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記事一覧(87)

米朝「仲介者」として真価問われる文大統領

~第3回南北首脳会談で金委員長に大幅な譲歩迫る?~今回は、来週18日から開催される第3回南北首脳会談の行方を占いたいと思います。ご存知のように、現在、核を巡って米朝関係が停滞しています。実効性のある非核化に向け、核開発の全容把握が欠かせないとする米国と、休戦状態にある朝鮮戦争の終戦宣言を優先すべきだと主張する北朝鮮との間には隔たりが大きく、交渉は入口で行き詰まってしまった状態です。通常、非核化のプロセスは「凍結→申告→査察→検証→破棄」の順番になるわけですが、現段階では、その最初のステップである凍結が終わったという認識です。それ以降のプロセスとして、米国側の「申告・査察→終戦宣言」と、北朝鮮側の「終戦宣言→申告・査察」という優先順位を巡って溝が埋まらないというのが今の状況であるわけです。ですから来週の南北首脳会談で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は金正恩(キム・ジョンウン)委員長に対し、非核化に向けた「大胆で予想を超えた譲歩」を求めるはずです。そして、その内容を持って、今度はトランプ大統領にも大胆な譲歩を求め、自身の公約である「終戦宣言の年内実現」に向けて弾みをつけたいところでしょう。筆者の予想は、今回の文氏の訪朝をきっかけに、米朝関係や朝鮮半島情勢は一気に進んでいくというものです。理由をいくつか上げますと、何よりも文氏と正恩氏との間には信頼関係があります。聞くところによると、文氏は正恩氏のことを「彼は国のトップに立って以来、約束した内容をすべて実行している」と言い、正恩氏は、文氏の政権初期の段階で信頼関係を築けたことをとても喜んでいるといいます。次に、「終戦宣言と在韓米軍の動向とは全く関係がない」という正恩氏の発言です。これを額面通り受け取るかどうかは賛否が分かれるところですが、少なくとも文政権の中枢は正恩氏の言葉をそのごとく捉えているようです。実際、終戦宣言をしたからと言って、それがすぐに在韓米軍の撤退につながることは万が一にもありえません。また、先日、ロシア・ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムでは、中国の習近平主席が「終戦宣言は米朝間の問題」とも発言しています。平和協定に全く関わらないというわけではないのでしょうが、この発言も文氏にとって追い風となっています。課題があるとすれば、政権と官僚の対立でしょう。官僚から政権トップへの「ボトムアップ型」が従来の外交プロセスですが、現在の米朝は完全にトップダウンという仕組みになっています。心配なのは、トランプ氏と正恩氏がトップ同士で決定した内容を官僚が履行できない(しない)という状況が生じた場合です。いずれにせよ、文氏と正恩氏、トランプ氏との間で信頼関係さえできれば、正恩氏の言葉のごとく「核が必要なくなる」という状況に発展する可能性が低くないと思われます。今の「トランプ・正恩・文」の関係が、核問題を解決できる千載一遇のチャンスかもしれません。そのカギを握る文氏の来週の訪朝から目が離せません。(H=ソウル在住)

「日米に溝」大手メディアの世論誘導に注意

トランプ氏「真珠湾」発言と日朝極秘会談報道の裏側日米政府は安倍首相が自民党総裁選で3選された場合、トランプ米大統領との首脳会談を9月25日に米国で行う方向で最終調整に入ったようです。北朝鮮や日米通商問題について協議する見通しです。一方、メディアからは「日米蜜月」に疑問を呈する論調も目立ち始めました。直近では、米ワシントン・ポスト紙(電子版)が8月28日、6月の日米首脳会談で、トランプ氏が安倍氏に対し「私は真珠湾を忘れない」と述べた上で、対日貿易赤字に強い不満を表明したと報じました。また、同じポスト紙は米高官の情報として、日本と北朝鮮が今年7月、ベトナムで米国に知らせずに極秘裏に会談を進めたと報じました。日本側からは情報機関である内閣情報調査室トップ、北村滋内閣情報官が、北朝鮮側からは金聖恵(キム・ソンヘ)統一戦線策略室長がそれぞれ参加したと伝え、これに対し米側が不快感を示したと書いています。日本の時事通信や韓国の中央日報などもポスト紙を引用する形で報道し、日米関係悪化を匂わせています。しかし、本当に日米関係は悪化しているのでしょうか。私たちは、こうしたメディアが今頃になって6月の会談を持ち出し、しかも「真珠湾」などの単語を強調して報じている点に注意を払う必要があると思います。さらに、直接関係のない7月の極秘会談をこれにつなげて報道する意図は何でしょうか。ご存知のようにワシントン・ポストは米国を代表するリベラル系新聞で、事あるごとにトランプ政権と対立してきました。反トランプと言われる巨大企業アマゾンのCEO、ジェフ・ベゾス氏が同紙のオーナーであり、トランプ氏も「ベゾスがアマゾンのロビー活動拠点としてワシントン・ポストを利用している」と非難しています。こうした対立がある一方で、トランプ氏のツイッターなどの発言をみても、今のところ「真珠湾」発言や日朝極秘会談に対する言及や批判的なコメントはありません。今回の件では、むしろメディア側が「真珠湾」「不快感」などの感情的なワードを、発した主体や経緯を曖昧にしたまま報道している点に疑問を抱かざるを得ません。メディアが「日米関係に溝をつくる」という意図を持って情報操作をしているとすれば、これは大きく国益に反する行為であり、安全保障上の大問題です。こうした報道にそそのかされて両国関係にマイナス感情が醸成されることのないよう注意しなければなりません。すでに今回の報道を受け、一部メディアでは「官邸は『真珠湾』発言の否定に躍起」といった報道も出ているようですが、事実であるなら困ったことです。読者である私たちも、しっかりとしたメディアリテラシーを身につけ、冷静な目で情勢を判断したいものです。(Q)

