)

5歳の女の子の悲劇を繰り返さないために

家庭教育支援法の早期成立を願う目黒区碑文谷で虐待死した5歳の女の子(船戸結愛ちゃん)の事件は、親に許しを請うひらがなの手紙の悲痛さを伴って日本中に衝撃を与えました。様々な兆候が把握され、児童相談所による訪問も実施されていましたが、結果的に悲劇を防ぐことはできませんでした。今回の事件を受けて、「親の権利」を制限してでも、行政・司法が介入できる仕組みを整えるべきだとの指摘も出てきました。そもそも、絶対的弱者である子供を産み育てる、つまり「親になる」ことには愛情と献身をもって適切な養育を行う義務と責任が伴います。しかし、保育士、教師など子供の成育に関わる職業に、一定の育成過程や実習、資格試験が存在する一方、「親になる」ことには、特段、義務付けられた学習機会や試験が存在しません。また、親になってからも、適切な養育を行っているかどうか、外部から把握する方法は限られています。深刻な虐待が推定される場合に、何らかの強制力を持った対処が必要だという意見が出てくるのも当然だと言えるでしょう。ただし、警察と児童相談所との連携など深刻な事例への対応を強化すべきことはもちろんですが、そもそも虐待が起こらないように「親を育てる」仕組みづくりも必要ではないでしょうか。その意味で、現在、各地の自治体で制定が進んでいる「家庭教育支援条例」の取り組みには、非常に大きな意義があると言えます。この条例は、第一次安倍内閣で成立した改正教育基本法(2006年)で「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」(第十条)と家庭教育の重要性が明記されたことを根拠としています。全国に先駆けて同条例を制定した熊本県では、それまでの縦割り行政の弊害が取り払われ、教育庁、警察本部、健康福祉課など5部局17課が連携して家庭教育支援を行うようになりました。また、子育てをする保護者に対しては「親の学び」プログラムを、今後、親になる中高生に対しては保育体験など「親になるための学び」プログラムを実施しています。ちなみに、同県の「親の学び」プログラムは17年度だけで計2197回開催され、受講者は7万8000人にのぼっています。現在、8県5市に拡大している「家庭教育支援条例」の取り組みに対して、共産党などは「行政による家庭への介入だ」などと批判していますが、これはあまりにも的外れです。なぜなら、地域の繋がりが弱まり、三世代同居も減った現代では、第三者がまったく介入できない「密室化した子育て」こそが問題になっているからです。子供の養育環境が悪化する中、家庭教育支援の充実には高いニーズがあります。同条例を制定した静岡県では、事前に行ったアンケートで7割の親が子育てに悩みや不安を持ち、半数以上が「先生以外に相談や意見交換の場がほしい」と答えていました。実際に、三島市が同条例のもとで実施したプログラムでは、参加者の98%が肯定的な評価を下しています。国会でも、議員立法で「家庭教育支援法」の提出を目指す動きが出てきました。結愛ちゃんのような悲劇を繰り返さないためにも、早期の成立が望まれます。(O)

米朝会談への期待感から与党優位の情勢

韓国・文政権発足1年 “信任”問う統一地方選6月13日投開票の韓国統一地方選の選挙運動が徐々に盛り上がりを見せています。今回は、就任から1年を迎えた文在寅(ムン・ジェイン)政権に対する事実上の信任投票として、中間選挙的な性格が強いのが特徴です。文氏の高い支持率を追い風に、革新系の政権与党「共に民主党」がどれだけ多くの主要首長ポストを得られるかが焦点となります。統一地方選は4年に1度の実施。ソウルなど8大都市の市長と9道(県に相当)知事をはじめ、地方自治体の首長、議員4016人を選出します。現時点では、史上初の米朝首脳会談に対する期待感から、共に民主党の圧勝が予想されています。ソウル市は現職で民主党の朴元淳(パク・ウォンスン)氏に、昨年5月の大統領選にも出馬した保守系野党、「正しい未来党」の安哲秀(アン・チョルス)氏、自由韓国党の金文洙(キム・ムンス)氏が挑む構図です。朴氏が勝てば、史上初の3選。優勢が伝えられる朴氏に向け、安氏と金氏が候補者一本化の可能性を探っていたようですが、現時点では難しいようです。なかでも、医師や起業家など多彩な顔を持ち、コンピューターウイルス対策ソフトを開発して無償で公開するなど「韓国のビル・ゲイツ」とも呼ばれていた安氏にとって、今回は因縁の戦いです。7年前のソウル市長選挙では、当時無名の弁護士だった朴氏について「いい人だから」として、候補を辞退した経緯があるからです。京畿道は、自由韓国党の南景弼(ナム・ギョンピル)現職知事に、城南市長の李在明(イ・ジェミョン)市長が挑みます。李市長といえば、前回の大統領選挙の際、過激な発言で「韓国のトランプ」といわれた人物。ここでも、与党の李氏優勢が伝えられています。万一、与党がソウル市長と京畿道知事を抑えれば、文政権の基盤は盤石なものとなるでしょう。朴氏も李氏も、文氏への忠誠心が熱く、政権運営に大きな助けとなることは間違いありません。日本に例えると、東京都知事と大阪府知事に安倍首相の息のかかった人物が当選する以上の基盤となるような感覚です。苦戦が予想される韓国党は、保守の牙城である大邱市、慶尚北道を死守しなければなりません。その上で、京畿道などほかの保守が強い地域でどれだけ防戦できるかが焦点となります。(H=ソウル在住)