なぜ日本では修士・博士が増えないのか

待遇改善の前に社会全体で考えるべきこと日本の科学技術力低下に歯止めがかからない現状が明らかになっています。文部科学省の科学技術・学術政策研究所が、22日に発表した国内外の科学技術動向の調査報告によると、人口当たりの修士・博士号取得者が近年、主要国で日本だけ減ったことが判明しました。また、基礎研究を担う大学に行き渡る研究費が2016年にドイツに初めて抜かれて世界4番目に落ちました。同所がまとめた「科学技術指標2018」は、学術論文の動向などを欧米や中国など主要国と比較し、日本の国際的な立ち位置が確認できるものです。その中で、日米英独仏中韓の7カ国で修士・博士号の人口100万人当たり取得者数を、2014〜17年度と08年度で比べた結果、日本だけが修士・博士号取得者は横ばい、または減少していました。大学部門の研究費は、日本は16年で2.08兆円だったのに対し、独は2.17兆円となり、比較可能な1981年以降で初めて抜かれました(トップは米6.77兆円、中国3.09兆円)。予算面でも人員面でも見通しが暗い日本の科学技術力。その原因について、これまでは研究者の働き方や給与面の待遇をはじめ、文科省などが強いる恣意的な選択と集中の結果、大学の安定的な財源が低下し、研究者のポスト削減が著しい点が指摘されてきました。しかし、そもそも多くの人が博士号や修士号を取得する社会になるためには、研究者の待遇改善とともに、それが明らかに社会にとって有益であると認識される必要があるでしょう。社会の課題と向き合い、その解決を模索する過程で、ハイレベルな研究者の知見がより国や地方行政の政策施策に生かされやすい仕組みを作る必要があると思います。学問や研究成果をめぐるこうした本質的な問いかけは、けっして大学や研究機関だけに投げかけられるべきではありません。今日の科学技術力低下の問題は、世の中の変化に合わせて、社会が公教育や研究者をどう扱うかについて考えてこなかった結果とも言えるからです。修士・博士卒の人材が専門性を生かして社会で活躍するには、その下支えとなる文化が不可欠です。とかく実務(現場)経験や人間関係が重視される日本社会で、より高度な専門性や体系的なアプローチが評価される文化です。人工知能やロボット、宇宙工学にエネルギー――。例えば、こうした最先端分野の技術力は経済・ビジネスの分野だけで生かされるのではありません。欧米、中ロなど各国では、その研究結果の多くが軍事分野への転用されるか、そもそも軍事技術から生まれている事実からすれば、科学技術力の低下はすなわち国の安全保障に関わる問題とも言えます。学問の軍事利用は日本ではタブー視されますが、だからといって両者の関係性から目を背けてはいられないのです。日本の国力を底上げするためにも、もっと社会とアカデミアの往き来が活発になることを期待します。(M)

ボランティアの“経験値”をどう共有し生かしていくべきか

不明2歳児「奇跡の救出劇」が示唆した可能性良かったー! 山口県周防大島町で、家族で帰省中に12日から行方不明になっていた藤本理稀ちゃん(2)が15日午前6時半ごろ見つかったとの一報に、多くの人が胸をなでおろしたことと思います。行方不明になってから68時間が経過していたにもかかわらず、軽い脱水症状だけで健康状態に大きな問題がなかったのも奇跡と言えるでしょう。安堵の思いとともにもう一つ、私たちの胸を打ったのは、理稀ちゃんを発見、保護した78歳のボランティア男性の生き方でした。尾畠春夫さんは理稀ちゃん行方不明の報道を見て、14日午後に大分県日出町から現地に駆けつけ、15日早朝から捜索にあたり30分足らずで発見に至りました。発見後、メディアの取材に対し「小さな命が助かったと思った。本当にうれしかった。助かってよかった。ただそれだけ」と涙ながらに語る姿に、無私の心で人の役に立ちたいと願う尾畠さんの人柄がにじみ出ていました。もともとは大分県内で鮮魚店を営んでいた尾畠さんは65歳で仕事を辞め、「たくさんの人たちの優しさや感謝を受けて育ったこの世の中に何か恩返しをしたい」とボランティアを選びました。好きな登山を生かして山道の整備をしたり、被災地ボランティアとして、2011年の東日本大震災では、宮城県南三陸町で遺品探しなどの活動をしました。さらに、最近では西日本豪雨の際、広島・呉市でも泥かきを手伝ったといいます。78歳でこの体力と行動力。ただただ頭が下がる思いです。こうしたボランティアは二次被害の可能性もあることから、誰でもできることではありません。一方で、今回の尾畠さんの姿から私たちは多くのことを考えさせられます。その一つが、ボランティアとしての尾畠さんの経験値と現場力です。「子供は上に上がる」との経験と勘から、山の上のほうを捜索エリアに定め、見事に探し出しました。尾畠さんは、2016年末に大分県で行方不明になった女児の捜索ボランティアにも参加し、その時の経験が今回の捜索で生かされたことも明らかにしています。ただ活動をするのではなく、「仮説から検証」を繰り返していくことで経験値が積み上げられていったのでしょう。あらためて経験あるボランティアの力の大きさを感じさせました。今回のような捜索活動に限らず、充実した装備や機動力をもつ消防、警察、救急などの救助部隊と、しっかりとした知識や経験値を有するボランティアがうまく連携することで大きな成果を上げる可能性が高まると思われます。こうした経験値は、例えばAIのような高度な技術をもってしても容易に得られるものではありません。だからこそ昨今、自然災害が増えるなかでボランティア活動が進む中で、こうした経験値を共有する効果的な仕組みが広がることを期待したいと思います。人の役に立ちたいという思いと行動力、そして経験値を併せもったボランティアの存在は、今回のような事例に限らず、地域課題の解決や地域活性化においても、今後ますます必要とされていくでしょう。(W)

産業も軍事も主戦場は宇宙に?

米政府が「宇宙軍」創設計画を発表皆さんは「宇宙軍」と聞いて何を思い浮かべますか。宇宙人や地球外生命体の攻撃から地球を守る防衛隊? かつてSFの世界の中にしかなかった組織の創設が現実に近づいているようです。米国トランプ政権は9日、陸海空軍と海兵隊、沿岸警備隊に次ぐ6番目の軍として「宇宙軍」を2020年までに創設する計画を発表しました。トランプ大統領が今年6月に国防総省に指示していたものですが、新軍の創設には米議会の承認が必要で、議会や軍では反対論もあり曲折も予想されています。ペンス副大統領は国防総省での演説で、「果てしなく広がる宇宙で台頭する脅威に立ち向かう」ことになると述べたということですが、宇宙空間を陸海空に続く「新たな戦場」と位置付けているようです。実際、ロシアではすでに2001年にロシア連邦軍のもとに「宇宙軍」を置き、2015年には空軍と統合され「航空宇宙軍」を編成しています。中国も月面基地計画を独自に進め、宇宙ステーションの稼働を考えています。米国版「宇宙軍」の任務は、こうした中ロの動きを念頭に、まずは衛星軌道上にあるGPS衛星の監視がメインとなりそうですが、中長期的にはICBMを宇宙空間で迎撃するまで進みそうです。米国の今回の発表で思い出すのが、1980年代のレーガン政権下で進められた「戦略防衛構想(SDI=Strategic Defense Initiative)」、通称「スターウォーズ計画」です。敵の攻撃を宇宙空間で止めるというもので、ソ連崩壊につながったと言われています。宇宙の領空争いが懸念されるなか、めまぐるしい技術の進化に伴い宇宙の軍事利用の必要性が高まる流れは止められないでしょう。日本はこのような世界の趨勢の中でどのような進路を取るべきなのでしょうか。現代の航空産業もインターネットも、もともとは軍事技術の産物でした。軍事、産業両面で中国の脅威が迫る中、「宇宙軍」のニュースはもはやSFの話ではありません。(W)