FB問題で注目される社会的責任投資

ミレニアル世代の台頭で急速に変化するお金の「見え方」「使い方」英国の政治コンサルティング会社「ケンブリッジ・アナリティカ」が、フェイスブック(FB)の数千万人に及ぶユーザーデータを不正取得して米大統領選などに利用した疑惑から2カ月半あまり。FBのその後の対応にも批判が集まり、欧米や日本では顧客情報の保護の観点からFBページを削除する企業も出ました。米国議会に召喚された同社のザッカーバーグCEOは、個人データの利用に関し適切な監視を怠ったことや、不正利用を防ぐ十分な対策を講じていなかったことを謝罪しましたが、問題発覚後、2週間ほどでFBの株価は20%近くの急落となり、900億ドル(約9.7兆円)以上の時価総額が失われました。こうした不正問題は、これまで以上に企業の株価に大きな影響を与えるようになっています。要因の一つとされているのが「社会的責任(ESG)」投資の存在感が増しているためです。ESG投資とは、環境(Environmental)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取って、これらに配慮する企業を選んで行う投資のことです。近年、日本でも広がりを見せており、個人投資家向けの投資商品も増えたことで、投資に関心のなかった層からも注目されています。データ流出騒ぎが起きてから、FBは複数の「ESG」評価機関から格付けを下げられ、ESGを投資基準に組み込む世界の機関投資家から敬遠されました。背景には労働人口に占める割合が大きくなったミレニアル世代(※)の意識や消費行動が大きく影響していると言われます。米大手投資会社の調査では、ミレニアル世代はその他の世代に比べ、環境や社会的課題に取り組む企業への投資意欲が倍近く高いとの結果が出ています。音楽、動画、ゲーム、マンガなどさまざまなものが無料で手に入る現代の子供たちを、博報堂生活総合研究所は「タダ・ネイティブ」と名付けました。彼らは「費用も、手間も、労力もかけずに情報やコンテンツが自由に利用できた世代。“タダが当たり前”という感覚の持ち主」(同研究所)で、いわばお金を持たない、使わない世代だといいます。一方で、コト(経験)やトキ(その時間・場所)を重視して、自分の価値観や嗜好にあったイベントや作品、作家を応援するためにはお金をかけたい、と考える世代です。キャッシュレス化から仮想通貨、さらにはベーシックインカムの議論まで、社会の中での「お金の見え方」は急速に変化しています。こうした世代ではスマホの普及などテクノロジーの進歩で、手段としてのお金が多様化し、相対的に価値が低下しており、愛情や共感、信頼などの精神的満足感がお金と同等以上に価値を持つとの指摘もあります。経済システムが、社会全体の持続性と個人の幸福感をともに高めようとする人々を主体として変化していくとすれば、それは望ましいことだと思います。ただ、それが資本主義の次の変化なのかどうかは、まだ議論の余地があります。(S)※ミレニアル世代〜1980年代から2000年初頭までに生まれ、2000年代に成人あるいは社会人になる、現在18歳から35歳くらいまでの人たちを指す。インターネットが普及し、急速にグローバル化が進んだ世界で育った世代。