米国との貿易戦争で中国経済が急減速

株式時価総額で世界第2位から陥落 日本を下回るトランプ政権が仕掛けた貿易摩擦、特に米中貿易戦争が市場を揺るがしています。メインターゲットにされた中国は人民元の下落と株価下落の悪循環が始まりました。米国は中国に対し、貿易赤字削減に向けた強硬姿勢を崩さない構えです。中国では企業が過剰な債務を抱えており、このまま貿易戦争で景気が後退すれば、企業業績悪化で不良債権が積み上がり、金融不安が一気に広まりかねない状況です。一方、打撃は世界経済に跳ね返り、米国も自らの首を絞める事態に陥る可能性もあります。今回、米国が口火を切った米中摩擦の要因には次の3点が考えられます。第一に、すでに述べた貿易赤字の削減です。トランプ氏が一貫して重視してきたのが貿易赤字の削減で、その方法は二国間交渉です。第二に、ハイテク分野における米中の「覇権争い」です。米国は経済規模だけでなく、ITや人工知能(AI)など最先端技術で各国をリードしてきました。これに対し、中国政府は2015年、「中国製造2025」と名付けた産業政策を掲げ、半導体、電気自動車(EV)など主要分野で世界トップに立つ目標を設定しました。政府の圧倒的な資金量と全面的な支援を背景に、この分野で急速に力を付けつつあります。第三に、中間選挙です。トランプ氏は今年11月に行われる中間選挙に向けた票固めとして、使えるものは全て使うと考えているのでしょう。中国の4〜6月期国内総生産(GDP)は、底堅い民需に支えられ6%台の成長率を維持していますが、米国との貿易摩擦が景気腰折れリスクとして重くのしかかっています。株式市場にも動揺が広がっています。3日、時価総額で中国が世界2位の座を日本に明け渡しました。米ブルームバーグ・ニュースによる3日の日中取引データによると、株式時価総額で中国は6兆900億ドル(約680兆円)、日本は6兆1700億ドル(約690兆円)。中国は2014年に世界2位となって以来初めて、日本を下回りました。中国経済の減速懸念が強まる中で、習近平指導部が安定化策に転じました。昨年来、当局は目先の景気よりも過剰債務問題の解消といった構造改革を重視する政策をとってきましたが、経済の変調を前に、抑制していたインフラ投資の積極化などにより景気を下支えする方向にかじを切りました。習指導部の求心力低下も噂される中で景気の安定は最重要課題ですが、インフラ投資の過熱はさらなる債務拡大につながりかねません。米国との貿易戦争も中国政府だけで対応することは困難です。GDP世界2位の中国経済が腰折れすれば、貿易量が減る米国や欧州、日本の経済鈍化につながります。米中の動きは経済的合理性よりも政治的思惑が強く、米中間選挙後は収束すると指摘する専門家もいます。しかし、それ以前に想定以上の悪影響が世界経済に広がる恐れもあります。(K)