米国が北朝鮮との首脳会談中止を通告

敵対的言動と小細工で墓穴をほった北朝鮮、面目失った韓国米トランプ大統領が米朝首脳会談の中止を表明したことで、韓国の青瓦台(大統領府)やメディア、研究者らの間で失意が広がっています。筆者もトランプ大統領の発表の直前まで、専門家などから「来月12日に米朝首脳会談はほぼ確実」との意見を聞いていましたので、さすがに驚きました。前回のコラムでは、米朝首脳会談は通常とは違いトップの属人的性格が強いため予測不可能だと書きましたが、それ以上の不測の事態になったと言えます。朝鮮半島を中心に各国の利害が交錯しています。今回の一連の流れではっきりしたことと今後の展望を国別に整理しておきましょう。まずは韓国です。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の狙いはあくまでも戦争回避です。そのためには、制裁より対話を重視。そのプロセスの中で「非核化が実現すればいい」というスタンスでした。今後も、戦争回避に向けて北朝鮮との対話を重視していくと思われます。その一方で、「北朝鮮に非核化の意思があると必要以上の期待を抱かせた」として文大統領が、トランプ大統領から米朝首脳会談中止のスケープゴートにされる恐れも出てきました。会談中止で最も割を食ったのが北朝鮮でしょう。北朝鮮には「米国から体制保証を取り付ける」という意図がありました。4月27日の南北首脳会談まではスムーズにことが運んだのですが、中国という後ろ盾を得て安心してしまったのか、いつもの敵対的な表現が目立ったり、北東部の豊渓里(プンゲリ)にある核実験場の爆破に、当初予定していた専門家を招かなかったりするなど小細工に走りすぎてしまったようです。北朝鮮は会談の実現に向けて、しばらくはおとなしくすると思いきや、さっそく北朝鮮の金桂官(キム・ゲグァン)第1外務次官が首脳会談中止について談話で、「私たちは常におおらかで開かれた心で、米国側に時間と機会を与える用意がある」と相変わらずの「上から目線」ぶり。これでは、会談実現は難しいと言わざるをえません。有利な立場にあるのが米国です。北朝鮮が完全な非核化に応じるまで、圧力と制裁の強化を維持する構えです。「Bad Deal(悪い取引)よりもNo Deal(取引しない)のほうがマシ」とするトランプ氏の立場も国内で支持されるでしょう。一方、日本は慎重な外交姿勢が評価される形になりました。今後しばらくはトランプ氏の制裁路線を支持していけばいい立場です。文氏はトランプ氏の信頼を失ったその一方で、「制裁と圧力を重視したシンゾーはやっぱり正しかった」となるのではないでしょうか。最後に中国です。今回の会談中止を通じて、改めて中国が朝鮮半島の現状維持を望んでいることが明確になりました。今後も、陰に陽に半島情勢に関与してくるでしょう。それはまた、中国が本気にならなければ、北朝鮮の核問題は解決しないということを意味するのです。(H=ソウル在住)

米朝首脳会談、北は「段階的非核化」提示か

型破りな2人の指導者による会談は予測不能?米朝首脳会談が6月12日にシンガポールで開催されることになりました。具体的な核放棄措置や期限で合意できるかが焦点となります。今回は、その米朝会談の行方を占ってみたいと思います。専門家の多くは予測が困難だと言っています。国際情勢のゆくえというのは、過去にあった類似の事例を分析することで、ある程度予測することができるのですが、今回ばかりはそうした通常のアプローチが通じないからです。それほど米朝会談は、トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)委員長という2人の指導者の属人的な要素が極めて強い異例の会談だといえます。そんな異例の会談ですが、大まかに4つのパターンが考えられます。最初のシナリオは、トランプ氏が求める完全即時の非核化に対し、正恩氏に応じる意思が強く、その方法や期限について合意に至るというものです。最も望ましいとされるシナリオですが、逆に可能性は最も低いと思われます。2番目のシナリオは、正恩氏に完全非核化の意思がなく、トランプ氏のほうは北の完全な非核化に対して妥協しないケースです。この場合、トランプ氏が会談の途中で席を離れる可能性が非常に高いといえます。会談の決裂後に朝鮮半島の緊張が一気に高まりそうです。3番目のシナリオは、正恩氏に非核化の意思があるものの、段階的な非核化を求め、それに応じて見返りを強く求める一方、トランプ氏は即時非核化を譲らないのに加えて、人権問題を持ち出す場合です。この場合も決裂の可能性が高くなります。そして最後は、正恩氏に完全非核化の意思はないものの、トランプ氏が目に見える実績を求めて妥協するシナリオです。例えば、北朝鮮のミサイルについて、米国本土に届くICBMは放棄させるものの、日本や韓国が射程距離に入る中距離ミサイルの保有は認めるなどの場合で、これは日本にとっては最悪のシナリオになります。しかし、トランプ氏は北朝鮮とは取引しないと言っていることから、4番目のシナリオの可能性も低いでしょう。筆者は、少なくともトランプ氏が会談の途中で席を立つ可能性は低いと考えています。なぜなら、正恩氏は北朝鮮の経済発展を真剣に考えているふしがあるとみているからです。正恩氏は経済制裁の解除が何よりも重要であることを理解しています。韓国メディアによると、正恩氏は4月27日に開催された南北首脳会談で、ベトナム式の経済発展を目指したいとの考えを文在寅(ムン・ジェイン)大統領に伝えたようです。ベトナムは経済開放に転じた1986年を起点に、共産主義体制を維持しながら高度成長を続けています。正恩氏は、外資に対する規制が少なく、米国との関係が緊密な点で、中国式の「改革・開放」よりもベトナムの「ドイモイ(刷新)政策」に魅力に感じているもようです。そうなると、北朝鮮の段階的な非核化の可能性が高いと言えます。中国、ロシアもこれを支持しており、韓国も北朝鮮に一定の理解をしていることから、最終的には時間をかけて進めるしかないのではないでしょうか。経済解除はその段階に応じて解除されていきそうです。完全非核化にかかる時間は、正恩氏のコミットメント、そしてトランプ氏と信頼関係にかかっているといえるでしょう。(H=ソウル在住)

朝鮮半島に「平和と繁栄の新時代」は訪れるか

歴史的な南北首脳会談に世界の関心と期待が集まる10年半ぶりとなる歴史的な南北首脳会談――。きょう27日午前9時29分、軍事境界線を挟んで北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が握手を交わし、歴史的な瞬間が到来しました。韓国大統領府は午前の会談で、朝鮮半島の非核化と恒久的な平和体制の構築、南北関係発展について率直な議論を交わしたと発表しました。このコラムの執筆時点では共同発表はされていませんので、その内容に関するコメントは次回に回します。今回は首脳会談に対する韓国側の反応について触れたいと思います。朴槿恵(パク・クネ)前大統領を支持する一部の強硬な保守派を除けば、国全体の関心と期待が集まっています。ソウル図書館(旧ソウル支庁)の建物には「南と北が作る平和、ソウル市も一緒に行きます」と書かれた巨大ポスターが掲げられました。あるソウル市民は、「南北関係が正常化に期待している。早く軍事境界線を越えて北朝鮮に足を運んでみたい」とコメントしました。共同発表を待つ市内は、観衆がサッカーのPK戦を見守るような雰囲気に包まれています。経済界も南北首脳会談を歓迎しています。大韓商工会議所は「緊張と対立の時代が終わり、平和と共存の新しい時代を迎えることを期待する」と論評。日本の経団連に相当する全国経済人連合会は「朝鮮半島の地政学的リスクが解消され、経済活力が高まることを期待したい」とコメントしています。金正恩委員長は今月20日に開いた朝鮮労働党中央委員会総会で、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射を中止すると表明。「強力な社会主義経済を建設して人民生活を画期的に高める闘いに全力を集中」するとしました。一方の韓国も、文大統領の任期は残り4年。さらに、保守系は収賄の罪で起訴された朴、同容疑で逮捕された李明博(イ・ミョンバク)の両大統領経験者が収監される壊滅的な状況であるため、次期大統領も南北融和に軸足を置く革新系が選ばれる可能性が高まっています。南北両国は今後、経済協力に向けて信頼関係を深めていくと思われます。何よりも、文大統領と金委員長は今回、会談を通じて、悲願である「民族同一性の回復」に対する自信と確信を得たいところでしょう。朝鮮半島全体の平和と繁栄につながる協議となるか。非核化に向けた具体的な合意を含め、国際社会が固唾(かたず)を呑んで見守っています。(H=ソウル在住)