杉田水脈議員の「炎上記事」を読む

自民党・杉田水脈衆議院議員が『新潮45』で発表した記事が“炎上”しています。問題とされたのは、LGBTは「生産性がない」ため税金投入する必要はない、と述べた箇所です。「子供をつくらない」=「生産性がない」との表現は、不妊に悩む夫婦などの心情も考えれば不用意だったと言わざるを得ません。同議員の事務所にはゲイを名乗る人間から「お前を殺してやる!」とのメールが寄せられたほか、野党からも「ナチズムの思想による抹殺の歴史に通底」(有田芳生・立憲民主党参議院議員)、「無知、無理解、悪意に満ちた偏見で悪質な発言」(小池晃・共産党書記局長)などと一斉に批判の声が上がっています。一方で、ここぞと批判する野党勢力にも大きな「ブーメラン」が返ってきています。過去に立憲民主党顧問の菅直人元首相が、出生率が低い東京、愛知について「生産性が低い」と発言していたことが指摘されたのです。では、杉田議員の主張の全てが議員辞職を求められたり、殺害予告を受けるほど悪質なものだったのでしょうか。実際に「生産性がない」との記述を省いて杉田議員の記事を見ると、以下のように、LGBT問題に対して耳を傾けるべき指摘も多く含まれています。①「日本と欧米は違う」杉田議員の指摘のとおり、同性愛が犯罪とされたり、強制的に治療の対象となってきた欧米と違い、日本では歴史的にそこまで深刻なLGBT差別はありませんでした。彼女自身もLGBTへの差別感情がないことは明確にしています。実際に港区が実施したLGBTへのアンケートでは、LGBTであることが原因でハラスメントを受けた割合は1割前後で、女性のセクハラ経験率5割と比べても非常に低い水準となっています。いじめも同様で、一般的ないじめ経験率3〜4割と比較して、LGBTを理由にいじめられた経験をもつ人は約1割。一方、特に困ったことがないと答えたLGBTが約7割に達しています。つまり、いじめやハラスメント全般を減らすことが重要なのであり、LGBTだけに特化して「生きづらい」状況があるわけではありません。朝日新聞のように年間260件も報道するほど、突出した社会問題であるかどうかは疑問です。ちなみに、日本がすでにLGBTに十分寛容な社会であるとの認識は同性愛者からも示されています。大阪総領事を務めたゲイのパトリック・J・リネハン氏は帰国時のインタビューで次のように述べています。「日本は皆さんが思っている以上に寛容な国。米国のように、LGBTの存在を批判する政党や集団もない。私たちに悪口を言ったり、攻撃する人は一人もいませんでした」(毎日新聞[online]2014年7月27日)②「LGBTカップルへの税金投入は疑問」「生産性」という言葉で誤解を招いた部分ですが、本来、婚姻制度で夫婦に特別な保護を与えた理由に、社会の安定と持続性にかかわる「次世代育成」があったことは事実です。子供を設ける可能性がある男女の結びつきには安定性が求められるため、同居、相互扶助を義務付け、原則として離婚を禁止する代わりに、税制などで特別な保護を与えています。たとえ子供をもたない夫婦であっても、男女の性規範を確立するうえでは同様の意義があります。一方、同性愛カップルは、あくまでも私的な結びつきであり、公的に保護する理由はありません。税収や行政の人員に限りがある以上、公益性が低い同性カップルに対する特別の支援に疑問を持つのは当然のことです。これは人権や偏見に関わる議論ではなく、純粋に政策の妥当性に関する議論です。③「性的志向(LGB)と性自認(T)を区別すべき」これも重要な指摘です。自分の性別に違和感をもつ人と同性愛者では、抱える課題も必要とされる施策も全く異なります。また、杉田議員は指摘していませんが、Tの当事者の中にも様々なレベルがあります。深刻な性同一性障害の子供たちの事例で同情を引きながら、単なる性的逸脱行為まで正当化する風潮には警鐘を鳴らすべきです。④「メディア報道による子供への悪影響」これは最も議論されるべき部分です。現実に米国では、若者のあいだで同性愛者が急増しています。思春期には、女子高など同性の先輩を疑似恋愛の対象とすることがありますが、それは本来、一時的な感情にすぎません。しかし、ドラマなどで同性愛が当たり前のように描かれると、その影響を受けて自分も同性愛者だと思い込み、実際に同性と性関係を結ぶ若者が増えてしまうかもしれません。それは本人の人生を考えた時、必ずしも好ましいことではないでしょう。また、子供の「性別違和」の7〜9割は大人になると解消される一時的な思い込みだとわかっていますが、メディアでの過剰な扱いによって、そうした混乱に陥る子供を増やす危険性すらあるのです。⑤「男女の性の区別をあいまいにするリスク」私たちの社会は男女の性による区別を前提として成り立っています。それ自体、性倫理や犯罪防止の観点から見ても非常に重要なことですが、一部のLGBT人権派は「性別は自分で選ぶことができる」と主張します。医学的に男女の性別を確定できない状態で生まれてくる人や性別に違和感を持つ人が存在するのは確かですが、それは極めて少数であり、やはり性別は「男女」が基本です。マイノリティへの配慮は必要だとしても、大多数の人にとって必要な社会制度全体の変更を求めるのは明らかに行き過ぎです。杉田議員が表明した以上のような違和感や懸念について、全てではないにしても共感する人は少なくないはずです。LGBTに対する差別感情がないことを明確にしつつも、建設的な議論を重ねる必要を感じます。(O)

晩婚・晩産がもたらす新たな“現実”