首脳会談で「非核化」は建て前? 「連邦制」模索する南北

米韓同盟より「民族の同一性」優先する文政権南北首脳会談の開催が4月27日に決定しました。韓国側の説明を要約すると、「北朝鮮は非核化や米国との対話の意向を持っている。南北首脳会談の条件が整った」といったところでしょう。しかし、果たして韓国はどこまで北朝鮮の非核化にこだわっているのでしょうか? 残念ながら、非核化は建て前でしかないというのが筆者の見立てです。これまでのコラムでも説明してきましたが、文政権の優先事項は非核化よりも戦争回避です。何がなんでも核放棄を約束させ、緊張緩和のための対話を始めるという強硬な姿勢というよりは、これ以上状況を悪化させないため、まずは対話を始めようという立場です。極端な話をすれば、仮に非核化に向けた交渉が失敗したとしても、文政権下の韓国は南北の統一という究極的な目標に向けて北との対話を続けていくでしょう。それは北も同じです。そのためにも、どちらかが甚大な被害を受けるような戦争は避けたいというのが本音ではないでしょうか。北朝鮮も無傷のソウルを手に入れたいはずです。それでは、板門店に来る金正恩氏は、文氏に何を提案するのでしょうか。「南北はまもなく連邦制になる」。中国側に出てきている北朝鮮の貿易商たちが口々にこう話しているようです。北朝鮮が思い描いているのは「完全な統一」ではなく、南北を「連邦」として緩やかにつなぐ「連邦制」による統一です。この考え方は、1960年代から北朝鮮が主張してきました。代表的なものは「高麗連邦共和国」です。「自主・平和・民族大団結による統一」というスローガンのもと、一民族・一国家・二制度・二政府の下で連邦制による統一を主張しました。中国と香港の関係に近いものです。しかし、「高麗連邦」案には、朝鮮戦争(1950〜53年)で結ばれた休戦協定の平和協定への転換と在韓米軍の撤収など、韓国側が簡単に飲めない条件もついています。さすがの文政権もジレンマに陥るかもしれません。しかし、今の青瓦台(大統領府)のスタッフの半分以上が学生運動経験者であり、北朝鮮に対して強いシンパシーを感じていることや、保守勢力が壊滅的な打撃を受けている点などを考慮すれば、文政権が米韓同盟よりも「民族同一性の確保」を優先していく可能性は捨てきれません。(H=ソウル在住)

予測不可能な時代を生き抜くための教育とは

小学校「プログラミング」必修と注目集めるSTEM/STEAM教育いま、教育界で注目を集める「STEM(ステム)教育/STEAM(スティーム)教育」。米国で1990年代に提唱されたコンセプトが、日本でも広く浸透してきました。STEMとは、米国立科学財団(National Science Foundation=NSF)が21世紀の社会で子供に身に着けさせておくべき力として、90年代に発表したもので、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字を取ったものです。2013年には国家戦略となり、K-12(幼稚園から高校までの12年間)のカリキュラムもこれに沿ったものになっています。また、STEAMは、STEMに芸術(Art+デザイン)を加えたものです。革新的な取り組みや課題解決を行うためには、科学だけではなく、人間の感情や感覚についても学ぶべきという考えに基づいています。高度な技術開発と、未だ不確実な要素を多くもつ人間についての研究成果の融合が、今後ますます必要とされていくでしょう。近年の技術革新は「第4次産業革命」と呼ばれるほどめざましく、身の回りにあるモノすべてにインターネットがつながる「IoT(internet of things)」、仮想空間を体験できる「VR(virtual reality)」などの普及が進むなか、社会のあらゆるシステムがビッグデータやAI、ロボットを前提としたものに変化していくとみられています。野村総合研究所は15年、英・オックスフォード大学との共同研究で、国内601種類の職種ごとの10〜20年後を予測した結果、日本の労働人口の49%が、AIやロボットで代替できる可能性が高いとの結論を発表しました。こうした大きな時代の流れのなかで、日本ではAIやテクノロジー進化を生み出す理数系人材や人の感性に訴える芸術系人材は圧倒的に不足しています。AIに代替されにくいSTEM/STEAM教育を施された人材育成は急務といえます。すでに米国やシンガポールなどが国家主導でSTEM/STEAM教育を進めてきたのに比べると、日本はこれまで民間レベルでの取り組みに留まっていました。しかし日本でも、小学校で20年の次期学習指導要領からプログラミング教育が完全実施されることになりました。20年から実施される新学習指導要領では、 ・小学校で算数や理科、総合的な学習の時間など、どこかでプログラミング教育を体験させる ・高校で、理科と数学にまたがる選択科目「理数探究」を新設し、情報は従来の2科目選択を共通必履修の「情報I」に改め、全員にプログラミングやネットワーク、データベースの仕組みを学ばせるなどの改訂が行われました。今年4月1日からは、小中学校で移行措置が始まっており、文部科学省、総務省、経済産業省の3省が連携して運営する「未来の学びコンソーシアム」は3月30日、Webサイトを「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル Powered by未来の学びコンソーシアム」にリニューアルオープンしました。STEM/STEAM教育というと、理工系に進む人にしか関係ないのではないかと思いがちですが、大切なことは文系・理系に限らず、これからの時代が多くの分野で急速な技術革新を前提にしている点であり、そうした技術に使われるのではなく、それを使いこなす能力が求められることでしょう。予測困難な時代となり、課題や正解が比較的明確であった時代の教育では対応できなくなっている現実に目を向けながら、その都度学び、他者と共生しあいながら、新しい価値を生み出していくための能力を育むための教育が議論されなければなりません。(S)