「育児」より「介護」が先 「30代で2割」の調査結果も総務省は今月11日、2018年1月1日現在の「人口・人口動態および世帯数」を発表しました。日本の人口(外国人含む)は1億2770万7259人となり、前年比で19万9827人減少(0.16%減少)しました。初めて生産年齢人口(15〜64歳)比率が全体の6割を切り、15歳未満の年少人口比率も12.57%と過去最小を記録しました。少子化の大きな要因の一つが晩婚・晩産であることはすでにご存知のことと思います。しかし、この晩婚・晩産によって人生設計に少なからぬ影響を与える「予期せぬ悩み」に直面する人が増えているようです。ソニー生命保険がこのほど発表した調査結果によると、育児と介護に同時に直面する「ダブルケア」の経験者のうち、30代では育児より先に介護が始まった人が20%を占めることが分かりました。育児と介護が同時に始まった人も7%おり、出産や子育てよりも親の介護を先行させざるを得ないケースが増えています。内閣府が2016年に行った試算では、ダブルケアを行う人は約25万人いると推計されていて、男女ともにその8割を30〜40代の働き盛りと言われる世代が占めています。ダブルケアを理由に業務量や労働時間を変更しなければならなかった人は女性で約4割、男性で約2割おり、中には「子供が保育園に入れない」「親が介護施設に入れない」「職場が両立しにくい環境」などの理由で仕事をやめざるを得ないケースも少なくないとみられています。ソニー生命保険の調査では、現在ダブルケアをしている人を対象に介護や保育にかかる毎月の費用も質問。回答者の平均額は「子供の保育・教育関連費用」が3万8015円、「親の医療・介護関連費用」は2万3073円でした。ダブルケアによって精神面や体力面に加え、経済的な負担が長期間続く場合もあるようで、働き盛りの世代に重くのしかかっています。育児とは異なり、介護には先が見えません。介護業界の人手不足も深刻です。働き盛り世代が教育と介護に大きな経済負担を強いられ、子供は家庭の中で心を通わせられる十分な学びを得られず、老父母は孫の世話をする機会が失われたまま身体の機能も衰えてしまう――。晩婚、晩産がそんな悪循環を助長しているのです。3世代同居やルームシェアへの検討が叫ばれるとともに、テレワークの推進など柔軟な働き方に加えて、ダブルケアの人に保育園や介護施設への入所要件を緩和するなど、各種支援策の連携が求められています。これと合わせて、特に20~30代の若者世代に対し、こうした現実を当事者意識をもって直視し、自らの人生設計を早めに立てるよう社会をあげて訴えなければなりません。言うまでもなく、結婚や出産に関わる選択は各人の意思です。しかし、そこから生じる課題を考えれば、国や行政をあげてさらに一歩踏み込んだ対応が必要ではないでしょうか。そうでなければ、「1億総活躍時代」どころか「1億総ケア時代」になりかねません。(S)

「異常気象」の常態化 「安全な所などない」との自覚を

このたびの「平成30年7月豪雨」により、被災された皆様には謹んでお見舞いを申し上げるとともに、今なお避難されている皆様の安全と、一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。未曾有の西日本豪雨、ハード面の対策だけでは限界警察庁はきょう13日、今回の西日本豪雨による被災地での死者が、午前4時45分時点で204人に上ったと発表しました。避難所生活も長期化が指摘されており、お年寄が板張りの床に横になっている状況です。豪雨の終息の一方で酷暑が地域を襲っており、関連死が心配です。「経験したことのないような大雨で、重大な危険が差し迫った異常事態です。市町村から発令された避難情報に直ちに従うなど、適切な行動をとってください」。今月6日、北部九州3県や広島県、岡山県などに「大雨特別警報」が発表されて以降、合わせて11の府と県に特別警報が発令されました。気象庁のまとめによると、今回の西日本豪雨で観測した72時間の雨量が119地点で過去最高を記録しました。全国に約1300ある観測地点の約1割にあたり、過去最大となります。特別警報は2011年の紀伊半島豪雨などを教訓に、13年8月から運用がスタート。1991年以降の観測データを基に「50年に1度」の異常雨量などの値を定め、それを超えれば発表されています。この5年間、日本全国で計10回発表されており、福岡県では昨年の九州豪雨に続いて2年連続で発表されました。もはや「異常気象」の常態化と呼べる状況です。現在も、気象庁や日本気象協会などの専門機関や専門家が、甚大な被害をもたらした豪雨の詳しい分析を進めていますが、温暖化に伴う異常気象は、明らかに新たな段階に入ったと言っていいでしょう。特別警報では「過去に経験したことがない」という表現が付けられますが、「経験したことがない」とは過去の想定を超えた対策が必要であることを意味します。今回の豪雨では、防災や治水の概念を根底から変えてしまいました。今後、治水技術や防災技術、救出技術のいっそうの向上など、あらゆる災害対策を強化しなければなりません。一方で、豪雨災害が起きるたびに、堤防や砂防ダムなどインフラの整備が強化されますが、異常気象が続く今、そうしたハード面の対策にも限界があります。私たちが肝に銘じるべきは、今後いかなる場所においてもこのような自体が起きうるという意識とその備えです。今回、浸水した場所は河川に挟まれた場所など、もともと地形的に災害リスクが高い場所でした。また、高齢者を中心に、逃げ遅れも原因の一つと考えられています。「ここは大丈夫」「自分は大丈夫」という意識を改め、ふだんから自宅周辺の地形や避難所を確かめ、万一の行動を想定し、警報などに敏感に反応することが大切です。災害列島の恐ろしさをかみしめながら、高齢化や過疎化の問題とも向き合いながら、あらゆる想定を見直す時がきています。(S)

世界の難民・避難民が過去最多 国際社会に打つ手はあるか

6月20日国連「世界難民の日」に考える6月20日は国連「世界難民の日」でした。欧米を中心に大きなイシューとなっている「難民問題」。海外ニュースで、紛争地を逃れてきたシリアやロヒンギャの人々とその家族の表情を目にする私たち日本人の多くは、その悲惨さに同情を禁じ得ない一方、どこか遠くの場所で起こっている不幸な出来事として感じていることも、また事実ではないでしょうか。毎年、国連の難民高等弁務官事務所(UNHCR)はこの「世界難民の日」に合わせて、「グローバル・トレンズ・レポート」という報告書を出しています。19日発表の同報告書によると、戦争や暴力行為、迫害によって避難を余儀なくされた人の数が、昨年末の避難民総数は前年よりも300万人近く増え、過去最多の6850万人に達しました。10年前の4270万人に比べ、5割増加したといいます。難民・避難民の増加の大きな要因の1つに、紛争の増加があります。紛争や内戦には迫害や虐殺が伴うことが多いからです。18日に赤十字国際委員会(ICRC)が発表した報告書「戦争における抑制の根源」(Roots of Restraint in War)最新版によると、今世紀に入って世界の内戦の数が2倍以上に増加したといいます。ICRCによると、2001年から2016年の間で「非国際的武力紛争」の件数は30から70以上に増加しているといいます。紛争で問題を解決しようとする動きが加速するなか、政府が国内の紛争や騒乱を制御できず、ガバナンスと治安が崩壊する国や地域に対し、いまや国連や米欧が主導する国際秩序、安全保障の仕組みが機能しなくなりつつあります。国連は2005年の世界サミットで、自国民の保護という国家の基本的な義務を果たす能力や意思のない国家に対し、その国の人々について「保護する責任」を負うとした成果文書を採択しました。しかしシリアの現状に代表されるように、国連もその役割を十分に果たせていません。国連総会は2016年9月、「難民と移民に関する国連サミット」を開きました。難民問題を扱う初の首脳会議でした。ただ、難民支援の資金負担をはじめとする人道面の支援強化と同時に、内戦の終結に向けた外交努力など、状況を抜本的に改善させるための国際協力が話し合われたものの、問題の規模からすると十分な成果とは言えませんでした同会議には安倍首相も出席し、人道援助や難民受け入れ国への支援などで28億ドル(約2800億円)規模の資金を拠出することや、紛争の影響を受けた難民らへの教育支援や職業訓練実施を表明した。5年間で最大150人のシリア人留学生の受け入れも約束しました。ただ、これも国際的には「お金は出すが難民受け入れに消極的な国」という印象になったようです。難民問題の解決は結局のところ、紛争の解決とともに、「難民を受け入れ、一定期間保護したのち出身国への自主的な帰還を促す」「受け入れ、定住・永住させる」「受け入れ、別の国での再定住を目指す」に限られますが、これに対し受け入れ側の体制に限界が来ているのが実情です。世界的な政治動向も難民にとって逆風と言えます。欧州の一部の国では難民や移民の受け入れに反対する政党が支持を伸ばしています。イタリアの新政権は今月、地中海で救助された難民の受け入れを拒否しました。経済負担や安全保障上の問題からです。「人間の安全保障」と「国の安全保障」の両立を図ることは容易ではありません。しかし、放っていても危機的状況はますます深刻化するだけです。各国の政治的意志と協調の姿勢が求められています。(S)

米朝会談の背後で影響力高める中国に警戒を

シンガポールで12日に開催された米朝首脳会談。北朝鮮の最高指導者と現職の米国大統領が初めて対面したという意味で、紛れもなく「歴史的」だったと言えます。しかし、成果の判定はそう簡単ではありません。成果として言えることは、軍事衝突が起きるリスクが短期的にはほぼなくなったことでしょう。わずか10カ月前には、北朝鮮が「米国は制裁の何千倍もの報復に遭うだろう」と脅迫し、米国が「これまで世界が見たこともないような炎と怒りに遭遇することになる」と応じたことを考えれば、朝鮮半島の完全なる非核化が米朝直接交渉を中心とした外交交渉で進められる方針に舵を切ったことは評価すべきです。開催地シンガポールや韓国のメディアなどは、こうした観点から概ね会談を評価しています。「会談は第一歩でゴールではない。この会談で結論を求めるのは時期尚早」というわけです。一方で、欧米メディアの多くは否定的な論調です。非核化について目新しい成果や具体的な成果が何もなく、ただ単に、両首脳が切望するマスコミの注目を与えただけだという批判です。合意文書は総花的な目標を箇条書きにした内容の薄いもので、その実行に対する疑念の声も上がっています。北朝鮮にとっては、会談を通じて体制保証、人権問題の合意文書への不明記、CVID(完全で検証可能かつ不可逆的な非核化)も同じく不明記、米韓合同軍事演習の中止、国連制裁緩和など、多くの成果を手に入れたといえます。ここで注目すべきは、トランプ氏が米韓演習の中止を正恩氏に言明したことです。首脳会談前にトランプ氏が文在寅(ムン・ジェイン)大統領と電話で会談していたにもかかわらず、青瓦台(大統領府)はこの発表に不意を突かれた様子がうかがえます。文大統領の政策ブレーン、文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保特別補佐官は15日、「廃止ではなく、交渉が続くかぎり中断するということなら問題はない」と語り、平静を装いましたが、在韓米軍の縮小など、韓国の安保に決定的な影響を与える重要事案を米朝が頭越しに決めてしまうことへは警戒感が広がっています。交渉の渦中で同盟国である韓国との調整はおろか、コミュニケーションすらとれていない状態は、高度で複雑な外交交渉の舞台では相手に付け入る隙を与えてしまいかねません。日米韓の情報共有を強化することで対北朝鮮の交渉力を高めなければなりません。米朝会談と今後の交渉について、背後で影響力を強める中国の動きも見逃してはいけません。北朝鮮の核問題が国際社会の注目を集め続けるなか、強い反発を受けることなく、着々と「南シナ海の軍事化」を進めてきた中国。軍事専門家の多くは「南シナ海の軍事化」が仕上げ段階に入っているとみています。正恩氏は、習近平主席の支援や助言を求める形で、米朝会談を挟んで3度にわたり訪中。中国の影響力を印象づけました。また、在韓米軍の縮小ということになれば、今後、中国の韓国に対する影響力が高まり、朝鮮半島における中国のプレゼンスは急速に高まるでしょう。さらに、米朝、南北の両首脳会談の結果、北朝鮮のミサイルが韓国に向けて発射される可能性が減るとなれば、THAAD(高高度迎撃ミサイルシステム)を韓国に配備する理由がなくなりかねません。これも中国にとって大歓迎です。こうした懸念を日米韓がしっかりと共有し対応していくことは、東アジアの安全保障にとって切迫した課題といえるでしょう。(T)

官民のノウハウ還流が社会課題解決を促すきっかけに

国家公務員の副業、政府が容認へ政府はこのほど、成長戦略「未来投資戦略2018」に国家公務員の副業についての方向性を盛り込みました。具体的には、これまで原則禁止されていた国家公務員の副業を、特定非営利活動(NPO)法人など公益性の高い仕事に限って認める方針に改めることになりました。報酬を受け取ることも認められます。民間企業では人材流動化の視点から副業を容認する動きが広がっており、「働き方改革」を推進する政府としてもこれを後押ししたい考えです。国家公務員法に基づいた「営利企業の役員就任」や「自営業の経営」は引き続き禁止されますが、社会的な人手不足の緩和につながることはもちろん、国家公務員の持つ政策・法律の知見が民間でも活用されることになります。特に、人材不足によって課題解決のための施策が滞りがちな地域の活性化にもつながると期待されます。また、政府としても、公文書の書き換え問題などで“霞が関の論理”が国民の批判を受けるなか、役所の狭い世界に留まっていた公務員が社会の現場へと足を運んで汗をかく経験を積むことで、より現実に即した新しい発想の政策立案を期待できます。地方自治体では、神戸市が昨年4月、「地域貢献応援制度」と銘打ち、職務外に報酬を得て地域活動に従事することを認める通達を出しました。同制度によって副業を認められた職員は現在、それぞれNPO法人と地域自治会で活動しているといいます。今回の政府方針については、公務員が関わるNPOが政府から補助金を得るのに有利に働いたり、実質的な天下りにつながらないよう注意は必要です。しかし、社会課題が多様化、複雑化するなか、官民がそれぞれ持つ専門的なノウハウが還流するきっかけができる点は高く評価すべきでしょう。今後長い目で見て、社会全体の生産性向上や人材の有効活用につながればと思います。(S)